リノベーションはスタイルではなくて、生き方、考え方。STORE IN FACTORY代表・原さんに聞いたリノベーションの本質とは
目次
パンク精神!D.I.Y=do it your self
私もこれまで「DIY」という言葉を当たり前のように使っていましたが、原さんにお伺いするまで、根本的な意味を知りませんでした。
原さん:「DIYって、do it yourself じゃないですか。自分たちでつくる。それはマインドの話で、60年代にパンクロックが生まれたときの精神なんだけど、要は相談を受けたときに、「おまえ、それ自分でやれよ」これがDIYで、ちょっと突き放すような感覚。自分のことは自分でやれよっていうね。それがファッション化して、日本語英語になってDIYになったんです。
これって究極ですよね。みんなが自分のことを自分でやるようになってきたから。そこをDIYという言葉だけが動き出しちゃうと、大切なものが失われていく。僕はそれを本当の意味はこっちにあるんだよって。全員にわかって欲しいわけじゃないんですけど。リノベーションだって僕にとってはかけがえのない言葉だけど、世の中ではリノベってなっちゃってて、僕はその言葉は関係ないと思っていて、本来含まれている意味を提案していける店でありたいですね。」
東日本大震災での気づき
原さん:「東日本大震災のとき、カナダにいたので震災が起こったこと知りませんでした。震災が起こったことを聞いてから、日本に戻ってすぐに、被災地に行きました。僕らは南相馬市と石巻に行ったんですが、ゴールデンウィークに行たので、結構物資は集まっていたんです。どうせならメディアに取り上げられていなくて、困ってそうなところに行こうって。そんなときに、NHKの記者の人に仮設住宅じゃなくて、体育館で避難してる人たちは困ってるらしいよ。という情報を聞き小学校に行きました。」
このときに見た光景や現地の人たちとの交流が、その後のストアインファクトリーの在り方につながっているそうです。
原さん:「避難してる人たちは、それぞれのスペースをダンボールで仕切っていたんですが、驚いたのは子どものいる家庭ではダンボールに全部落書きしてあったんです。「ここぼくんち」って。こんな究極な状態でも自分が自分であるとか、自分のものは自分であるみたいな。むしろこういうときだからこそ、必要になってくるのかな?って思ったし、僕がずっと思ってきた世の中ってこれだなって思いました。
要は、国はこんだけ借金があるのに、何も不自由じゃないことの方がおかしいじゃないですか。仮設住宅みたいな状況の方が日本の本当の状態を可視化してるものだとしたら、これが自分にとって現実だなって思ったんです。だから、ダンボールに絵を書くことで、差別化してるのがうれしくて、他人は他人であるみたいな境界線をつくってくことが。住宅ってそこから来てるのかな?とも思ったんですよ。」
空間づくりのコツは”制約を楽しむこと”
原さん:「空間づくりのコツは1つだけあります。”制約を楽しむこと”。天井は低いけど、部屋が広いとか。ルーフバルコニーや屋上の部屋みたいな場所も、見る角度によってはかっこいいし、見る角度によっては大変。4階建ての階段は結構大変だよね。でも、そこまで上がればこんだけのものが手に入るよって。
制約を楽しむってことは、僕が福島でみたそれも一緒。制約の中で、どんな状況でも楽しめる力。僕にとっては自分のマインドであり、それが1番重要。空間演出を通して、そこを出していきたいんです。例えば、親の家をもらえるんだけど、なんか親の力を借りるってイヤだから3LDKのマンションを買いました。って、なんかださいなって思っていて、親がくれるならラッキーじゃないですか。親がくれるものは古い形をしてるんだけど、制約がある代わりに35年もローンを組まなくていいなんて、むちゃくちゃラッキー。でもそれを受け入れられない人は多くて、そういうのを「もらいましょうよ」って言っていける人間でありたい。」
コンセプトは「身の丈ハウス」
2016年、原さん自身もご自宅をリノベーションされたそうです。そのときに感じた想いもお伺いしました。
原さん:「僕みたいな考え方ってマイノリティだってわかっているんですよ。でも、僕はそういう身の丈だから、僕が家をつくったときのコンセプトも「身の丈ハウス」だったんです。借金はせずに、キャッシュでできることだけやっていこうって、予算も決めて建築屋さんや妻にも身の丈にあったことをやってこうねって伝えました。
なのに、床を決めるときだけ、すごい欲がでてきたんです。自分の家をやる前は、なんでお客さんたちって、簡単に自分のルールを破ってでも、もう100万って予算をアップするんだろう。思考が停止してるなって、思ってたんです。ところが、自分がその立場になると、欲がでてピンタレストとかで探して、めちゃめちゃ変わったヘリンボーンにしたいなって(笑)。」
リノベーション前の身の丈ハウス
原さん:「そしたら、建築屋さんと大げんかになりました(笑)その人は僕のことをすごいわかってる人で、「原さんが身の丈ハウスって言ったんじゃないですか、なのに、ここでお金かけたら全部が台無し」って言われて。
そこで僕は、「僕が施主だし」って態度をとっちゃったんです。そしたら建築屋さんが原さんがそれをやるなら降りるって言いだして……。僕が施主ですからって、絶対的なヒエラルキーじゃないですか。僕が実現したい建築業界ではやっちゃいけないことだって気づいたんです。」
涙の餃子パーティー
原さん:「関係を修復したくて、小さい家で餃子パーティーをやったんです。建築屋さんと手伝ってくれる塗装屋の友達も呼んで。今住んでいる新しい家よりも小さい家で、インテリアとかもかっこよくなくて……。でもそれがめっちゃ楽しかったんですよ。」
餃子パーティーの様子
原さん:「そしたら、建築屋さんが涙を浮かべて、「原さん次の家に引っ越さなくていいよ」って言い出して。こんなに楽しい家族がいて、狭いとこだけど、餃子をみんなで食べることができて、これ以上何がいるんですか」って。
ポロポロ涙を浮かべて、僕もポロポロ、妻も涙。僕はなんで、こんなことでけんかしたんだろうって、奥さんともけんかして、今、すべてあるのに。一番大切なこれだけは絶対持ってこうと思ったんです。」
こちらが完成した身の丈ハウスの床
原さん:「この感じを、どんな家にもね。それで建築屋さんのことをより好きになったし、僕はそういう風でありたいなって。ずっと同じとこにいる貧乏自慢じゃなくて、伸びてくのはいいけど、一番大切なものを置き去りにしていくんじゃなくて、いつも持っていけると僕らの仕事もやっと完了かな?って。そういう風には思いましたね。
なので引き渡しの日には、みんなで大泣きしましたね。それでも床はめっちゃ変な風に貼ったんです(笑)「お金をかけるのは許さん」って言われたので、友達に来てもらってみんなで手作業でね。それこそがDIYですよね。お金を余分にかけたくなければ。床だから綺麗じゃなきゃいけないよねって言っても多少はいいじゃないですか。床が浮いてきたら、打てばいい。DIYはユアセルフなんだっていうマインドを持って、まずやってみることが大事ですね。」
STORE IN FACTORYの店内に入った瞬間、「あ、ここが好きだ」と感じるロマンチックさが広がっています。ここに来たら何か見つかるかもしれない!そんなワクワクさがめいっぱい詰まっている場所です。
代表の原さん自身も少年のような、とても魅力溢れる方でした。まずは、お店に訪れてみてください。古いものに惹かれる、アンティークやヴィンテージが好き、JUNKなものが好きな方たちにとっては本当に天国ですよ。