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名古屋市営地下鉄東山線「伏見」駅直結。2015年「伏見地下街」にオープンした「Handsome Burger(ハンサムバーガー)」は、アメリカ西海岸のハンバーガー文化に発想を得たチーズハンバーガーが人気のショップ。
美味しいハンバーガーが食べられるのはもちろん、手ごろな値段で、提供が早く、ビジネスパーソンのランチや、主婦(夫)のテイクアウト利用などで親しまれています。
今回はオープンの経緯や人気のヒミツについて、代表の後藤謙太郎(ごとう・けんたろう)さんにお話を聞きました。
「Handsome Burger」とは?
改札口に近づくほど強く感じられるお肉の香り。名古屋市営地下鉄東山線「伏見」駅、東口改札を出てすぐの場所にある「Handsome Burger」は、アメリカンスタイルのハンバーガーショップです。
「伏見地下街」の通路からキッチンが見えるほどコンパクトにまとまった店内。
素材の温かみを感じるウッドフローリングと、ポップなオレンジ色のアクセントカラーから「誰でも歓迎」してくれる雰囲気を感じます。
壁に飾られている数々のアートフレームや流れてくる英語のBGMは、まるでアメリカに旅行に来たような錯覚を覚えます。
店内のイートインスペースは着席なしのハイカウンターでしつらえられており、フラッと立ち寄ってお腹を満たせるつくりになっています。
ハンバーガーのメニューがシンプルなのもひとつのポイント。2種類のハンバーガーと、フレンチフライ、そしてドリンクの販売です。
一番人気「チーズバーガー」が美味しい理由
人気のチーズバーガー ¥700(税込)
一番の人気メニューのチーズバーガー。ハンバーガーは好きで食べるけど、キッチンで作る様子まで見たことがあるという方は少ないのでは!?
今回はチーズバーガーができるまでの過程を見学させていただき、なぜ「美味しいのか?」そのヒミツも合わせてお伺いしました。
なんと「Handsome Burger」には冷凍庫がないのだとか。
お店で扱っているお肉は仕入れから「生」の状態を保ったまま、お客様へ提供されます。毎日「生」の牛肉の仕込みを行うことで、保管や冷凍などで起こる鮮度の劣化を抑え、一番おいしい状態で食べてもらえるようにしています。
また極力お肉に触れず仕込みを終わらせることでもパテの鮮度を保っています。
ここまで焼きあがると、キッチンにはパテの美味しい香りが充満します。薄くカリッと仕上げるのがポイント。代表の後藤さん曰く「ビビンバのお焦げのような香ばしさ」があり、食欲をそそります。
USチェダーチーズが焦げる香りがたまりません。ビーフとチーズ両方が主張しながらも、お互いを引き立て合う最高のコンビネーションです。
ハンバーガーで忘れてならないのが、トッピングの野菜。いずれも地元の野菜を使っています。この日は、愛西市のレタスと、三重県木曽岬町のトマトを使用。
驚いたのは、注文が入ってから提供までのスピード感。ランチタイムのピーク時も注文が入ってから作りはじめ、5分以内に提供しているのだとか。
「できたてを早く」提供したいと語る、後藤さん。オフィス街という立地からも、お客様のために1秒でも早く手渡したいという想いが全身からあふれているように感じられました。
バンズがやわらかく、フワッとした持ち加減。
一口食べると「あれ?」食べやすい。いわゆるグルメバーガーを想像して食べてみたものの、顎が外れるような「頑張って食べなきゃ」という感じが全くありません。
それもそのはず、ヒミツはバンズにも。サンドイッチ用のパンをベースにして考案したという、やわらかく端切れの良いバンズが、女性にも嬉しい食べやすさを実現しているのだそう。
食べ進めやすく、あっという間にひとつ間食。でもしっかりお腹いっぱいに満たされるボリュームです。
ごちそうさまでした!
ハンバーガーとの出会い
-ハンバーガーとの出会いを教えてください。
後藤さん:「元々商社マンだったのですが、当時は通訳を通して現地エンジニアと会話をしていました。直接話したいなと思いながらも、当時はきっかけがなく。
仕事がひと段落したタイミングで社長に1年間休みをもらい、思い切って語学留学することにしました。大学時代にアメリカに行きたかった想いが実現できるチャンスだという考えもあったかもしれません。
留学先はIT関係の会社が多いサンフランシスコにしました。そうして32歳の学生になりました。」
後藤さん:「留学するのに十分な貯金はあったものの、新たな収入源はないので、安くてお腹いっぱいになるハンバーガーに助けられていました。
ハンバーガーひとつ$6.50(2022年1月のレートで約740円)だったのですが、惹きつけられましたね。一口食べた瞬間の衝撃的な美味しさが鮮明に記憶に残っています。
それに、お店には若い人から年配の人までいて、みんな美味しそうにハンバーガーを食べていて、幸せな空間だなぁと感じました。
当時、語学学校のすぐ外で売っていたホットドッグもよく食べていたのですが、美味しさと言う点では比べる余地もなくハンバーガーの勝ちでした。」
-留学期間の1年が終わった後はどうされたのですか。
後藤さん:「少し語学留学の期間を延長して、合わせて1年10カ月アメリカにいました。延長した期間は、無給でハンバーガーショップで働かせてもらいました。
元々商社マンだったということもあって、美味しいハンバーガーショップを日本に持ってきたいなぁと考えていました。ただ、働いていたショップは「地産地消」のコンセプトだったので、物理的に無理があったんです。
そういった経緯から、日本でも「地産地消」という同じコンセプトでお店をやろうという考えに変わりました。」
-今提供しているハンバーガーの姿はいつ完成したものですか。
後藤さん:「アメリカにいた時にできあがっていました。
サンフランシスコの有名なハンバーガーショップへ行って食べたチーズバーガーの衝撃が強く記憶に残っていて。」
-今提供されているハンバーガーはグルメバーガーのカテゴリーに入れていいものでしょうか。
後藤さん:「どっちかというと、ファストフードと同じ仲間に入れて欲しいですね。
フォークとナイフを使って食べるオシャレなものでなくて、気をつかわずに入れるハンバーガーを目指していて。」
-グルメバーガーの定義が難しいですね。
後藤さん:「「Handosme Burger」で提供されているハンバーガーは、品質的にはグルメバーガーの域だけど、スタイルとしてはファストフードなんですね。
グルメバーガーは値段も高いですよね。やっぱり、手軽に美味しいハンバーガーが食べられるというのが、僕のアメリカでの原体験なので、そこをお客さんに体感してもらえるように今後もハンバーガーを提供していきたいです。」
僕たちはここにいる
-お店が地域に浸透するまでどれくらいの期間でしたか。
後藤さん:「2年くらいかかりましたね。はじめはお客さんが来なくて1日8食くらいしか出ませんでした。
でも、オフィス街で駅直結の場所ということもあって、お店の前を通る人はいつもいました。だからとにかく気付いてもらえるようにできることをしようと。
「伏見商店街」は居酒屋さんが多いので、朝の時間帯はシャッターがおりてるお店がほとんどなんです。
そこで、僕たちは6時半ごろからお店のシャッターを開けて仕込みをしてみたり、お客さんの来ない時間帯は店内の清掃をしたりと、とにかくお店の前を通る人に対してアプローチを続けました。」
後藤さん:「逆に言うと、ビラを配ったり、SNSや口コミサイトで宣伝をしたりということは全くしませんでした。
大前提として、お客さんに直接来てもらって、作るところを見て感じて、そして味わって欲しいという想いがあるので、店舗にこだわるのが一番いいという結論だったんです。
お客さんに「美味しい」と言ってもらえる瞬間っていいですよね。商品を自分で作って、手渡しするということが、とても大切だなと思っています。
手渡しには「責任」という意味があると思ってて。このお店の空間から責任をもってお客さんに渡すハンバーガーを美味しいと感じてもらえる。その一点につきますね。」
今後について
-今後どのようなお店にしていきたいですか?
後藤さん:「実は直近でアメリカにお店を出す計画があったので、是非それを実現したいです。
アメリカにHandosme Oxford(ハンサムオックスフォード)という、アメリカのヴィンテージ品を扱う姉妹店があるのですが、そこにいる仲間と一緒に仕事をしたいです。
この店舗のオープンも、アメリカから仲間が駆けつけてくれて一緒に立ち上げをしたんです。
「Handosme Burger」はアメリカのハンバーガーを日本人の僕の解釈で作ったモノです。ハンバーガーの逆輸入と言うか、この日本人育ちのハンバーガーをアメリカに持っていくことで、アメリカの人が「美味しい」と喜んでくれるのではないかなと考えています。」
取材当日は平日15時の訪問でしたが、途切れることなくお客さんの来店があり、活気がありました。
お店に来られるお客さんは、店内の音楽にリズムを合わせて鼻歌を歌ったり、フラッと来て自分のランチタイムを満喫した様子だったりと、カジュアルに美味しいハンバーガーを楽しんでいる雰囲気が感じられました。
キッチンに立っている後藤さんは、まさに職人風で目の前の注文のことだけを考えているように見えるのですが、いざキッチンから出て会話をすると、気さくでフランクに接してくださり、別人に見えて不思議でした。
また後藤さんが作ったハンバーガーを食べに行きたくなりました。
後藤さん、お忙しい中お時間をいただきありがとうございました。