博物館 明治村を徹底レポート!明治・大正の建築を楽しく学ぼう!
目次
朝ドラ「花子とアン」のロケ地になった
「北里研究所本館・医学館」
北里研究所は、日本の細菌学の先駆者である北里柴三郎博士が、伝染病の研究所として設立したものです。創建当時の平面プランはL字型ですが、明治村へは一部が移築されました。博士自身が学んだ研究所にならい、ドイツのバロック風を基調としています。朝ドラ「花子とアン」では、ヒロインが入学した女学校の設定で外観が使われています。
正面階段を入ってすぐにある中央階段。飾り棚も当時のものです。飾り棚の上部には、北里博士が発見した「破傷風菌」と平和のシンボル月桂樹をあしらった北里研究所のマークが彫り込まれています。
顕微鏡を良好な状態で観察できるよう、各階とも光の変化が少ない北側に研究室を配置し、廊下は南側に通されています。
内部では、北里研究所の研究についての展示がされています。北里博士は、東大で医学を修めた後ドイツに留学し細菌学を研究、破傷風菌の培養、破傷風の血清療法によって学界に認められました。
【北里研究所本館・医学館】
旧所在地:東京都港区白金
建設年代:1915年(大正4年)
純粋な洋風建築にはない面白さがある
「東山梨郡役所」
1885年(明治18年)に、東山梨郡役所として山梨県東山梨郡日下部村(現在の山梨県山梨市)に建てられた建物です。明治40年に明治村へ移築され、明治村では最初期の移築建物のひとつで、重要文化財に指定されています。
当時の山梨県令・藤村紫朗氏は開明的な人物で、地元に多くの洋風建築を建てさせています。人々はそれらを「藤村式」と呼び、この東山梨郡役所もその一例。正面側にベランダを廻し、中央棟と左右翼屋で構成する形式は、当時の官庁建築の特徴です。
地元の職人の手によって建てられていますが、木造桟瓦葺の外形に伝統技法を駆使してさまざまな洋風の意匠を施しています。
ベランダの天井を網状に仕上げるのも、この時期の洋風建築に広く見られる特徴です。
天井照明台座の漆喰細工は、伝統的な花鳥風月のモチーフになっています。
【東山梨郡役所】
旧所在地:山梨県山梨市日下部町
建設年代:1885年(明治18年)
国産鉄造建築物の初期の実例
「鉄道局新橋工場と明治天皇・昭憲皇太后御料車」
こちらは、1889年(明治22年)に建てられた「鉄道局新橋工場」です。日本で製作された鋳鉄柱・小屋組鉄トラス・鉄製下見板・サッシなどを組み立てたもので、国産鉄造建築物の初期の実例となる建物。それ以前に輸入材でつくられた工場建物にならって、フォート・インチを採用しています。
建物内部には、天皇・皇后・皇太后・皇太子のための特別な車両である「昭憲皇太后御料車(5号御料車)」が保管・展示されています。
5号御料車は最初の皇后用御料車として製作された全長16m余、総重量約22tの木製車両です。車内には、帝室技芸員の橋本雅邦氏・川端玉章氏が描いた天井画が描かれています。その他にも、昭憲皇太后のご実家一条家の家紋の藤をあしらった布が椅子や腰張りに使用されているなど、華麗な内装がなされています。
【鉄道局新橋工場と明治天皇・昭憲皇太后御料車】
旧所在地:東京都品川区大井町
建設年代:1889年(明治22年)
西郷隆盛の弟である西郷從道の接客用の洋館
「西郷從道邸」
木造総二階建銅板葺のこの洋館は、明治10年代のはじめ西郷隆盛の弟である西郷從道が東京上目黒の自邸内に接客用として建てたものです。当時在日中であったフランス人建築家レスカス氏の設計ではないかと考えられています。
建物の特徴は、半円形に張り出されたベランダ、上下階の手すりなどデザイン性の高さだけではありません。屋根に重い瓦を使わずに軽い銅板をひいたり、壁の下の方にレンガをおもり代わりに埋め込み建物の浮き上がりを防ぐなど、耐震性を高めるための工夫も凝らされています。レスカス氏は、日本建築の耐震性についての論文をまとめ、自国の学会誌に寄せています。
家具・インテリア・手摺・扉金具・廻り階段など、内部を飾る部品はほとんど舶来品でまとめられています。「西郷從道邸」では、土日に建物ガイドが実施されているので、詳しく知りたい方はぜひ参加してみてくださいね。
【西郷從道邸】
旧所在地:東京都目黒区上目黒
建設年代:1877年(明治10年)代
中世ヨーロッパのロマネスク様式を基調とした
「聖ヨハネ教会堂」
聖ヨハネ教会堂は、1907年(明治40年)に京都の河原町通りに建てられたプロテスタントの一派日本聖公会の京都五條教会です。二階が会堂、一階は日曜学校や幼稚園に使われていました。中世ヨーロッパのロマネスク様式を基調に、細部にゴシックのデザインを取り入れた外観が特徴的。
構造は1階が煉瓦造りで2階が木造漆喰壁で構成されています。建物細部の随所にゴシック風の尖頭アーチが見られ、特に正面入口は、レンガ積の角柱から柱頭飾りをはさんでレンガ積のきれいなアーチが立ち上がっています。
会堂内部の屋根裏は、伝統的な日本建築で見られる化粧野地の竹簾が張られています。京都の気候に合わせて使ったと言われています。竹簾が窓からの光を反射し、より開放感を増しています。
【聖ヨハネ教会堂】
旧所在地:京都市下京区河原町通五條
建設年代:1907年(明治40年)
ここからは1〜3丁目にある建物をダイジェストでご紹介していきます。