目次
「熱田神宮」は、三種の神器のひとつ「草薙神剣(くさなぎのみつるぎ)」をお祀りし、1900年以上の歴史を持つ神社です。かつては戦国武将の三英傑、信長・秀吉・家康などもあつく信仰してきました。
令和3年10月に新設された「剣の宝庫 草薙剣」では、数々の名刀の展示をはじめ、本物の刀に触れる体験も!境内のおすすめスポットとあわせてご紹介します。
熱田神宮とは?
三種の神器(さんしゅのじんぎ)をご存知でしょうか?
三種の神器とは、八咫鏡(やたのかがみ)・草薙神剣(くさなぎのみつるぎ)・八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)のことで、天皇の正式な継承権を示すとされています。そのうちの、草薙神剣をご神体としてお祀りしているのが熱田神宮です。
ご祭神である熱田大神(あつたのおおかみ)は、この草薙神剣を御霊代(みたましろ)とする天照大神のことです。
※御霊代(みたましろ)・・神が宿るとされる対象物
※草薙神剣は、別名・天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)
熱田神宮の歴史
そもそも草薙神剣というのはどういったものでしょうか。それは神話の時代にまでさかのぼります。素盞嗚尊(すさのおのみこと)が、出雲で八岐大蛇(やまたのおろち)を退治した際に、その尻尾から現れたとされるのが草薙神剣です。
のちに天照大神に献上しますが、その後時代もすすみ、巡り巡って第12代景行天皇の時代、日本武尊(やまとたけるのみこと)の手に渡りますが、尾張のお妃・宮簀媛命(みやすひめのみこと)に預けたまま、三重県亀山市の能褒野(のぼの)で亡くなります。
その草薙神剣を預かっていた宮簀媛命が、尊の遺志を重んじて熱田の地にお祀りされたのがはじまりで、創建から1900年以上の歴史となります。そんないにしえの時代の神剣が現代にも脈々と受け継がれていると思うだけで、ロマンを感じますね。
境内を一部ご紹介
天照大神の荒魂をお祀りする一之御前神社(いちのみさきじんじゃ)
境内の左奥の突き当たりに鎮座するのが「一之御前神社(いちのみさきじんじゃ)」です。
ここには天照大神の荒魂がお祀りされています。荒魂というのは、神様の魂のはたらきの側面のひとつで、活動的な様子をあらわしたもの。
ひっそりとした場所にあり、木々に覆われていて落ち着いて参拝できるのも魅力です。
都会の中のオアシス「こころの小径(こみち)」
本殿の裏手をぐるりと囲むようにあるのが「こころの小径(こみち)」。都会にいながら、このエリアに入ると、木々に囲まれたまさに都会の中のオアシス。深呼吸しながら森林浴で癒し効果も抜群です。※特別な許可を得て撮影しています。
【こころの小経】 参入時間:午前9時~午後4時まで
世界三大美女のひとり「楊貴妃」にあやかる美肌の水
こころの小径にお祀りされている神社のひとつが、こちらの「清水社」。ご祭神は「罔象神(みずはのめのかみ)」という、主に滝などに祀られることも多い「水の神様」で、「お清水さま」とも呼ばれています。
そしてこの清水社の裏手には、美肌になるというスポットがあります。
清水社の右の階段を降りていくと……
石垣で囲まれた小さな湧水スポットが……。その中央にちょこんと石碑が突き出ているのがわかりますか?世界三大美女のひとりと称された「楊貴妃」を供養する石塔の一部とも言われています。
唐の時代、玄宗皇帝が日本を侵略するという噂を聞き、それを阻止するために熱田大神が楊貴妃に化身し、その美しさに玄宗皇帝が自分の妃としたことで侵略を食い止めた、との説も残っています。
目の前の石碑をめがけて3回かけて祈願すると成就すると言われていますよ!
かつて神剣を納めていた「土用殿」
明治26年まではご正殿の東側に並んで、ここに神剣を納めていたそう。昭和46年に現在の場所に当時のままの様式で復元されています。
令和3年に新設・リニューアルしたスポット
本物の刀剣に触れる体験も!「剣の宝庫 草薙館」
令和3年10月に3年の月日を費やして完成した「剣の宝庫 草薙館(つるぎのほうこ くさなぎかん)」。熱田神宮は先にも述べた「草薙神剣」をお祀りする神社ゆえ、武家や刀匠、篤志家(とくしか)など、多くの刀剣が奉納されてきました。現在所蔵している刀剣はおよそ450口(ふり)!
※篤志家・・社会奉仕や公共の福祉などを熱心に実行したり支援したりする人
館内は所蔵する刀剣の展示をはじめ、刀剣の鍛造行程や映像コーナーなど、刀剣好きの方もそうでない方も、刀剣の魅力をたっぷり感じられる工夫がいっぱい!
では中に入ってみましょう。
エントランスの天井には躍動感あふれる、迫力満点の武者像。
薄暗くライトアップされた館内でまず目にとまるのが、ずらりと並ぶガラスの半島型展示。ここは1ヶ月ごとに入れ替わるという刀剣が展示されています。表裏共に鑑賞できるようにガラス張りになっている工夫も。
どういった工程で刀剣ができるのかを知る展示コーナー。
写真は”玉鋼(たまはがね)”と呼ばれる、良質な鋼。たたら製鉄といわれる日本古来の製鉄法で、砂鉄と木炭を燃焼させてできるとか。
こちらは常設展示の「真柄の大太刀(まがらのおおたち)」。姉川の合戦(1570年)で、朝倉方の真柄十郎左衛門直隆と十郎隆基の父子が用いたとされる通称「太郎太刀」と「次郎太刀」。間近で見ると、イメージしている刀をはるかに超える大きさと迫力に圧倒!
映像で草薙神剣と熱田神宮の由緒もわかりやすく紹介。
また、刀剣体験コーナーも併設されています。
なんと、本物の刀に触れることができます!
持ってみると結構重くてズッシリ!
こちらはさきほどの太郎太刀・次郎太刀のレプリカ。1口の重さはそれぞれ8キロと10キロ!一人ではとうてい持ち上げられません。これを持って戦ったとはすごいですね!
草薙館では、こういった本物の刀に直接触れる体験ができるのも大きな魅力です。事前に熱田神宮のウェブサイトで歴史なども頭に入れていくと、単なる武器だけでなく、先人の刀に込めた精神性なども知ることができて、さらに楽しめますよ。
【剣の宝庫 草薙館】
開館時間:9時~16時30分(最終入館は16時)
休館日 :原則最終木曜の2日前(火曜日)、12月25日~31日まで
拝観料 :一般 500円 小・中学生200円(宝物館との共通拝観券もあり)
憩いの場「くさなぎ広場」
草薙館のすぐそばにある、令和3年7月にリニューアルした「くさなぎ広場」。南神池をぐるりと囲む造りになっていて、ところどころベンチもあるので散策したり、一休みしたりと憩いのスペースです。
また、広場の一角には「二十五丁橋(にじゅうごちょうばし)」も。板石25枚で作られた名古屋最古の石橋。今回のリニューアルにあわせて、渡ることができるようになりました。
日本三大燈籠のひとつ「佐久間燈籠」
こちらは京都の南禅寺、東京上野東照宮にならび、日本三大燈籠のひとつ「佐久間燈籠(さくまとうろう)」。
その佐久間燈籠のまわりも新たに回廊ができ、散策が楽しめるようになりました。名古屋市で最大といわれるケヤキも間近で見ることができますよ!
開放的なテラスでお食事とスイーツが楽しめる「宮きしめん」
くさなぎ広場にもうひとつリニューアルしたのが「宮きしめん」。開放的なテラスで屋根付きなので、天候も関係なく楽しめるように!
名古屋名物のきしめんをはじめ、みそカツなどもセットになった定食類も加わり、メニューも充実。
宮きしめんの特徴は2種類のつゆ。写真は定番の「赤つゆ」。もっちりつるつるとした食感の麺と、ちょっと甘めの醤油ベース、そして大きめに削られた鰹節の香りがホッとします。
もう一つのつゆ「白つゆ」は白醤油ベースで「白えび入りかき揚げきしめん」などに使われます。
名古屋名物のみそヒレカツもセットになった定食。そのほか飛騨牛コロッケやかき揚げ丼などの定食も。
今回新たに設置されたのが甘味コーナー。ぜんざいやソフトクリーム、フロートなど、食後でもちょっとひとやすみ……というときにもおすすめ。
そしてチェックしたいのが、熱田神宮限定の「宮まんじゅう」。お店でつくられていて、ここでしか食べることができません。お土産でも購入可能。
【営業時間】9時~17時(ラストオーダー16時30分)
都会の中にありながら、ひとたび足をふみいれると、緑あふれる癒やしの空間が広がる熱田神宮。今回はほんの一部だけの紹介でしたが、お昼やお茶もはさみながら、ゆっくり散策してほしいスポットです。
今回展示してあったさまざまな刀剣にも触れることで、単なる武器としてだけではなく、御守や祭典での神具などの幅広い用途、そして先人たちの魂や日本人本来の精神性を見いだす機会にもなりました。
1900年以上の歴史のある地を、ぜひゆっくり訪れてみてくださいね。