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久門剛史 劇場作品『らせんの練習』2019年 ロームシアター京都 撮影:来田猛 Courtesy of Kyoto Experiment
国内外で高く評価されている新進作家、久門剛史氏による国内初の大規模な個展が豊田市美術館にて、2020年3月20日(金)~2020年9月22日(火・祝) の会期中開催されています。
ライフデザインズ編集部も実際に足を運んできましたので、今回はそのときの様子をレポートしていきます。
久門剛史とは?
まずは久門さんについてご説明します。
久門さんは、1981年京都府生まれ。2007年京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻修了後、会社員を経て美術家として活動を本格化。
近年の主な展覧会に「あいちトリエンナーレ2016」 (豊橋会場|愛知|2016年)、「 東アジア文化都市2017 京都アジア回廊現代美術展」 (元離宮二条城会場|京都|2017年) があります。
音や光、動きも取り入れながら、劇場的・環境的なインスタレーションを組み立てる作家です。その場所特有の歴史や記憶、日常のささやかな現象の中から作品を組み立てていくのが大きな作風の持ち味とされています。国内外で高く評価されている、注目の新進作家です。
本展では、4つの展示室からなる延べ約1,000m²の個性的な空間を大胆に使い、それぞれの場に呼応する新作インスタレーションを展開しています。
それではさっそく行ってみましょう!
豊田市美術館へのアクセス
今回、展覧会の会場となっているのが愛知県豊田市にある「豊田市美術館」。かつて挙母城(七州城)のあった高台の一角に建設されており、ニューヨークの近代美術館「MoMA」を設計したことでも有名な建築家・谷口吉生氏の設計としても知られています。
アクセスは名鉄「豊田市駅」もしくは愛知環状鉄道「新豊田駅」から15分ほどの場所です。
2Fの展示室内へ
チケットを購入したら、2階の展示室へ向かいます。
まず最初に目に飛び込んできたのは、大規模なインスタレーション作品「Force」(2020年)。無数に落ちてくる白い紙が散らばった部屋は、まるで雪が積もったかのようなうつくしささえ感じます。
壁にさまざまなサイズのアルミニウム板が取り付けられており、アームの先には印刷機の給紙トレイが取り付けられています。
そして、それぞれのトレイからは不規則に紙が落ちていきます。この作品をつくった背景には、東日本大震災での記憶が大きく関わっているのだそう。それまでは当たり前にそこにあった日常が、震災という大きな力によって崩れ去っていく。その様子を作品を通じて表現されています。
ヒラヒラと紙が落ちて行く様は、儚くもうつくしい気持ちになると同時に、不安感も感じました。
こちらの作品ではガラスのテーブルから、裸電球の束が崩れ落ちています。
そして唯一灯されている中心の明かりに向かって人々が集まっていくように感じました。何もかも不自由なく生活している私たちですが、時に起こる大きな力を前にすると、培ってきた文明がなにも役に立たないような気がしてしまいます。
また、展示室は光がたくさんが入る空間のため、朝昼晩と作品の雰囲気が変わるのも大きな特徴です。空間全体を通じて世界の終焉を感じさせる作品でした。
続いては暗闇の空間へ。黒幕をくぐると、天井から吊るされたミラーボールが回っています。
そして、よく見るとすべてに小さな時計の秒針がついていました。それぞれが時を刻み、無数に乱反射しています。
この作品は久門さんが好きだった「ドラえもん」のタイムマシーンから影響をうけたのだとか。無数の時計はそれぞれの時間を刻んでいく様、まさにこの地球で生きている私たち自身です。決して同じ時間を生きてるわけではないけれど、一つの集合体として存在している。地球の動きを俯瞰してみているような気分になりました。
一見ただのスピーカーに見えますが、こちらも作品の一つです。よく聞くとスピーカーからは、阪急電車桂駅で採取した踏切の遮断機の音が流れています。
遮断機の音を聞くと人は一時停止をします。そこに目をつけて、つくれたこの作品は立ち止まることの大切さを説いています。
停止することで、進むことも、戻ることも道を変えることもできます。選択はすべて自分自身が決めるのです。