300年の歴史。三重県菰野町の萬古焼を食卓に。「かもしか道具店」

2019.1.18
かもしか道具店

三重県菰野町、萬古焼の窯元・山口陶器が2014年に立ち上げたブランド『かもしか道具店』。全国のライフスタイルショップや、中川政七商店でも取り扱われている、注目の萬古焼ブランドです。

 

「かもしか道具店」のものづくりの背景には、「産地を残したい」「菰野町を盛り上げたい」という代表・山口さんの熱い想いがありました。今回は、ブランド誕生のきっかけから、おすすめの商品まで、じっくりとご紹介していきます。

 

菰野町

 

菰野町

 

名古屋から車で1時間ほど。やってきました三重県菰野町。

 

緑の田んぼの中に、リノベーションされた倉庫が姿をあらわします。目の前には「鈴鹿セブンマウンテン」が広がり、その中でも一番大きな山・御在所岳がずっしりとかまえています。

 

かもしか道具店

 

かもしか道具店

 

かもしか道具店

 

かもしか道具店「かもしか道具店」の商品だけでなく、菰野町と四日市市にある4つの萬古焼の窯元からなる「4th market」の商品や、セレクトの商品も並びます。

 

ワークショップエリア
ワークショップエリアでは、本格的な焼き物体験ができます。

 

 

300年の歴史「萬古焼」とは

 

萬古焼

 

はじめに少しだけ萬古焼についてご紹介していきます。

 

萬古焼は三重県の代表的な地場産業で、1979年に国の伝統工芸品に指定されました。四日市市・菰野町に集積する窯元のつくる食器や急須は、国内だけでなく海外でも親しまれ、土鍋の国内シェアは、80%以上を占めています。萬古焼土鍋の特徴は「陶土」。耐熱性に優れ、高度の耐久性を発揮します。

 

急須も、土鍋と並び萬古焼を代表する商品のひとつ。鉄分を多く含んだ土を使い、還元という方法で長時間焼きしめられることにより、お茶の渋みを吸収して味をまろやかにしてくれる効果があるのです。

 

 

「萬古焼」の産地を守っていくために

 

山口陶器の山口典宏社長
山口陶器の山口典宏社長

 

山口陶器は、1973年に創業。高度経済成長期に萬古焼は飛ぶように売れ、最盛期には270社ほどの窯元があったのだそう。しかし、その後安価な輸入食器に押され、産地は衰退していきます。山口さんがサラリーマンを辞め、山口陶器へ入社したのは今から15年前の2003年のことでした。

 

山口さん:「28歳のときに父親に「継ぎたい」と伝えると、「焼き物は衰退していく産業だから継ぐな。」と反対されてしまったんです。だけど、この商売で食べさせてもらって生かしてもらった中で、誇りを持って焼き物をやりたい。誰かに継ぎたいと言われたときに、NOとは言いたくない。「自分がこの産地を良くしてやる!」そんな反骨心で家業を継ぐことを決心しました。

 

そして山口陶器に入社し、萬古焼の産地の現状を目の当たりにしました。当時はOEM(他社ブランドの製品を製造すること)や下請けの仕事がほとんど。需要があるときはいいけど、注文がないときはどうしようもない。発注元の景気に左右される、すごく不安定な状態でしたね。自分たちで直接販売しているわけではないので、消費者がほしいものがつくれているのかも正直わかりませんでした……。

 

「これじゃあかん」と、少しずつ下請けの仕事や問屋との取引を縮小し、自分たちでものづくりができる体制に切り替えていきました。商品の製造から販売まで全部を担うことで、自分たちが主導のものづくりができます。萬古焼の産地を守っていくためには、この方法しかありませんでした。」

 

 

地域ブランド「かもしか道具店」

 

かもしか道具店


「親父がやっている仕事があるうちに、何かやらなくては!」と山口さんは新規開拓を進めました。2005年には窯元仲間4人でテーブルウエアブランド「4th market」を立ち上げるなど、新分野にも挑戦していきます。その後2010年に、父親から経営を引き継いだ山口さんは、自社ブランド「かもしか道具店」を立ち上げます。店名の由来を教えていただきました。


山口さん:「菰野町から見えるセブンマウンテンには、天然記念物のニホンカモシカが生息しているんです。かつては世界唯一のカモシカ専門動物園(日本カモシカセンター)もあったくらい。菰野町の町獣もカモシカ。三重県の県獲物もカモシカ。地域ブランドをつくりたいという想いから、「かもしか道具店」と名付けました。」

 

山口陶器の山口典宏社長


山口さん:「僕の一番のミッションは、菰野町、四日市の萬古焼産地を守ることです。なので、かもしか道具店は、自分のお店ではなく地域ブランドとして捉えています。

 

例えば、山口陶器以外の窯元も巻き込んでものづくりをしています。ひとつの窯元ですべての工程を完結させるのではなく、得意なところへ外注していく。そうすることで、その窯元にも仕事が生まれる。産地全体として発展できます。

 

その中で一番気をつけているのは、下請けとしてではなく協力窯元として、一緒に仕事をすることです。ブランドコンセプトをしっかりと伝え、図面の段階から「この商品はあなたのところでお願いします」と依頼しています。

 

そして見積もりで提示された価格で商品を買います。ここで、1,000円と言われたものを500円にしてくれと言ったら、本末転倒ですよね。僕も窯元なので、どのくらいの費用や手間がかかるかは知っていますからね。1,000円のものを10,000円で売るのも僕の仕事。100円でしか売れないのも僕の仕事。産地に仕事を持ってくるのが、僕の仕事ですね。」


自社でつくれるものも、協力窯元さんに依頼して商品づくりをしている「かもしか道具店」。山口さんの「産地が元気にならんといけんから。」という言葉には、自社ブランドだけでなく、萬古焼の産地全体を捉えている大きな視点を感じました。

 

 

食卓を通じ幸せを届ける

 

ごはんのお鍋

 

ごはんのおとも

 

かもしか道具店


かもしか道具店のブランドコンセプトは「食卓を通じ幸せを届ける」。その言葉にはこんな想いが込められていました。


山口さん:「近年の日本では、家族の団欒や、食事中の会話が年々減少していると言われています。そういうところに僕がガチャっと入っていき「会話をしなさい」と言うことはできません。しかし、僕は器屋として、会話が生まれるきっかけになるような器をご提案できればと思っています。」

 

こうした想いでつくられたかもしか道具店の商品は、シンプルな中にも、毎日の食卓が楽しくなる工夫が随所に盛り込まれています。特に特徴的な7つ商品をご紹介していきます。

 

 

ごはんがおいしく炊ける鍋「ごはんの鍋」

 

ごはんがおいしく炊ける鍋「ごはんの鍋」ごはんの鍋 2号 ¥4,800(税別)

 

かもしか道具店の代表作とも言える「ごはんの鍋」。

 

蓋に穴がないので蒸気が漏れずに循環。そうすることで、ふっくらもっちりのおいしいごはんを炊くことができます。調温効果があるので、のこりは鍋ごと冷蔵庫へ。そのままレンジで温めれば、足りない水分は鍋から吸収し、あまった水分は鍋が吸い取ってくれるので、まるで炊きたての味に。

 

 

溝がなくてもしっかりすれる「すりバチ」

 

すりバチ
すりバチ ¥3,400(税別) /  スパイスすりバチ ¥1,800(税別)

 

釉薬をする乳鉢からヒントを得たという、溝のないすりバチ。

 

溝がないのにしっかり素材がすれ、溝がないので洗うときとても簡単。そして溝がないので、すりたての素材とお野菜などを器のなかで直接和えてそのまま器として食卓へ。お料理の幅をさらに増やせる新しいすりバチです。

 

 

萬古焼の特性を生かした「ほうろく急須」

 

ほうろく急須
ほうろく急須 ¥7,200(税別)


自宅でお茶を焙じるための、直火で使える耐熱急須。萬古焼の耐熱性と急須に適している陶土の2つの特徴を生かした商品です。焙烙(ほうろく)とともに、かぐわしき香りをお楽しみください。

 

 

食材の風味を損ねない「しょうがのおろし器」

 

しょうがのおろし器
しょうがのおろし器 ¥1,200(税別)

 

しょうがの繊維が口の中に入らないので 薬味として、相手の食材の触感を損なうことなく、風味だけを活かします。深さがあるので、しょうゆなどをそのまま入れてタレの器としても。

 

 

煮る・焼く・蒸す。ひとつで三得。「三とく鍋」

 

三とく鍋
三とく鍋 ¥8,000(税別)

 

三とく鍋は3つのパーツからできている耐熱陶器です。遠赤外線効果で中までじっくり火がはいります。 鍋と蓋を重ねて土鍋として。鍋、蒸し皿、蓋を重ねて蒸し器として。蓋を返して、陶板として。ひとつの鍋で工夫次第で料理の幅が広がります。

 

 

納豆専用の鉢「なっとうバチ」

 

なっとうバチ
なっとうバチ ふつう ¥1,700(税別) / なっとうバチ こぶり ¥1,500(税別)

 

内側の溝によって、かき混ぜると空気を含み、ふんわりとした食感のおいしい納豆になります。混ぜることで滑らかになった納豆でも片口によって思い通りに流れ、こぼれることはありません。内側はビスクの状態なので、粘り気が鉢に残ることなく、きれいに洗い流すことができます。

 

筆者も愛用中ですが、このバチがひとつ加わっただけで、毎朝のごはんが至福の時間に変わりました。プレゼントとしてもよろこばれますよ。

 

 

洗い物が一つ減る「陶のフライパン」

 

陶のフライパン
陶のフライパン ふつう ¥3,000(税別) / 陶のフライパン こぶり ¥2,000(税別)


金属のフライパンで調理をして、陶器のお皿で食卓へ。そんな普通を覆すのが、陶器でできたフライパンです。そのまま火にかけ調理道具、焼けたらそのまま食卓へ。一つ二役すぐれもの。魚焼きグリルやオーブンでも使用できます。

 

 

 

菰野町を訪れる人を増やしたい

 

菰野町に関するさまざまなアイテム
店内では、菰野町に関するさまざまなアイテムが紹介されています。

 

KOMONO TOWNパーカー
山口社長も愛用中という「KOMONO TOWNパーカー(¥4,500)」

 

Banko Map「Banko Map」菰野町の萬古焼を紹介しているマップ。

 

ぬり絵プレート
「ぬり絵プレート」デザインは湯の山にちなんだ3種類。


言葉の一つひとつから、産地を盛り上げたい。菰野町を盛り上げたいという山口さんの熱い想いを感じました。最後に、そんな「菰野愛」に溢れた山口さんの今後の展望をお聞きしました。


山口さん:「産地を残すためには、産地に訪れてもらうことも、とても大切だと考えています。田舎暮らしやUターン就職など、移住を促進する動きがありますが、僕はそれだけではダメだと思っているんです。これからどんどん日本の人口は減少していきます。その中で、ただ地域の人口を増やそうとしても、人口の取り合いになってしまい、移住元の地域は
人口が減少してしまいます。

 

そうではなく「関係人口」を増やすことが、これからの日本を豊かにしてくれると思うんです。住む拠点はそのままに、好きだなと思う他の地域に足を運ぶ。訪れた先で、その土地の文化や産業に触れ、お金を使う。そうすることで、全国のさまざまな地域が豊かになっていきます。産地を残すためにも、菰野町を全国のみなさんに訪れたいと思ってもらえる場所にしていきたいです。」

 

こもガク

 


菰野町の農家や旅館女将、役場職員などの有志で立ち上げた「こもガク」プロジェクト。2018年に開催された「こもガク×大日本市菰野博覧会」は、3日間で3万7千人が訪れました。

 

山口さんありがとうございました!


産地を残したいという熱い想いからつくられる器の数々は、300年という歴史を守りつつも、現在の生活にすっとフィットするものばかりでした。たかが道具。されど道具。器をひとつ変えるだけで、毎日の生活は豊かになるものです。

 

取材を終える頃には、「かもしか道具店」だけでなく菰野町という地域にすっかり魅了されていました。「かもしか道具店をきっかけに、菰野町に遊びに来てくれる方が増えて欲しいです。」という山口さんの言葉の通り、菰野町は週末のおでかけにぴったりの地域。今年で開湯1300年を迎える「湯の山温泉」、自然の恵を生かした「カフェやグルメ」。ぜひショートトリップとして、菰野町を訪れてみてくださいね。

 

【かもしか道具店】
住所   :三重県三重郡菰野町川北2834-2 MAP
電話番号 :059-327-6555
営業時間 :平日10:00〜17:00/土日祝10:00〜18:00
定休日  :毎週木曜日
     ※ゴールデンウィーク、年末年始などの営業については、ブログ、SNSで随時お知らせ
駐車場  5台

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