2022年12月名古屋市西区浅間町にオープンし、築70年以上の古民家をリノベーションしたサウナ施設として話題の「KIWAMI SAUNA(キワミサウナ)」。
建物の内部にはセッティング抜群のサウナ室や深い水風呂、庭を活かした外気浴スペースなど、サウナ好きの心をときめかせる空間が広がっています。基本は男性専用ですが、毎月第4日曜日にはレディースデイを実施。女性サウナーも趣のある空間でととのう……いや、“極まる”ことができます。
目次
古民家を再生した
オンリーワンなサウナ施設でととのう
「KIWAMI SAUNA」は下町の雰囲気を残す、西区の住宅街にあります。
「古民家をリノベーションしたサウナ」と聞いて訪れたものの、町並みに溶け込んでいてうっかり通り過ぎてしまいそう。そもそも一見しただけでは、サウナ施設と気づけないはず。
バーカウンターも兼ねたフロントで、まずは受付。代金は後払いとなります。
建物の造りは至ってシンプル。脱衣場の隣にはシャワーブースがあり、その向こうにはととのいスペース※として利用されている庭が広がります。水風呂以外に浴槽はないため、シャワーブースで身を清めてからサウナ室へと向かいましょう。
※サウナ浴→水風呂のあとに休憩する場所
セルフロウリュが可能なサウナ室はほどよい暗さになっていて、心が落ち着きます。テレビは設置されておらず、サウナ浴に集中できるのもポイント。
それにしてもサウナ特有の息苦しさが皆無で、“出たくなくなる”ほど気持ちいい。この秘密に関しては後ほど詳しく。
サウナ室の目の前には水風呂が。洗練された雰囲気のサウナ室にいる間しばし忘れかけていましたが、むき出しになった大きな梁を見ると自分が古民家のなかにいたことを思い出します。
温度は15℃前後に設定。最深部は2mあり、頭までどっぷり浸かることができます(かけ湯などで汗をよく流してから入りましょう)。よく見るとタイルの色が箇所によって微妙に異なり、グラデーションを形成しています。
そこに自然光が差し込むとより幻想的。吸い込まれてしまいそうな美しさです。
そして、真骨頂はこの外気浴スペース。住宅街にある古民家のなかに、こんな魅惑の空間が隠されていたとは!外観からは想像できません。
フロントでドリンクをオーダーすると、専用のカップに入れてくれます。“ととのいチェア”にはドリンクホルダーを設置。天候に恵まれた日は、バカンス気分でじっくり外気浴を楽しむことができます。
関西地方には浴場内でドリンクを楽しめる施設が多いのですが、東海地方では珍しいかも。
仕掛け人・中島惇生さんに訊く
息苦しさを感じさせないサウナ室、深く清潔感のある水風呂、広々とした外気浴スペース―
“理想のサウナ”を築き上げたのは、「サウ兄」こと中島惇生(なかしまあつき)さん。
大学卒業後に大手銀行に就職したものの多忙な日々を過ごし、精神的に不安定になってしまった時期があったのだとか。
そんな中島さんを救ったのが「サウナ」。一念発起した中島さんはクラウドファンディングを募り、サウナ施設の運営を目指すこととなります。熱意が伝わったのか、支援者は驚きのスピードで増えていったそう。
結果として、サウナ施設建設に関するクラウドファンディングとしては異例となる1,000万円以上を集め、大きな話題となりました。こうして2022年12月にオープンしたのが、「KIWAMI SAUNA」なのです。
中島さんに改めてお話をうかがいました。
安田:「サウナ室は心地よくついつい長居してしまったのですが、なにか秘訣があるのでしょうか?」
中島さん:「サウナ室の快適さって、『酸素濃度』の高さに比例すると考えています。サウナって『息苦しい』『我慢する場所』っていうイメージもあると思いますが、結局のところ『酸素濃度』が足りていないわけです。新しくサウナを造るにあたり、『フレッシュエアーで室内を満たす』ことについてかなりこだわりました」
サウナ室には、排気口と給気口が1つずつ付いているのが一般的。「KIWAMI SAUNA」のサウナ室には、排気口1つに対して、給気口が2つ付いているのだとか(ただし排気口から出ていく分しか、新しい空気は入ってこないので「給気口の数を増やせばよい」というものではないそう)。
排気口や給気口の大きさをそれぞれ調整するなど、「フレッシュエアー」を追求した末のオリジナルセッティングなのだと中島さんは話します。
中島さん:「天井の高さは2m以下と、低く設計したのもこだわりのひとつです。上段だけでなく、下段にも蒸気が降ってくるイメージです。アウフグースするときにタオルが当たっちゃうのが難点ですけど(笑)」
クラウドファンディングの話に注目が集まりがちですが、中島さんは科学的、物理的な視点からも「サウナ」を見つめていることに気づくことができました。“よいサウナ”には必ず理屈が伴う―
“みんなの大好物”がそろう
「食堂 きわみ」
建物の2階には「食堂 きわみ」があります。大きな梁がむき出しになっており、古民家の趣を感じられる空間です。
サウナ施設とはまったくの別会計となっており、食事だけの利用もOK。
6〜8人の宴会にうってつけの個室も完備。テーブル上のガラスの下には100年以上前の欄間彫刻が飾られています。こちらも古民家の雰囲気にマッチ。
名物になりそうなのが「KIWAMI 極厚アジフライ」(数量限定)。20cm以上の巨大アジをサクッと揚げた、食べごたえ抜群の一品です。鳥取または長崎産のアジを使っているのだとか。
三段加熱で旨みを閉じ込めた「KIWAMIの角煮」(880円)も好評。八角をほどよく効かせた逸品です。
「“みんなの大好物”をそろえ、それぞれ『ワンランク上』の味わいにしています」」と中島さん。
たしかに唐揚げやポテトサラダ、どて煮などラインナップ自体は奇をてらわないものですが、一品一品素材にこだわって丁寧に作られているのが印象的です。
「知り合いに10年以上人が住んでいない古民家を紹介されたときは、『サウナにするなんて無理』と思いました」と本音を漏らす中島さん。
しかし地道に改装を進めた結果、古民家ならではの雰囲気を感じつつ、サウナを楽しめる唯一無二のサウナ施設が誕生しました。中島さんは資金面やDIYの面で助けてくれた、仲間の存在も大きかったと話します。
「ととのう」の先にある「極まる」を目指す「KIWAMI SAUNA」は、船出したばかり。これからの展開にも注目が集まります。