目次
履物の産地である、奈良県。その歴史は長く、草履や下駄にはじまりサンダルや革靴、靴下など……。履物にまつわるさまざまなものを製造する工場やメーカーが数多くあります。
今回ご紹介するのは、奈良県で古くから履物の製造・販売を行う「川東履物商店」が新たに展開したサンダルブランド「HEP(ヘップ)」。古くから日本人に愛され続けている”つっかけ”とも呼ばれているヘップサンダルを現代風にアップデートした、注目のサンダルブランドです。
ヘップサンダルとは?
かかとの部分にベルトなどがなくつっかけて履く、ミュールタイプの合皮でできたサンダルのことを総称してヘップサンダルといいます。
ヘップサンダルの語源は、あの名女優・オードリーヘップバーンからきているのだとか。映画「ローマの休日」の劇中で、彼女がサンダルを履いている姿を当時の日本人が見て、ミュールタイプのサンダルをヘップサンダルと呼ぶようになったそうです。
「ちょっと、そこまで。」そんなとき気軽に履けるご近所履きとして、ヘップサンダルは長年にわたり日本で愛用され続けています。
創業1952年「川東履物商店」の歴史
川東履物商店の4代目として、サンダルブランド「HEP(ヘップ)」のプロデュースを手掛ける川東 宗時さん。
今回は、川東さんにお話をお伺いしました。
– 「川東履物商店」の歴史について教えてください。
川東さん:「川東履物商店は、1952年に創業しました。もともとはのりや生地といった履物づくりに必要な資材を、製造している方々へ提供する仕事をはじめたことがきっかけです。そこから製品自身を取り扱うようになり、バブル崩壊後には海外へ進出。製造を海外に委託したりしていたようです。」
半世紀以上にわたり、履物を生業としてきた川東履物商店。その歴史の裏には、ものづくり特有の苦労があったと川東さんはいいます。
奈良県が履物の産地であることを、発信していく
– 川東さんが、ブランド「HEP(ヘップ)」を立ち上げた経緯を教えてください。
川東さん:「今から4年前、家の仕事を手伝おうと東京からUターンで奈良に戻りました。父親と一緒に奈良県内の各工場へ挨拶まわりに行ったとき、工場のみなさんからかけられた多くの声が『下火になってきている業界によくきたね。』というものでした。」
決して明るいとは言い難い奈良県の履物業界。高齢化や人手不足、価格の競争など……。さまざまな問題を抱えており、業界全体としては衰退してきているのが現状です。
– 厳しい状況の中、「HEP(ヘップ)」はどのようにしてを生まれたのでしょうか。
川東さん:「奈良でつくられる履物自体は良いものなのに、履物の産地であるということを発信できていないと感じていました。そういったことを世の中へ発信していくための方法として”ブランド立ち上げ”という戦略があることを勉強し、ヘップサンダル専業のブランドをつくろうと思いました。」
サンダルのブランドは世の中にたくさんありますが、ヘップサンダルだけに特化したブランドは「HEP(ヘップ)」のみ。
– ”ヘップサンダル”にこだわった理由は何でしょうか。
川東さん:「大きくふたつありまして……。ひとつは、誰もやっていなかったからです。ファッションに特化したブランドやアウトドアブランドなどは存在しますが、ヘップサンダルというニッチなカテゴリーでブランドを立ち上げているという前例がほかにはありませんでした。
もうひとつの理由は、奈良で履物を製造している作り手さんたちが背中を丸くして仕事に取り組んでいるなと感じたんです。もちろんフィジカル的なこともそうですが、メンタル的にも下を向いて仕事をしているように僕には見えたんですよね。作り手さんたちが家族に胸を張って『HEP(ヘップ))』というサンダルをつくっているんだと自慢して欲しい、そんなブランドになれると思いはじめました。」
ブランド立ち上げの裏には、奈良県の地場産業を支えたいという熱い想いが存在しました。
ひとりひとりがあらゆる場所へ気軽に
一歩を踏み出せるように。
2020年、川東履物商店から新たにデビューしたサンダルブランド「HEP(ヘップ)」。
「ニューヘップサンダル」をコンセプトに、一人ひとりがあらゆる場所へ気軽に一歩を踏み出せることを願って、という想いを込めて誕生しました。
古くから世代を超え愛され続けているヘップサンダルを、現代風にアップデートしこの先の未来へとつなげていく。「HEP(ヘップ)」のこだわりを教えていただきました。
川東さん:「今日に至るまでに、履物産業を培ってきた地元の方々と一緒につくることに意味があると考えています。なので、今の製造背景でできるようなプロダクトをつくるようにしています。例えばですが、最新のテクノロジーを取り入れたり難しい装飾を用いることには、取り組んでいません。なぜなら、奈良の人たちと一緒につくることができなくなってしまうから。
もちろん追求するところはとことん追求します。工場のつくり手さんたちと何度も何度も膝を突き合わせて入念に打ち合わせをし、時間をかけてサンプルを制作しています。そして、世の中にプロダクトを出すということを行っていますね。」
地元・奈良県の履物産業へ新たなる風を吹かせるべく、ブランドの立ち上げにチャレンジをした川東さん。デザイン面での、強いこだわりも教えてくれました。
川東さん:「ヘップサンダルには、『昔、見たことあるな〜。』と思う懐かしいフォルムや色使いがあると思うんですよね。そういったもともとあるテイストを大事にしながら、今のライフスタイルを送っている方たちにおもしろがってもらえるようにどうアップデートするか、ということを大切にしながら企画やデザインを行っています。」
「HEP(ヘップ)」のサンダルをみると、どれもおしゃれなデザインですが、どこか懐かしさも感じます。ご近所・コンビニまでちょっとの距離にサクッと履くサンダルが、素敵なものだったら気持ちも弾みますよね。
どんなスタイルでも、しっくり合わせられるのが魅力の「HEP(ヘップ)」。
ご近所履き用のつっかけサンダルとして活用するのはもちろん、ファッションの中に取り入れることでちょっとした抜け感なんかも演出してくれます。色味は、ブラックをはじめブラウンやカーキといった、従来のヘップサンダルらしい野暮ったさを残しつつ、馴染みやすいカラー展開。
老若男女問わず履くことができるデザインなので、贈り物としてもおすすめです。
「HEP(ヘップ)」人気のデザインをご紹介
ここからは、「HEP(ヘップ)」のサンダルをいくつかピックアップしてご紹介します。
DRV – Python
「HEP(ヘップ)」の中でも、特に人気があるの「DRV」モデルです。
ドライビングサンダルと呼ばれるサンダルがベースとなってつくられたもの。今から約20〜30年前、タクシーの運転手さんがこぞってこの形のサンダルを愛用していたそうです。通気性のよさ、前後に動かせる2WAYのストラップが魅力。
車のペダルを踏みやすようにかかと部分が若干斜めになっているのも、おもしろい特徴です。こういった当時のドライビングサンダルのディテールに惹かれ、「DRV」モデルが誕生したのだとか。
アクセントにパイソン柄があしらわれたデザインは、より一層おしゃれな足元に生まれ変わります。これからの季節、素足で履くと隙間から肌がちらっと見えて涼しく履きこなせますね。靴下を合わせても◎。
GNK Platform
ギプス用のサンダルをソースとした「GNK Platform」モデル。
靴を選ぶときに、足の甲が合わない靴って意外と多いですよね。このサンダルの良いポイントは、マジックテープで甲のサイズ感を調整できるところです。
靴下の厚みによってもサイズを調整できるので、素足だとぴったりなのに厚手の靴下を履くと窮屈……なんてことも心配ご無用!どんな靴下を履いていても、しっかりとしたフィット感を味わうことができますよ。
デザインもシンプルなので、モードな洋服に合わせるとかっこよく決まります。
JMS
健康サンダルのようなフォルムが特徴の「JMS」モデル。
ご紹介した中でも、一番従来の”つっかけ”に近い形のものではないでしょうか。どことなく、懐かしさを感じるシルエット。パイピングのラインが、なんともおしゃれでキュートなデザインですよね。
「JMS」モデルは、中にかかとを包み込むヒールカップが敷かれており、安定感も抜群。オフィスサンダルとしても、おすすめしたい一足です。このサンダルをデスクの下で履いているだけで、足元も心もなんだか軽やかになりそうです!
地元・奈良で「HEP(ヘップ)」のショップを持ちたい
最後に、川東さんに今後の展望についてお伺いしました。
川東さん:「今いる倉庫兼工場の一角に、『HEP(ヘップ)』のショップを作りたいなと思っています。サンダルをつくっている様子が見れたり、現場の雰囲気を味わってもらいながらサンダルのお買い物ができる、そういった場所にしたいと考えています。」
早くとも来年には、地元でショップを持つという展望を叶えたいと語っていた川東さん。各地から多くの人たちが「HEP(ヘップ)」のサンダルを求め、奈良県へ訪れる様子が目に浮かんできました。その日がくるのが、今から楽しみですね!
「HEP(ヘップ)」では、今回ご紹介した以外にもさまざまな種類のサンダルを取り揃えています。オンラインショップから購入可能ですので、ぜひ覗いてみてくだいさいね!