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名古屋駅から徒歩で約15分。世界中で愛される洋食器メーカー「ノリタケ」の創立100周年記念事業の一環として、名古屋市の本社工場跡地にオープンした「ノリタケの森」。”文化と出会い、森に憩う”をテーマに、ミュージアム、クラフトセンター、ショップ、カフェなどさまざまな施設がそろった一日中楽しめる複合施設です。
インテリアを考える上でも、テーブルウエアは欠かせないポイント。こだわりの住まいなら、そこで使うアイテムにもこだわりたいですよね。そこで今回は、食器を「見て」「知って」「買える」ノリタケの森の魅力をたっぷりとご紹介します。
近代化産業遺産にも登録された、
明治の赤レンガ建築。
ノリタケの森のシンボルとも言える赤レンガ造りの建物。1904年(明治37年)に建築された日本陶器合名会社(ノリタケの創立時の社名)の最初の工場です。1975年までは実際に陶磁器製造の工場として稼動していました。森村市左衛門(もりむらいちざえもん)ら創業者6名の宣誓文が埋め込められており、創立時の想いが込められた建物になっています。
陶磁器焼成用トンネル窯煙突の跡。建造された当時は45メートルの高さがあり、昭和54年の工場移転とともに上部が撤去され、現在はモニュメントとして基部が残されています。
平成19年度に経済産業省から「近代化産業遺産」として指定されました。
まずはノリタケの歴史を知ろう!
「ウェルカムセンター」
ノリタケの森に訪れたら、まず訪れて欲しいのが「ウェルカムセンター」。ここでは、ノリタケの歴史や、洋食器の製造で培った技術を知ることができます。創立当時から現在に至るまでを、当時の地図、映像、パネルなどさまざまな角度から紹介されています。
創立当時を名古屋の街並みと振り返る「ウェルカムゾーン」
ウェルカムゾーン
1943年(昭和18年)当時の工場のジオラマも展示されていました。
ノリタケの歴史は、創業者・森村市左衛門が、1889年(明治22年)にパリ万博博覧会を視察した際に、「この美しい陶磁器を日本でもつくりたい」と感銘を受けたことからはじまります。こちらのゾーンでは、こうした創立当時の明治末期から現代までの歴史を、地図、写真、映像を組み合わせて紹介されています。当時の名古屋の街の様子も知ることができ、とても興味深かったです。
ノリタケの歴史や事業を映像で知る「シアタールーム」
シアタールーム(映像の所要時間は約7分間)
ノリタケの歴史や事業を映像で知ることができます。ノリタケのものづくりに対する情熱を感じる映像でした。特に、創業から最初のディナーセットの販売まで、約10年もの年月がかけられていたことには驚きました。
お皿型のスクリーンが楽しい「ヒストリーテーブル」
1854年に日米和親条約、1858年には日米修好通商条約が結ばれ、日本の体制が不十分なまま海外との貿易を拡大しました。創業者・森村市左衛門は、福沢諭吉から「流出した金を取り戻すために海外貿易以外に方法はない」と助言を受け、輸出商社「森村組」を創業。
「ヒストリーテーブル」では、こうしたノリタケを創立した幹部たちの人物パネルや年表を交え、ノリタケの歴史を知ることができます。
テーブルには、お皿型のスクリーンが。
お皿の上に手をかざすと、映像がスタートします。
ノリタケの技術は、お皿だけじゃない!「テクノロジーゾーン」
実は、ノリタケの事業は洋食器の製造だけではありません。洋食器製造で培った技術は、自動車、鉄鋼、電子デバイス、医療、食品、エネルギーなど、様々な分野で生かされています。
工業機材事業。「削る」「磨く」技術を応用し、国内では最大の研削・研磨工具の総合メーカーとして、日本の基幹産業を支えています。
セラミックス事業。陶磁器の素材であるセラミックを分析し、特性を最大限に生かした各製品を展開しています。
転写技術は、バイクのヘルメットや、ラケットのデザインなど、身近なものにも活用されています。
【ウェルカムセンター】
営業時間:10:00〜17:00
定休日 :毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始
製造工程を見学!「クラフトセンター」
続いては、ウェルカムセンター隣の「クラフトセンター」で、陶磁器の製造工程を見学しましょう。ここでは、ボーンチャイナの原型製作から釉焼きまで、生地製造の工程を実際に見ることができます。ボーンチャイナとは、イギリスで18世紀に開発された磁器の一種で、原材料に牛の骨(bone)の灰が使用された陶磁器(china)のことです。
では、ここからは実際の製造の流れをご紹介していきます。
①原型製作(げんけいせいさく)
粘土で原型をつくりそれを基に、石膏で使用型を製作します。製造過程で収縮するため、最終的な完成サイズを計算し、最初の粘土の原型がつくられます。まさに職人の技ですね。
②成形(せいけい)
実際の作業風景も間近でみることができます。
ここ、クラフトセンターでは型に材料を鋳込んで作る流し込み成形で形をつくっています。型からはみ出た粘土は、職人さんの手作業で取り除かれます。とても繊細な作業でした。
③締焼き(しめやき)
乾燥時間を終えた生地は、1230℃の高温で14時間かけて焼成します。この締焼きという工程で大きさは13%収縮します。ボーンチャイナはこの時点で形状が決まるので、置物や花器など複雑な形のものを作るのに適しています。
④施釉(せゆう)
締焼きの終わった生地に釉薬(ゆうやく)を均等に施すことを施釉(せゆう)といいます。釉薬とは陶磁器の表面をおおうガラス質の薄い膜のことです。
⑤釉焼き(ゆうやき)
実際に使用されていた窯
施釉された生地を1130℃で11時間焼成します。釉焼きすることで釉薬が溶けて、表面が透明なガラス質になります。クラフトセンターには、実際の焼成窯に入ることができる体感コーナーがあります。
⑥絵付け(えつけ)
印刷された転写紙
陶磁器の絵付けには様々な方法がありますが、クラフトセンターでは「転写紙貼り」「吹き画付け」「素描(ハンドペイント)」を紹介しています。転写紙とは、専用の台紙に陶磁器用の絵の具を印刷し、表面を樹脂の薄い膜で覆ったもの。「吹き絵付け」とは、スプレーガンを使い霧吹きのように、絵の具を吹き付ける方法。広い面や曲線が多いものに、ムラなく色を塗りたいときに使用されます。
転写紙は水に濡らし台紙から剥がして、生地に密着させます。
⑦金仕上げ(きんしあげ)
金を王水(強い酸性の液体)と油で溶かした金液を使って、装飾を行います。なんと、金液は焼成前は茶色なんです。これには驚きました。約800℃で焼き上げると、美しい金色に変化します。
こうしてボーンチャイナは、さまざまな絵付け技法を組み合わせ装飾されます。こちらは、「素描」「転写絵付け」「盛上」「エナメル盛」「金盛」という技法が施された花瓶で触れることができます。
最後に入念な品質検査を行い、製品が完成です。一枚のお皿にこんなにも沢山の工程や技が取り入れられるなんて知りませんでした。こうしたつくる過程を知ると、お店などでお皿を見るときも、これまでとは違った楽しみが生まれます。一つひとつの説明がとてもわかりやすくまとめられていたので、お子様がいらっしゃるファミリーにもおすすめですよ。
【クラフトセンター】
営業時間:10:00~17:00
定休日 :毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始
入場料 :大人及び学生500円、高校生300円、中学生以下無料
(ミュージアムと共通のチケットです)