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本日ご紹介するのは、名古屋で手織の椅子敷を制作されている若松由香さんです。若松さんは、岡山県倉敷市にある「倉敷本染手織研究所」で倉敷ノッティングを学ばれたあと、名古屋で制作活動をされています。
民藝の思想を大切にしながらも、現代の暮らしにすっと馴染むデザインは、どれも魅力的で、長く大切に使いたいと思えるものばかりです。
今回は、若松さんにたっぷりとお話を伺ってきました。
民藝と倉敷本染手織研究所
まずは簡単に、民藝と若松さんが卒業された倉敷本染手織研究所についてご説明します。
民藝とは「民衆的工藝」の略語。民衆が使っている日用品にこそ本当の美が宿っているとし、柳宗悦氏によって昭和初期に提唱された造語です。日々の暮らしの中であたりまえにある、取るに足らなかった工芸品に美を見いだし、新しい美の基準を発見しました。
倉敷本染手織研究所は、民藝運動家であった外村吉之介氏が昭和28年に設立した施設です。同所は作家の養成や趣味の染織のための場所ではありません。日夜の暮らしの中で働く健康でいばらないうつくしさをそなえた布を織る繰り返しの仕事を励む工人を育成する学び舎として、半世紀を越えて研修生を迎え入れています。
現在までに300名以上の卒業生が全国各地で活躍されています。
椅子敷の制作をされている若松由香さん
長崎出身の若松さん。なぜ、倉敷本染手織研究所に入所することになったのでしょうか。椅子敷を織りはじめたきっかけを伺いました。
若松さん:「私は18歳のときに、大学へ通うため、地元長崎から名古屋へ移り住みました。学部は染織とは関係なかったのですが、当時から、染織に興味があったんです。大学を卒業後は、テキスタイルの仕事をしていました。27歳のときにずっと興味のあった染織を学ぶために「倉敷本染手織研究所」に入所したんです。
そこは、全国各地から集まった女性7〜8名が1年間生活をともにしながら、民芸の考えと染織の技術を学ぶことのできる施設です。在学中は住み込みで、学ぶのですが、染織の技術だけでなく、掃除や洗濯、炊事など生活のすべてを教育されます。今では、技術を学ぶために入所する方ばかりですが、もともとは花嫁修業の一環としてこの研究所に入所する女性も大勢いたそうなんです。
私は本当に何もできない状態で行ったので、毎日大変でしたね(笑)。こうして、1年を通じて、染めと織りの技術をひととおり習得していきます。そして、卒業のときに、それぞれがやりたいことを見つけて活動をしていくんです。」
−織物の中でも、椅子敷に決められたきっかけはなんだったんですか?
若松さん:「卒業前にタイミングよく、椅子敷をつくるために必要な道具がすべて手に入ったんです。ですので、まずはそれをはじめてみようと思い、制作しているうちにどんどんとのめりこんでいきました。」
−どの柄もとってもすてきですが、デザインはどんなところからインスピレーションをうけるのですか?
若松さん:「黒・赤・白の3色で構成される民藝の伝統的な柄っていうのがあるのですが、自分の生活の中に、その柄が入ってくると考えたときに浮いてしまうと思ったんです。どうしても色合いが強いので、家具を選んでしまうんですよね。
私が目指しているのは、日常遣いのできる飽きない柄です。シンプルだけど部屋に映える、だけど、部屋の中心になりすぎないもの。インスピレーションは、植物、動物の模様とか、普遍的なものから得ることが多いですね。
例えばこれは(上記写真)キジバトのグレーの色がきれいだなと思って配色しました。柄も鳩の羽のところをイメージしています。」
若松さん:「他にも、川に石を投げたときの波紋や、常滑の焼き物散歩道にある土管をイメージしたりしています。
私は長崎出身なので、教会があちこちにあって、昔から身近な存在でした。なので、教会のステンドグラスをイメージしたりとか、生活していく中で、インスピレーションがわくことが多いですね。」
ORL-001-b
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制作期間は2カ月程度。季節によって、ウールの状態、染め具合、糸のより具合が異なるので、都度目で確かめながら制作をされています。
厚さは2センチほどあり、肉厚で丈夫。触り心地はとってもふかふかです。
−椅子敷を制作される際に、特にこだわっているポイントはありますか?
若松さん:「椅子敷でとにかくこだわっているのは、”丈夫さ”ですね。きちんとした折り目がでないと、柄も奇麗にでないので、とにかく丈夫さにこだわってつくっています。ウールって、夏場は懸念されがちなんですが、実は冬は暖かく、夏は涼しい素材なんです。一年を通じて使っていただけますし、大切に使えば20年以上は問題なく使用できますよ。
お手入れも簡単です。汚れたら水洗いをしていただいて、天日干ししていただければ大丈夫なんです。」
サイズはS ・M・Lの3種類。
−椅子敷を選ぶ際のおすすめポイントや合わせた方のコツはありますか?
若松さん:「サイズは全部で3パターンあるので、お持ちの椅子のサイズに合わせて選ぶことをおすすめしています。年に1度好きな色、柄を選べる受注会を開き、ご希望を伺う機会もありますので、そちらもおすすめします。お部屋の色と合わせてもいいですし、気に入った柄を選んでいただくものいいと思います。
落ち着いた色味が多いので、どんな家具とも相性がいいと思いますよ。案外、無地も評判がよくて、意外と合わせてみるとしっくりくるんです。」
とってもかわいい丸型の椅子敷きも。色違いでこのようにコーディネートしてもすてきです。アアルトの椅子にもバッチリ馴染みますよね。丸型は展示会へ来られた方限定で購入できるのだとか。
今後は展示会限定で見られる商品も増やしていくそうなので、ぜひ展示会もチェックしてみてくださいね。
若松さんの椅子敷は、どんな家具にもすっと溶け込み、つい手に取ってみたくなる愛らしさに満ちています。日々の日常にそっと馴染みながらも、空間を彩るアクセントとして暮らしに寄り添ってくれる存在です。
民藝の思想を受け継いだ、うつくしい椅子敷を生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
若松さんの手織の椅子敷は名東区のFavor(フェイバー)にて取り扱い中。詳しくはこちらをご覧ください。
http://goods.favor-web.com/?cid=2
今回取材にご協力いただいた「Favor(フェイバー)」
今回の取材にあたり、北欧ヴィンテージ家具店「favor(フェイバー)」にご協力いただきました。店内はデンマークを中心に、現地でオーナー自らが買い付けたこだわりの北欧家具や雑貨がずらりと並びます。全国からお客さんが訪れるほど、ヴィンテージ家具好きにはたまらないお店です。
【favor(フェイバー)】
住所 :名古屋市名東区上菅1-913
電話番号 :052-768-7799
営業時間 :12:00〜18:00(11:00〜12:00 / 18:00〜19:00 アポイント可)
定休日 :月・火(変更の場合有り)
駐車場 :3台
web :http://www.favor-web.com/index.htm
Instagram:https://www.instagram.com/favor_web/