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大須観音の北、100メートル道路沿いのマンションとビルにはさまれた民家。
この家に突然、「cafeたとか」という木の看板が出現したのは2019年の春先のことでした。事務所がご近所の私は、「どんなお店ができるのだろう」と、その年7月のオープンの日まで、ワクワクしながら看板の前を通り過ぎていたのを思い出します。
たとかの魅力は、「昭和」がいまも息づく空間、丁寧に作られたお食事、やさしい味のスイーツ、そして何よりいつも変わらず温かく迎えてくれる笑顔。心落ち着く「お茶の間」みたいな場所として、金曜〜日曜の営業日を、毎週心待ちにしています。
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左:黒田妙子さん、中央:酒向佳奈子さん、右:酒向貞夫さん
お店のオーナーである黒田妙子さんと、酒向(さこう)佳奈子さんは仲良し姉妹。お二人は築70年のこの家に生まれ育ちました。そして、マスターであり、お料理を担当しているのが佳奈子さんのご主人、貞夫さんです。
「たとか」の名前は姉妹の名前の最初の一文字「た」と「か」から。名前の通り、姉妹の思いと、そしてそれに共感する周囲の人たちの力が、足し算でかたちとなったお店なのです。
和と洋の居心地良さが同居する
訪れる人を優しく迎える空間
お店の入り口には、「ピンポンを押してください」の張り紙が。鳴らすと、ホールを担当する妹の佳奈子さんが出迎えてくれます。まるでお友達の家に来たような、実家に帰ってきたような気分。
玄関は、昔ながらの上り框(かまち)と靴箱。昭和を知る人には見覚えのある光景。
玄関の照明も昭和のもの……と思いきや、これ実はポーランドの老舗陶器メーカー「ボレスワヴィエツ」のシェード。器好きにはおなじみの柄ですが、あまりにもこの空間に馴染んでいるので、言われなければ気づきません。
このようにお店のインテリアには、洋のテイストが巧みに加えられていて、それが不思議に調和しています。こうした空間づくりはお姉さんの妙子さんのプロデュースです。
カフェスペースは小さな庭を眺める1人席と、ゆったり落ち着ける椅子の席、そして奥にはソファ席もあります。
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1967年の丸栄のカレンダーは東郷青児の絵
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懐かしいダイヤル式の電話
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昔のSPレコード盤をコースターがわりに
店内のあちこちに、昭和のアイテムが遊び心とともに飾られていて、ちょっとした博物館のよう。時にはおひなさまや、五月人形、クリスマスツリーといった、季節のディスプレイも加わります。
もともとこの家にあったものだけでなく、お友達やお客さんが持ってきたものもあり、こうしたアイテムを通して、お客さんどうしで会話がはずむことも。
カフェスペースは1階のみですが、実は建物の2階も見学ができます。こちらも見どころがいっぱいなので、時間があるならぜひ寄っていきたいもの。
洋館に迷い込んだような小部屋は、かつては妙子さんのお部屋だった場所。
開き窓や壁面のニッチ(飾り棚として使える凹んだスペース)、天井の個性的な模様などは、あとから手を加えたものではなく、はじめからこうした和洋折衷のつくりとなっていました。この家が建てられた昭和25年当時としては、相当モダンなデザインだったのではないでしょうか。
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ハニカム模様を変形させたようなおしゃれな天井のパターン
2階の反対側には、和の空間が広がります。2階に床の間があるというのも当時としては珍しいのでは。
姉妹の祖母はかつて大須で旅館経営されていた方で、たんすには、形見の着物や反物がたくさん残っていたのだとか。お店では、お二人の着物のおしゃれなコーディネイトを見るのも楽しみのひとつ。
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和室に椅子を置いて。この椅子、かつてはデパートの宝石コーナーにあったもの。