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今回は、春日井市の勝川エリア、神明町にある自家焙煎コーヒーのお店「COFFEE POLITE(コーヒーポライト)」をご紹介します。
何気ない日常のティタイム。心静かな自分時間。大切な人との語らい。そんな、コーヒーを手にゆっくりした時間を楽しみたいときに、ぜひ訪れてほしいお店です。
「POLITE」は日本語に訳すと、「丁寧な」や「礼儀正しい」という意味。
仕入れや焙煎、ドリップまで、店主の手によってていねいに淹れられるコーヒーは、毎日飲みたくなるようなマイルドな味わい。お店誕生の背景からコーヒーのこだわり、店主の思いやポライト定期便のお話まで、じっくりとお話を伺いました。
ご縁がつないだコーヒー屋さん
コーヒーの専門店って、なんだか敷居が高いような気がしませんか?その気持ちがよくわかるという店主の杉澤さん。最初に「COFFEE POLITE」誕生のストーリーを教えていただきました。
実はコーヒーが苦手だった杉澤さんですが、10代の頃から地元の大治町で喫茶店を開くのが夢でした。家族や友達、地域の人が集えるような「憩いの場」がつくりたかったのだそう。
– コーヒーが苦手だった方がコーヒー屋さんに?どのようなスタートだったのでしょうか。
杉澤さん:「喫茶店を開くにはまず何から始めるといいのかを考えました。約6年間お世話になったメディア関係の仕事を退職して、カフェで働きはじめたんです。カフェで働いて初めて、コーヒーにこれだけの需要があるのかと正直びっくりしました。人それぞれのコーヒーの楽しみ方や、生活の一部にコーヒーがあることも知りました。そんなコーヒーの魅力は何なのか、いろんなお店のコーヒーを飲み歩きました。チェーン店を巡っていた当初は、コーヒーはただ苦いだけでおいしさがわかりませんでした。それでも苦手で終わらせたくなくて、今度は専門店を巡りました。」
杉澤さん:「そこでチェーン店にはなかった光景に出会ったんです。焙煎前と後のコーヒー豆の様子、挽き方や抽出方法はお店によってさまざま。コーヒーの多様性におどろきました。専門店の、本当においしいと思えるフルーティな浅煎りコーヒーに出会ったのをきっかけに、コーヒーがどんどん楽しくなっていったんです。店主さんから教わり、自分でも勉強をするようになりました。」
– 次第にコーヒーが身近なものになっていったのですね。
杉澤さん:「もっとコーヒーのことが知りたくなって、より専門的な働き方を模索していたところ、豆屋さんを紹介してもらいました。喫茶店ではなく、コーヒー豆や器具を販売するお店での仕事。焙煎から販売、コーヒー豆が飲み物として提供されるまでの過程を知ることは、商売という視点も含め、とても新鮮でした。
覚えようと夢中で頑張る中、焙煎人が変わることになり、僕が焙煎を任されることになったのです。お店の味をつくる重要な役割を担うのは重責でありながら、とても勉強になりました。」
焙煎によって引き出す多様なおいしさを伝えたい。苦手だったからこそ、苦手な人にも楽しみ方を提案できるのではと、杉澤さんはコーヒー屋さんになることを心に決められたのでした。
はじまりは美容院の軒先
「何気なく行きつけの美容院で夢の話をしたところ、うちのお店の駐車場を使っていいよ。と言ってもらい、週末だけのコーヒー屋さんがはじまりました。」と杉澤さん。
そこからマルシェに出店したり、移動販売という形で、少しずつ幅を増やしていかれました。
そうして、地元大治町に、念願だったコーヒー屋さんをオープン。たっぷり手間ひまをかけ、お気に入りの空間に仕上がりました。
杉澤さん:「これまでお世話になってきた方々もよろこんでくださり、夢が叶ったことがとてもうれしくて。今も、その記憶は鮮明です。「コーヒー」と「空間」を大切に、お店をスタートしました。
営業がはじまると、お店を続けていくことは想像以上に大変でした。「丁寧に仕事をすること」と「人を大切にすること」は絶対に手を抜かずにきたものの、それだけではお店を続けていくのが難しかったのです。」
多くのファンに惜しまれながら、2019年の12月、大治町でのコーヒー屋さんは閉店となりました。またいちからどうしよう、ふりだしに戻ったような気分になられたのだとか。
杉澤さん:「大治町から離れるとき、常連のお客様から定期的にコーヒーを送ってほしいとのお声をいただいていたのですが、なかなか納得がいくような準備は整っていませんでした。」
ご縁をいただき春日井市へ。
ご縁あってお声がかかり、あっという間に話は進みました。同じ月の12月、春日井市勝川エリアにて、作家さんの委託商品が並ぶお店の一角でコーヒーを提供することになったのです。
移転先は間借りという形のスペースでしたが、杉澤さんはかねてから「空間」と「コーヒー」を大切にされてきました。それらをどうお伝えしていけるのか、試行錯誤をしながらの営業がはじまります。
そんな矢先に新型コロナウイルスの影響で、取り巻く環境が大きく変化していきました。お客さまの姿がまばらになっていったのです。同時にちまたでは、おうち時間を豊かにというような生活様式が好まれるように。
おいしいコーヒーをお伝えしていくには
杉澤さんは仕事の仕方を変えていこうと、大切にしていた「店内飲食」を一時お休みすることを決断。そうして、定期的においしいコーヒー豆をお届けする「ポライト定期便」が誕生しました。おうち時間を豊かにするお手伝いになれば。これなら大治町や移動販売の時のお客さまとの繋がりも大切にしていけると。
そして、ふたたび自分のお店をオープン!
多くの学びがあったという約1年間の間借り営業を終え、2021年2月、新しいはじまりを迎えました。
春日井でのご縁を大切に繋いでいきたいという想いから、選んだのは同じ勝川エリア。大治町での夢が叶ったあとになんとなく描いていた、次の夢、古民家の平屋にお店を構えられたのです。
COFFEE POLITEの楽しみ方
COFFEE POLITEの古民家
COFFEE POLITEの古民家があるのは、うっかりすると見逃してしまいそうな住宅街の奥まったスペース。そんな場所だからこそ、とても静か。
敷地に足を踏み入れると、広縁側で焙煎作業をする様子が伺え、ふわっと香ばしいコーヒーの香りが辺りを包みます。
古民家をリノベーションされたステキな空間
築50年ほどの古民家の内装は、古民家の古き良きものを残しつつ、素敵にリノベーションされています。
すっきりと研ぎ澄まされた印象でありながら、インテリアは大切にしたいものが厳選されていてあたたかい。
あちらこちらに季節のお花や植物が飾られ、今を感じる空間に。
周囲を気にせず過ごすことができるようにと、テーブルの配置もゆったりとられています。おひとりさまにも、大切な人とのひとときにも、ほっと心がほぐれるよう。
コーヒー豆のこだわり
ポライトのコーヒーはすべてスペシャルティコーヒー。スペシャルティコーヒーとは、品質のグレードが高く、ある一定の基準をクリアしたもの。わずか、全体の約12%のみなのだとか。
果実であるコーヒー豆は、ブラジル以外の産地ではほとんどが斜面で栽培され、手で摘みとられるのだそう。生産は本当に労力の要るもので、1本の木から収穫できるのはたった250g程度というのだから、その希少さがうかがえます。
背景には人の想いがあると言います。生産者をはじめ、運ぶ人、買う人・焼く人・抽出する人がいて、コーヒーが手元に届く。「1杯のコーヒーにも、これだけの想いがつまっていることを知ってもらいたい」と杉澤さん。
そして、適正な価格で購入することで、それが豆の生産や関わる人の雇用を守り、持続的にコーヒーを楽しんでいけるのだと。
こだわりは「店の味」
杉澤さん:「ブレンドコーヒーにこだわっています。店オリジナルの味が出せるから。」
コーヒーの流行にサードウェーブ・第三の波が到来してからは「シングルオリジン」と言って、単一の豆を挽いたコーヒーが好まれるようになりました。生産者や生産の過程が見えやすいがいいところ。また、生産国による味の特徴が楽しめる。ただ、シングルオリジンはお店オリジナルの味が出しにくいという側面も。
「シングルオリジンも大事にしているけれど、ポライトにしかない味をブレンドで出していくことをいちばん大事にしています。」と杉澤さん。香りや季節など生豆の状態を見ながら、感覚を研ぎ澄ませてブレンドされるのだそう。てづくりの味です。
ブレンドをメインにすることで、生豆の流れを良くして、新鮮さもお届けできる。お客さんに、「お店の空間で」「おいしいコーヒーを楽しんでもらう」ことが継続できるようとの思いも込められています。
コーヒー好きも初心者さんにも楽しんでもらいたい、おすすめメニュー
COFFEE POLITEの「いつもある、珈琲」は、朝餉(あさけ)・昼餉(ひるけ)・夕餉(ゆふけ)の3種、日常のシーンをイメージして焙煎されているオリジナルブレンドです。
それに加え、「今月の珈琲」として店主おすすめのシングルオリジンが月毎に1種類用意されています。
浅煎りから深煎りまで、お好みや気分に合わせてオーダーするのも◯、初心者さんや迷った方はぜひ杉澤さんに相談してみてください。筆者もコーヒー専門店初心者、とてもていねいに教えてもらい、おすすめで「珈琲二種飲み比べ」をオーダーしました。
コーヒーは果実なんだということを思い出させてくれるような爽やかな味であったり、筆者好みの香ばしさとともに深いコクのある味も楽しめました。
ちょっと違ったコーヒーを飲みたい時は、爽やかにレモンが香る「檸檬珈琲」や、もしその時コーヒー気分でなくても「自家製レモネード」もおすすめ。
コーヒーのお供
おいしいコーヒーにお供があれば、尚うれしい。もともと和菓子がお好きだという杉澤さんが、いつかやりたいと思っていたことのひとつが、お店オリジナルの「お供」です。
お客さんでもあったももさんは、今では週に数日はお店のお手伝いをされています。コーヒーのお手伝いからはじまり、「その人にしかできないことを」という杉澤さんの想いもあり、お供を任されることになったそう。
ももさんのつくる「ポライトのどら焼き」は試作を繰り返し、約2ヶ月をかけて誕生しました。豆腐を使ったしっとりとした生地に、ことこと煮込んだやわらかいあずきがたっぷり。添加物フリーのやさしいお味は、お子さんからお年寄りにまでおすすめしたいひと品。
お土産にも、きっとよろこばれますね。