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名古屋・覚王山にある「シェ・シバタ名古屋」が約11カ月の準備期間を経て、2021年2月23日にリニューアルオープンしました。愛知・岐阜に4店舗、海外にも9店舗展開する東海エリアを代表するパティスリーです。
今回はオーナーシェフの柴田武さんに、パティシエの道に進むきっかけから、新しい店舗に込めた想いまで、たっぷりとお話を伺いました。
現代の和をテーマにしたパティスリーへ
名古屋市営地下鉄東山線「覚王山駅」1番出口から徒歩2分ほど。日泰寺の参道沿いにあります。
入口に吊るされた行燈と格子。一見するとスイーツの店とはわからない佇まいです。
店内は、モダンで洗練された空間に和のテイストが散りばめられ、趣を感じます。ゴールドをアクセントに重厚感のある雰囲気に。
名古屋店のオープンは2006年。以前は白を基調とした内装でしたが、16年目を迎え「モダンジャパニーズ」をテーマに新しく生まれ変わりました。
店内中央には、焼き菓子やクッキー缶を中心に、さまざまなスイーツが店内を彩ります。
クグロフ・バターケイクなど伝統的な焼き菓子から、芋けんぴとショコラを合わせた新感覚なお菓子まで、種類豊富に揃えています。
ギフトにぴったりな焼き菓子のアソートも。
素敵なパッケージは開ける瞬間の高揚感をもたらせてくれます。贈り物に喜ばれること間違いありません。
そして、ショーケースには宝石のようにうつくしいケーキが!色とりどりのうつくしいケーキに、思わず目が釘づけになってしまいます。
デコレーションケーキもとても華やか!眺めているだけで、心躍る気持ちに。
ケーキだけではありません。ショーケースの上には、店内で焼き上げたパンが並び、いい香りが漂います。
フランス産AOPバターを使った「クロワッサン」や、3種のショコラを使用した「パンオトワショコラ」など。素材にもとことんこだわっています。
カフェスペースでは、販売されているスイーツを楽しむことができますよ。
店内の奥には、バーカウンター「たけバー」が併設。パティスリーの枠を超えて、柴田シェフおまかせの料理やカクテルを堪能できます。たけバーのご利用については、お店のWEBサイトをご覧ください。
▼詳しくはこちら。
https://chez-shibata.com/takebar/
野球少年からパティシエへ
1995年シェ・シバタ誕生
柴田武
岐阜県多治見市出身。辻調理専門学校を卒業後、神戸のフランス料理店「ジャンムーラン」のパティスリー部門、パリの「ホテル リッツ エスコフィエ」、「シェ・ミラベル」で研鑽を積み、1995年「シェ・シバタ多治見」をオープン。2009年日本人パティシエとして初めて自社ブランドを展開し、現在国内外13店舗を展開中。フランス「CEMOI社」チョコレート大使、多治見市観光大使、西尾市抹茶大使に就任。企業のプロデュースやTV番組出演など幅広く活躍する東海エリアを代表するパティシエ。
岐阜県多治見市で開業して27年目のシェ・シバタ。オーナーの柴田シェフは東海エリアで知らない人はいないくらい有名な存在です。そんな柴田シェフがどのような想いでリニューアルオープンに至ったのか、まずはシェ・シバタ誕生の歴史を振り返っていきましょう。
-はじめに、パティシエの道に進むきっかけを教えてください。
柴田シェフ:「小学生の頃、お母さんのお手伝いで料理に興味を持ちました。チャーハンや焼きそばなど、食事を作ることが好きでしたね。年に1回、お母さんがケーキを作ってくれて、その手伝いが面白ったのがきっかけです。もともとスポーツをやっていて、野球選手で食べていけなかったら、料理の世界に進もうと思うようになりました。」
-専門学校では、料理の勉強をされたのですか?
柴田シェフ:「フランス料理を学びました。最初はフランス料理の料理人になりたくて。その中でお菓子を作るのも好きで、両方に興味はありました。専門学校を卒業して、神戸のフレンチレストランのパティスリー部門で勤務したのがはじまりです。そこで、9割はお菓子の仕事、あとはレストランの仕事もしましたよ。」
神戸での修業後、フランスへ渡り、パリのパティスリーで研鑽を積まれた柴田シェフ。
-フランスではどのような影響を受けましたか?
柴田シェフ:「素材が日本とは違うこと。それからお菓子に対する感覚の違いを感じました。日本だと贅沢品ですけど、フランスでは嗜好品として、生活の中にある必需品ですかね。日本だと最近は徐々にスイーツを食べる客層が広がってきていますけど、昔はそうではなかった。
フランスでは食後にデザートを食べるのが普通なんです。それは立派なものではなくてコンポートだったり、老いたおじいさんが一人でティラミスを食べていたり。要するに生活にお菓子が根付いていたのを肌で感じました。ワインもそうだし、コンポートも大事な役割を果たしていることがわかりました。そんな食文化を日本に持っていきたいという想いがありましたね。」
帰国後、1995年24歳のときに地元多治見でシェ・シバタをオープンしました。今のように「パティシエ」という言葉も「スイーツ」という言葉もなかった時代。「パティシエ」という言葉が市民権を得てきた2000年前半、そのころテレビ番組に出演するようになり人気店に。2006年、名古屋覚王山に2号店をオープンしました。
柴田シェフ:「フランスから帰国し開業したころは、フランスのお菓子はこういうものだと日本人にも伝えたい気持ちがありました。フランスをオマージュすることが自分の中で美学だと思い、10年近くそんな気持ちでやっていました。」
-今は違うのですか?
柴田シェフ:「今の日本人パティシエは、ヨーロッパのマネをしているが、それ自体が古い!日本のスイーツのレベルは世界トップクラスと認められているので、もっと日本人としてのプライドを持ってやるべきだと思っています。」
2009年から自社ブランドを海外へ展開。日本人パティシエとして海外のイベントやデモンストレーションで活躍されています。
-お菓子づくりで大切にされていることは何ですか?
柴田シェフ:「一言でいうとオリジナルティ!フランスのお菓子をベースにオリジナルを追求することです。」
-創業から27年、常に進化しているイメージです。
柴田シェフ:「開業のころと考え方もイメージもすべて変わりました。変わることが大切だと思っている。時代が変わるように、人の感性も情報もすべて変わるのに、自分が変わらないのは経営者として一番ダメだと思う。経営者は変わり続けないといけない、それが鉄則ですね!」
新しい店舗コンセプト
「西洋人デザイナーが鮨屋をデザインしたら」
-新しい名古屋店のコンセプトに置いたのが「西洋人デザイナーが日本のモダン鮨屋を表現したら」。どのような意味を込めているのでしょうか?
柴田シェフ:「アジアを中心にヨーロッパでイベントするとき、日本人を打ち出してアピールすることがプラスになることがわかりました。なぜかというと、日本の食文化がすごく世界的にフォーカスされた。例えば、コロナ禍前はミシュランに掲載されている鮨や天ぷらを訪日外国人がみんな予約していたり、それくらい日本の和食というものに対して、世界中が認めていることを色々な国へ行って感じました。そういうところから、本拠地の日本の店舗では今風の和をイメージしたくて、4年前から考えていました。」
-こだわったポイントを教えてください。
柴田シェフ:「全部です。ここだけというのはなく、カウンターの板や壁、細部にこだわりました。照明も京都の職人さんに作ってもらったり、入り口の行燈も日本中探しても他のパティスリーにはないと思う。」
ショーケースの上のライトは、和をイメージして特注でつくってもらったもの。
左官職人がミルフィーユの層をイメージして塗った土壁。
壁紙は西陣織の着物生地を使用しています。世界で活躍してきた柴田シェフならではのこだわりが随所に感じられます。
オーナーシェフとして大切なこと
3月28日に50歳の誕生日を迎えられ、集大成ともいえる名古屋店がカタチになりました。店舗改装による休業とコロナ禍が重なった中、自ら配達する「スイーツデリバリー」や、大須に食べ歩きスイーツ専門店を出店するなど、常に新しい発想でおいしさと笑顔も届けています。
-最後に、今後の展望を教えてください。
柴田シェフ:「僕はあと10年で引退しようと思って、終わろうと思う。」
-え!辞めてしまうのですか?
柴田シェフ:「24歳から経営者としてやっていますから。皆が週休2日だったり、レジャーを楽しんでいるときにずっと仕事をして、プライベートの時間はほぼないわけです。仕事に人生を捧げて、それをおいしいと食べたお客様がいるわけですよ。少しくらい自分の人生がほしいです(笑)。
惜しまれて終わるのもアリだし、次の世代に託すのも僕の仕事だと思います。それはうちのスタッフが守るかもしれないし、やらないかもしれない。
自分の人生を全うする。そのために今働いているスタッフが大切だし、今の大切さと未来の大切なものはまた違う。だからこの先の10年、60歳までやり切ること。延々とゴールの見えない目標は目標ではない。目標は変わることは絶対誰にでもある。明確にすることが大切なことで、それを途中で軌道修正することは、仕事の中でよくある話。だからそれは100であるかもしれない、でも今は100だと思ってやる。」
日本はものを作る技術が世界の中では長けているので、もっと自信を持って世界へ発信するべきとエールを頂きました。柴田シェフありがとうございました。
おすすめのスイーツをご紹介
生ケーキのラインナップは常時25種類ほど。季節ごとに入れ替わり、柴田シェフのインスピレーションにより変化していきます。
苺の季節限定「グルマンディーズ」
数々の苺ケーキの中でもひときわ目をひくこちら!新鮮ないちごとカスタードクリーム・生クリームをパイ生地とシュー生地でサンドした華やかなケーキ。中には6種類のベリーを使ったコンポートが隠されており、ひとつで何度もおいしい幸福感に包まれます。
グルマンディーズとはフランス語で「美食」「食いしん坊」という意味。その名の通り、贅沢で食べ応えのある一品です。こちらは6月までの季節限定です。
シェ・シバタのスペシャリテ「エクレール・オ・ブールサレ」
フランスAOCバターにゲランド塩をのせたキャラメルのエクレア。肉厚なシュー生地の中にほろ苦いキャラメルクリームがたっぷり詰まっています。バターをそのまま食べる抵抗感なく、口の中でコクを残しキャラメルとマッチ。「食べてみたときの驚きも違うと思う」と自信をみせます。
リニューアル記念の新作「ルティム・ショコラ」
柴田シェフがアンバサダーを務めるフランス「cemoi社」のショコラを使用し、世界最高峰といわれるタヒチバニラのクレームブリュレ、ヘーゼルナッツの自家製プラリネなどを合わせたチョコレートケーキ。7層に仕上げ、食感と口溶けが一体になるよう綿密に計算されています。濃厚で香り高く、後を引くおいしさ。チョコレート好きにはたまりません。
柚のフォルムがかわいい「アギューム・ユズ」
鮮やかな柚子に見立てたかわいらしいケーキ。マジパン生地に柚子のクリーム・ミルクチョコレートなどの6層仕立て。柚子感・香りがしっかり口に広がり、酸味と甘味のハーモニーを楽しめます。
柴田シェフから生み出されるケーキは、何層にも異なるテイストを組み合わせ、口に入れた瞬間ハーモニーと余韻が、幸せな気持ちさせてくれます。今後もどのようなスイーツが登場するか楽しみです。