何度も訪れたい。五感で癒される「秋野不矩美術館」
目次
「藤森建築」を味わう
作品を味わった後は、「藤森建築」を愉しみましょう。
21年間多くの来館者を迎え、お寺のように光り輝く杉の床。
枝をそのまま活かした照明、藁が多めに混ぜられた風合いのある漆喰壁。
ホールの横にあるテラスで、美しい緑を眺めてホッと一息、深呼吸。行きしなに上った坂も見渡せます。
21年の歳月を経て馴染んだ素材たち。
高く吹き抜けた階段を登り、二階に上がります。天井は、杉の木格子。
木目をつけたコンクリートと、藁入りモルタルと、手摺廻りの金属と丸みを帯びたフォルムが相まって、絶妙なバランス。
二階にある企画展示室は、市民の創作発表の場として貸出されています。
杉の格子から落ちる光、スポットライトが照らす床。
手づくりガラスの向こうに目をやると、外になにやらコロンとした物体が。藤森さんは出来上がる途中に「イノシシみたいだ」とおっしゃったそうですが、あなたには、何に見えますか?
こちらは、開館20周年を記念してつくられた、お茶室「望矩楼(ぼうくろう)」です。設計はもちろん藤森照信さん。
三本の脚で建っており、その脚は天竜桧の原木そのまま。一か所、枝節がそのまま残されているところが、藤森さんらしい遊び心。
内部は非公開ですが、その上からは美術館と周囲の山々、二俣の街が見渡せる絶景なんだとか。外部に張られた銅板は、地元の小中高生と有志も手伝いながら加工・施工されており、地域と共に作り上げられた作品です。
この美術館は、秋野不矩さんの絵を存分に味わえる空間に仕上がっているだけでなく、自然と触れ合うこと、季節を愛でること、肌触り・匂い・音といった感覚をフル活用して“心地よい”と感じさせてくれる癒し空間です。
作品数は決して多くはなく、カフェの併設もない、こじんまりとした美術館ですが、21年経った今も、平日でも途切れることなく来館者があります。県内外からのリピーターも多いそうで、その魅力を表しています。
休日に、ぜひゆっくりと訪れてみてください。のんびり過ごすだけでも、何かいいアイディアが生まれたり、明日への活力に繋がるような気がします。