進化し続ける名古屋の老舗銘菓。「大須ういろ」の工場見学に行ってきました。
目次
「伝統」と「革新」の商品開発
新ブランドの「初」やウイロバーをはじめとする斬新な商品アイディアで、次々と新しいファン層を呼び込まれている大須ういろさん。そのきっかけについて伺いました。
村山社長:「大須ういろが大きく変わりはじめたのは、今から6年ほど前です。それまでは正直、胸を張って誇れるういろではありませんでした。当然のように着色料や香料も使っていましたし、いつからかお土産屋になっていて、和菓子屋ではなくなっていたんです。
”100個食べたければ100個食べてもいいよ”とお母さんがお子さんに言える商品をつくりたい。そこから、職人さんたちと何度も話し合って本当にいいものを目指していきました。今では着色料や香料などは極力省いていますし、桜ういろは桜の葉・花びらから煮出したエキスを使っています。そのため多少くすんでいますが、塩気の効いたほのかな甘みがしっかりと伝わってくるように仕上げています。僕自身、昔は桜ういろが一番苦手だったのに、今では大好きになりました。長年いる職人さんたちにも大須ういろはおいしくなった!と言われるようになったのはとてもうれしかったですね。」
村山社長:「大須ういろの改革を進めていく中で、特に若い世代にも知ってもらうきっかけになったのが「ウイロバー」です。ういろは長く愛される一方、切りにくい、食べにくい、という声がありました。それを解決するため、デザインを加えて、5種類の食べきりサイズのういろをバータイプにしました。
アイスキャンディのような感覚で気軽に食べられること、手を汚さずに食べられるので若い女性からも支持を得られるきっかけになりました。今ではお土産としても人気の高い商品です。」
村山社長:「ういろモナカ」が生まれたきっかけは「ウイロバー」が想像以上に人気で、生産がおいつかなくなってしまったことです。そこで工場から「生産がしやすく、ウイロバーのような人気商品をつくってほしい」という声があがりました。
あるとき、偶然いただいた和菓子の「最中」をういろを挟んでみたらどうだろう?と試してみると、これがかなりおいしかったんですね。普段はおいしいと言わない弊社の工場長もおいしいというので、これはいける!と確信しました。生産効率の面や職人さんへの手への負担を軽減できることも確かめました。
こうして誕生したのが個包装した「ういろ」「餡」「最中種」を、お客様の手で挟んで完成させる商品が「ういろモナカ」です。自分の手で完成させることで「食べる楽しみ」を具現化しています。」
逆境からの挑戦。
今あるべき「ういろ」の姿を
村山社長:「そして今回、今までの歴史と技術を活かし、今あるべき「ういろ」の姿を突き詰めた新商品がグルテンフリーの生菓子「初‐うい」です。
一時期はコロナ禍の影響で、売り上げが8割減ったこともありました。
僕らの会社の主力メンバーは30、40代なんですね。そんな彼らを残してここで死んでたまるかという想いがありましたし、自分たちが5年ほど前から温めてきた企画を、今このタイミングで出し切ってやってみよう!追い込まれたこの状況から挑戦をすることで、新しい世代でがんばっていく。そんな気持ちで今回の「初‐うい」を開発しました。」
消費期限は1日!グルテンフリーの「初‐うい」の魅力
村山社長:「お⼟産として重宝されてきた従来のういろは保存性が重視され、素材に一定の制約が生まれていました。常々できたてのういろを召し上がっていただきたいと思っていたので素材をとことん追求し、グリテンフリーの生菓子として今までの技術や経験を集結して誕生したのが、「初‐うい」です。
⼤須ういろが⼤切にするういろの⾷感は、もっちりとしつつ歯切れのいい、ほどよい弾⼒です。その⾷感をだすために、ういろの蒸し方などの製造⽅法を追求。今まで以上にお米の風味にもこだわり、より素材を吟味しています。また、通常で使えない小ロットの旬の素材を使うことができるため使える素材の幅が大きく増えました。
消費期限も1日と、日持ちはしませんが、その分季節ごとにさまざまな味を楽しんでいただけるのも「初‐うい」の大きな魅力です。」
村山社長:「「初‐うい」では大人だけでなく、こどもに⾷べてもらえるような⾒た⽬にすること。サイズは食感をより感じていただけるように、ひと⼝サイズの⼤きさ、形状にもとことんこだわりました。本来のういろはせいろで蒸すため四⾓い形をしています。その⾒た⽬に変化を与えることで、今までのういろにはない⾒た⽬の華やかさをだしています。
商品は⼤⼈の「初‐うい」の4つのカテゴリーに、こどもの初を加えた 5つのカテゴリーで構成しています。「基の初」「こどもの初‐なでしこ」「こどもの初‐あさぎ」は、通年販売。
「折々の初」「暦の初」「創の初」は、イベントや季節に合わせた期間限定商品です。
今後も積極的にういろを食べてもらえる仕掛けを、外見からも内面からもつくっていき
ただ口にして終わりではない、食体験を増やせるよう企業努力を続けていきます。」