絞り染めの伝統が脈々と続く染物の街・有松。有松駅から徒歩数分の位置にある「KONMASA(コンマサ)」は、アーティストKONMASAさんが運営するカフェ&ギャラリーです。ビル全体が作品となっていて、なんとオープンから999日後になくなってしまうとか。
今回は、カフェ&ギャラリーKONMASAの魅力や楽しみ方について、詳しくご紹介します!
※営業は2024年2月23日まで
※情報は取材時のものです。
ご利用の際には、各施設・各店舗の最新情報をご確認ください。
目次
諸行無常を体現する作品
「KONMASAビル」とは
2021年の5月31日、有松駅から徒歩数分の位置にオープンしたKONMASAビル。「伝統」✕「現代アート」をコンセプトに、有松出身の現代アーティストKONMASAさんが手掛けました。
実は、建物全体が諸行無常を体感するために作られた曼陀羅(まんだら)作品。
曼荼羅と聞くと、極彩色で描かれた幾何学模様をイメージする方も多いかもしれません。しかし、曼荼羅にもさまざまな種類があり、曼荼羅修行がアートとしても評価されているものに「砂曼荼羅」があります。チベットの僧侶らがおよそ1週間かけて砂で曼荼羅アートを描きますが、完成後にすぐに壊してしまうというアートの一種。まさに諸行無常の教えを体現している曼荼羅のように、KONMASAも999日間の修行の末、消滅するのです。
オープンから999日後となるのは、2024年2月23日。気になる方はKONMASAビルがなくなるまでに足を運んでみては。
現代アーティストKONMASAとは?
KONMASAさんは、有松出身、名古屋を拠点として活動している現代アーティスト。アメリカでフォトグラファーとして活動後、ニューヨークの美術館で観た作品に衝撃を受け、現代アートの道へ。 自身の活動理念を「修行」とし、作品制作を通し、心を「空」(くう)にすることで、自己と向き合い、色即是空の体感をしています。
穴を空け続けること、タンクトップを着続けること、もみあげを伸ばし続ける事など、長い年月をかけ生まれる「修行」作品や、自画像など、自身の存在に意識を向けた作品を多く生み出しています。
代表作:「KONMASA The Art Building」mixed media (2021-2024)
KONMASAビルをご紹介!
KONMASAビルは1階〜4階まであり、それぞれのフロアで展示する内容が異なります。今回は、それぞれのフロアを少しだけご紹介!ギャラリーの展示内容が時期によって変わり、二度と見ることのできない作品ばかり。ぜひ「瞬間の美」を感じてみてくださいね。
1階:カフェ&物販スペース
ビルの1階はカフェ&物販スペース。「禅と瞑想」をテーマとしたカフェでは、こだわりのお茶やコーヒー、おいしいお茶漬けなどが楽しめます。
また、予約制の個室「月の間」では、暗闇でKONMASAさんの作品を見ながら3杯の特上煎茶を飲みながら瞑想体験も。暗闇で心を落ち着けてお茶を飲む体験は、なかなかできない非日常的なひとときです。もちろん、瞑想せずにお話をするのもOK。
個室を利用した方は、KONMASAビルの床に名前が残せるため、曼荼羅作品の一部となります。
2階〜4階のギャラリーを見学する場合、別途500円の入場料が必要です。
2階:アートギャラリー(企画展示)
2階は企画展示フロア。時期によって企画内容が変わりますが、10月中旬までは国際芸術祭「あいち2022」との連携企画で、有松にて生まれ育った絞り職人・藍染作家の早川嘉英氏の作品が展示されています。
早川嘉英氏は、従来の絞りの固定概念を覆す絞り技法でさまざまな作品を制作しており、有松駅周辺通路やエレベーター壁面にも作品が展示されているほか、有松駅にある高さ13mを超えるモニュメント「藍流」の制作監修もしています。
また、近年では、絶滅状態にあった有松の奇染「嵐絞り」を、長年の歳月をかけて技術を復興・復活させました。
この展示は、KONMASAさんが999日のうちに成し遂げるものとして掲げていた目標の一つだそう。他にも「母校の中学生と一緒に作品を作る」など、いくつかの達成するべき目標があり、すでにそのほとんどが達成済みとか。
10月以降の展示は、公式サイトやInstagramで告知されます。
3階:MEISO-ROOM
KONMASAさんの作品がいくつも展示されているフロア。和紙に無数の穴を開け、後ろから光を照らして風景を映し出しています。遠くで見ると立体的に見えますが、近くで見ると穴の大きさの違いや緻密さがより分かり、ずっと見入ってしまいそう。
KONMASAさんの作品の魅力は、ただ美しいだけでなく、見る角度によって絵柄が変化するところ。突然人が現れたり風景が変わったりと、何往復もしながら変化する様子が楽しめます。
また、光を当てると文字が浮かび上がるなど、意外な仕掛けが隠されているのも大きな特徴です。
暗いフロアには心地よい音や映像作品も流れており、ベンチに座れば腰を据えて作品を眺められますよ。
4階:フォトギャラリー
4階はフォトギャラリーです。「KONMASA」のコンセプトを999日間かけて解説し、それらを実施して写真として記録することが目的です。
999日間を通して8つのテーマに分けて展示を行い、「KONMASAという概念とは?」「KONMASAはどのように生まれたのか?」など、KONMASAが半生を語り、涅槃を目指します。
KONMASAさんは、現在の活動についてこのようにお話ししてくださいました。
KONMASAさん:「ここは、”自分が存在していることを記録する作品”を作り続けていく場です。まずは999日間、KONMASAビルを継続できるかということが大きな修行ですね。経営的な問題があるかもしれないし、なにか大きな災害があって継続できない可能性もある。999日間続けられなければ、KONMASAという概念は死んで、その後はKONMASAという名前で活動できなくなります。ある意味命をかけた賭け。そして1000日目にビルの入口に埋めたタンクトップを掘り出したときに作品は完成し、なくなります。諸行無常の体現ですね。それまでの奇跡を記録し作品にしていく。『何のためにこういうことをしているのか?』と聞かれたら、これが自分の生存理由だから、としか言えません(笑)。」
KONMASAさんは、一度展示した映像作品は、他の場所で展示はしないそうです。つまり、KONMASAビルで展示されている映像作品は、いま、ここでしか見られないません。
人生のなかで、一瞬しか出会うチャンスのない作品を、見てみてはいかがでしょうか。
カフェのおすすめメニュー
写真はKONMASA✕Lab Signalのコラボメニュー、O CHER「 」(くう)。白いコーヒー豆飲料オーカーにKONMASA仕様のハーブがブレンドされています。レモングラスの風味が感じられてとても爽やかな味わいながら、コーヒーの栄養素も取れるとのこと。シロクマと一体になった陶器がかわいらしく、色も涼しげです。
1階のカフェでは、ほかにもコーヒーや日本茶、ハーブティーなど本格的なドリンクが豊富に揃えられているほか、お茶漬けやスイーツなども楽しめます。
江戸時代の面影残す有松の街並みもすぐ近く
KONMASAビルは駅から徒歩数分の場所にあり、有松の古い町並みからもすぐ近くです。有松の観光と併せて、KONMASAで瞑想をしたり現代アートにふれたり、非日常で特別なひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。