お米や食材そのものを楽しめる、鈴鹿の「農家カフェippongi」
目次
イベントも開催、魅惑の「創作料理と日本酒を楽しむ会」
普段はお酒を取り扱っていないippongiですが、夜にイベントを開催することがあります。今回は、第6回目となる日本酒のイベントが行われるとのことで、私も参加させてもらいました。
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それぞれの席には、取り皿と並んだおちょこ。
このイベントは、日本酒を飲み比べつつ、創作料理を味わうという内容になっています。人の胃袋を魅了し続ける杉本さんが、日本酒の製造地域や歴史にまつわるお酒に合う創作料理をしつらえてくれます。初めての方もリピーターの方も、日本酒と料理を楽しみ、お酒を交わすことで和やかな空間に。
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壮観な日本酒のラインナップ。
日本酒は6種類を飲み比べ、それぞれの蔵や現地の情報を教えてもらう機会も準備されています。
このイベントは地元の日本酒博士とコラボして開催されており、日本酒ひとつひとつの産地や酒蔵のこだわっているポイントなどを丁寧に説明してもらえるのも魅力の一つです。
ラインアップは、食前酒にふさわしい甘くて香り高いものから、食中酒として料理を引き立てるスッキリしたものまで。日本酒好きの参加者さんも大満足の内容になっています。
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高知の郷土料理を三重風にアレンジした「こうしめし」でスタート。
普通、お酒を飲むときはお米は締めに食べることが多いですが、ここは農家カフェです。お米は最初からお茶碗に盛り付けておき、お酒と一緒に楽しみます。しかもこのご飯は、イベントで取り扱っている日本酒の産地である高知の郷土料理をアレンジしたものだといいます。
イベント内容を考えるときは、日本酒のラインアップが決まってから杉本さんがメニューを考案するそうで、「参加者に楽しんでもらいたい」という気持ちが料理や空間からひしひしと伝わってきます。
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おかずはビュッフェスタイル。ここでも会話が生まれます。
創作料理もたくさん準備され、昔の大家族のような大皿盛り付けスタイルです。取り分けることで、知らない人ともコミュニケーションをしてほしいという杉本さんの思いから、このイベントではビュッフェスタイルを採用しているのだそう。
実際にたくさんの参加者さん同士が、お酒や料理を話題に仲良くなっている様子を見て、実家のようなあたたかさを感じました。
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締めはご飯ではなくデザート。
デザートには、季節のかき氷を。シロップはなんと甘酒!食べたことのないおいしさに参加した方々は驚きを隠せませんでした。添えられたフルーツコンポートと合わさって、大人の味が広がります。
料理の創作力や思いやりがピカイチな杉本さんご兄妹。こうやってippongiファンが生まれていくのだと感じる至福の時間でした。
ところで、ippongiさんの食器が可愛らしくてとても素敵なのですが、器もこだわりのポイントなのでしょうか?
ちょっと不完全で、経年劣化を味わう楽しみ
杉本さん:「カフェで使っている食器は、自分のお気に入りをそろえています。お店をはじめるときに知り合いの人からいただいたものや、骨董市で買い付けてきたものが多いです。
古いものばかりなので、不揃いだったりB級品だったりと、人によってはゴミだと感じるものもあるかもしれません。でも、そんなものこそ愛おしい。少し形が歪んでいたり、器をつくる工程で人が失敗した軌跡に尊さを感じます。」
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レジ台になっているタンスの引き出しを開けると、そこには器が。
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お皿やカップを丁寧にしまう杉本さん。
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お引き出しの中にしまわれていた器たち。
お皿を見せてもらうために引き出しを開けると、太古の中国を思わせるようなお皿やカップなど、さまざまな器が顔を覗かせます。ひとつひとつがとても個性豊かです。料理をつくるときに、どのお皿にどのように盛り付けるかを考えるのも楽しみのひとつなんだとか。
杉本さんの器に対する愛情のカタチを垣間見るのに、ガラス器のお話をうかがいました。
杉本さん:「ちょっと、くだらない話をしますね。笑このガラスの器を見てほしいんです。気泡が入っているんです。ほら。
工場で生産されたにも関わらず気泡が入ってしまったという、一見すると「失敗品」。一昔前に生産されたからこそだと思いますが、その不完全さが人の手で作られた証のような気がして、特別な感じがするんです。このガラスの器ひとつを見るだけで、そんなことを想像してしまう。そういう想像をしていると、どれも大切に思えて、料理に使ってあげたくなるんです。」
そう話す杉本さんからは、みなぎる愛情が溢れています。筆者も器が好きなので強く共感するお話です。
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一見すると普通のガラスの器ですが……
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よく底を眺めてみると……
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小さな気泡が!こういう不完全な器に愛しさが芽生えるのだとか。
なんとも、ほっこりするお話の数々。
杉本さんのモノや資源を大切にする繊細な心持ちの中で、料理の″おいしさ″は引き上げられているのだと感じます。杉本さんの人柄が″おいしい″をつくり出し、人に感動を与えているのですね。
近鉄「箕田」駅から徒歩7分です。ぜひ、お米や自然を堪能しに行ってみてはいかがでしょうか。
【 農家カフェippongi 】
住所:三重県鈴鹿市中箕田1-2-6
営業時間:8:00~17:00
定休日:水曜日、木曜日
駐車場:有
http://www.cafe-ippongi.com/
https://www.instagram.com/cafe.ippongi/
田植え後のご褒美だった「むしもち」
父から農業を継ぎながらも新たな挑戦を続ける杉本さんに、祖父から和菓子づくりを学ぶ私は、強く刺激を受けました。今回はせっかくなので、農業にまつわるお菓子のお話をしたいと思います。
▼ 和洋菓子キクノヤの記事
https://life-designs.jp/webmagazine/kikunoya/
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おもちを葉っぱで包む、シンプルな伝統菓子「むしもち」。
鈴鹿市は田んぼがたくさん広がっており、昔から農業が盛んな地域です。その中で生まれた文化がいくつも根付いており、その一つがお菓子にあります。
今回ご紹介するのは、小麦粉の生地に粒あんが入ったシンプルな和菓子の「むしもち」です。むしもちは季節で名前と姿を変える特徴があります。春先は、サンキライの葉で包んだ「いばらもち」となり、夏を前にすると、ミョウガの葉で包んだ「みょうがもち」になります。
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サンキライという植物の葉で挟む伝統菓子「いばらもち」。
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ミョウガを巻きつけて蒸すので、香りのいい「みょうがもち」。
おもちに使うサンキライやミョウガの葉などは、近くの畑で摘んできます。気候の移り変わりと和菓子はとても深く関係しており、「いばらもち」と「むしもち」の販売期間は自然に委ねられているのです。つまり、葉が採れる間だけの期間限定。
むしもちは別名「野上がり餅」とも呼ばれ、昔、田植えを終えた百姓の人がご褒美として食べていたとされる伝統菓子なのです。
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むしもちは春から夏にかけての人気商品です。
小豆の成分で元気になれる
そんなむしもちには、粒あんがたっぷり詰め込まれています。
あんこの原料である「小豆」はアミノ酸をバランスよく含んでおり、タンパク質やビタミンが取れるので、近年でも健康食品としても注目の素材です。
昔の百姓の人たちは、そんな健康面のメリットを知ってか知らずしてか、「野上がり餅」として小豆を食べて体を労っていたのかもしれません。
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炊いている途中の粒あん。
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もちの中に入る、丸めた粒あん。
あんこは、主に小豆と砂糖だけでつくられます。素材を活かすことこそ、″おいしい″につながるという杉本さんの考えと同じく、あん炊きでも素材のままの味を引き出すことに専念します。
「素材そのものを″おいしく″食べることが健康につながる」という考え方にはとても納得感があり、この取材での大きな気付きとなりました。これからは″おいしい″だけではなく、健康も意識してお菓子をつくっていきたいです。
【 和洋菓子キクノヤ 】
住所:三重県鈴鹿市若松北1丁目37-10
電話番号:059-385-5001
営業時間:9:00~18:00
定休日:火曜日・ 第4月曜日
駐車場:有
http://kikunoya1934.jp/
https://www.instagram.com/kikunoya1934/