大正14年創業当初から受け継がれる伝統の味。味噌煮込みうどんの老舗「大久手山本屋」

大正14年創業当初から受け継がれる伝統の味。味噌煮込みうどんの老舗「大久手山本屋」

みなさん、名古屋グルメといったらなにが一番最初に頭に浮かぶでしょうか。

味噌カツや天むす、手羽先にひつまぶし……いろいろなグルメがある中でも、名古屋めしとして存在感を放っているのが「味噌煮込みうどん」。昔から名古屋を中心に多くの人々に愛され続けています。

今回ご紹介するのは、大正時代から続く名古屋の名店「大久手山本屋」。手打ちうどんにこだわった昔からの伝統の味を楽しむことができる、味噌煮込みうどんの老舗です。

大久手山本屋

名古屋市千種区大久手にお店を構える「大久手山本屋」は、名古屋市営地下鉄・吹上駅より徒歩約3分、駐車場も完備されていてアクセスも良好です。

この大久手店と名古屋・久屋大通にある桜通大津店の2店舗を運営されています。

大久手山本屋

大久手山本屋

大久手山本屋

清潔感のある広々とした店内。お子さまからご年配の方まで老若男女問わず来店されています。

のれんをくぐると昔ながらの風情ある空間が広がり、家族や友人、お一人さまでも入りやすいあたたかい雰囲気。席数も多く、テーブル席や座敷、個室席などさまざまな形でゆったりと食事を楽しむことができます。

創業は大正14年
歴史ある伝統の味を守り続ける

今回は、5代目として「大久手山本屋」を守り続けている、有限会社山本屋の専務 青木裕典さんにお話をお伺いしました。

はじめに「大久手山本屋」の歴史について教えていただきました。

山本屋の歴史は、初代 島本万吉さんとその妻 きぬさんが当時「山本にこみ」と呼ばれていたうどん屋を引き継いだことからはじまります。その後、のれんを受け継いだ町田守一・雪枝さんご夫婦によって屋号を変更。「山本屋総本家」として山本屋がより発展していきました。

町田ご夫婦の間に産まれた4人のお子さんのうち、長女にあたる昭代さんとその夫 浅井仲治さんによって「山本屋」が独立開業。昭代さんのおいしいものにこだわりたいという想いから、機械には頼らない手づくりの味を大切にしてきました。その想いを引き継いで、青木さんのお父様・お母様にあたる青木一哉・美千代さんご夫婦が4代目に。

現在は、青木裕典さんと晃佑さんのご兄弟で5代目として、伝統ある歴史を守っています。

かなり奥が深い山本屋の歴史。今回の取材ではじめて味噌煮込みうどんの歴史を知ることができました。なんだか名古屋人としての質が少し上がったような気がします!

大久手山本屋

店頭には、昔使われていた出前の道具などが展示されています。お店を訪れると、山本屋の深い歴史に触れることもできますね。迎えてくれる招き猫もかわいらしい。

大久手山本屋 5代目 青木裕典さん

大久手山本屋 5代目 青木裕典さん

– 青木さんが5代目として「大久手山本屋」を引き継ぐことになった経緯を教えて下さい。

青木さん:「大学院在学中に企業の立ち上げに携わり、3年ほどITベンチャー企業で経験を積みました。そこでITやいろいろな仕事をするのも楽しいけれど、自分が生まれてきた家をより発展させていくことの方が自分にしかできないことではないか、自分ができることと今までの先祖たちが守ってきた伝統をミックスさせるとよりおもしろいことができるのではないかと思い、5年前に引き継ぐことに決めました。」

家業である山本屋をこの先の世代へ受け継いでいくために、青木さんがこれまでに培ってきたスキルを活かしながら新しいことにも積極的に取り組まれています。

「伝統を進化させる」
時代背景にあわせた新たな取り組み

青木さんは山本屋を主軸としてさまざまな企画・開発を日々行っています。お話を聞いているだけでもワクワクするような、今の時代だからこそできる取り組みに新しい風を感じました。

– 学生さんたちと商品企画などを行っているとお伺いしました。どのようなことをされているのでしょうか。

青木さん:「不登校生を支援する団体とプロジェクトを立ち上げ、引きこもりになってしまった学生たちと一緒に商品開発を行いました。不登校になってしまう理由は『勉強がついていけない』『長期休みの宿題を出したくない』というものが比較的多いんです。それが理由で学校に行かなくなってしまった学生たちに、山本屋の仕事を通して『勉強って社会に役立つ必要なことなんだ』ということをわかってもらうためにはじめました。」

実際に学生さんたちと開発された「やまぺちーの」は、昨年の夏にデリバリーで売れるものを作ろう!と制作されたもの。山本屋の看板でもある味噌を使用したスイーツは大好評で、学生さんたちの自信へと繋がる素晴らしいプロジェクトとなったそうです。「やまぺちーの」、一体どんな味なのかとっても気になりますね!

家族で楽しめる「味噌煮込みうどん手づくりキット」

また、昨今コロナウイルスの流行によって自粛ムードが高まる中、山本屋として何かできることはないかと誕生したのが「味噌煮込みうどん手づくりキット」。

味噌煮込みうどん手づくりキット 4,482円(ステイホームキャンペーン価格)

家族みんなで楽しく味噌煮込みうどんをつくって、一家団らんなひとときを過ごして欲しい。

そんな想いが込められたこちらのキットは、お子さんへの食育としての役割も果たしてくれるそう。うどんを一から作るには、たくさんの力や工程が必要。そんなとき、お父さんやお母さんの見せ場を作ることができる。子供だけでは作れないうどんだからこそ、家族や食に対するありがたみや大切さを改めて感じてもらおう、そんな素敵なキットになっています。

多くの人に伝統の味を味わってほしい。ムスリム・ヴィーガンに対応したも!

お店にはイスラム教徒や菜食主義者向けのメニューが。「大久手山本屋」では、ムスリム・ヴィーガンに対応したメニューを取り揃えているんです。

イスラム教向け、ムスリム対応メニュー

菜食主義者向け、ヴィーガン対応メニュー

– なぜムスリムやヴィーガン向けのメニューを開発したのでしょうか。

青木さん:「今までは名古屋にくる人だけをメインに集客を考えていましたが、よく考えてみたら世界に16億人以上いるイスラム教徒の人や昨今増えているヴィーガンの人たちは、山本屋の味噌煮込みうどんを食べることができないなと思ったんです。前職のIT企業時代にイスラム教徒の人と関わることが多く、そのときの友人がみりんを使っていたり鶏肉がハラルチキンじゃないから食べれないということがあって……。なら、山本屋で対応するメニューを作ってみよう!と思いました。」

そうして開発されたムスリム・ヴィーガン向けのメニューは口コミなどで話題となり、今では、多くの人たちがそのメニューを求めて来店されているそう。

青木さん:「今はムスリム・ヴィーガンのお客様にたくさんお越しいただいてますが、あくまでも目指すのは世界中の誰もが食べられる店。世界の様々な宗教、考え方にこれからも柔軟に対応しておいしい味噌煮込みうどんを提供してまいります。」


せっかく名古屋へ訪れた人たちが、名物の味噌煮込みうどんを食べることができず終わるのはもったいないですよね。世の中にはいろいろな理由で食べるものが制限されている人がたくさんいますが、どんな人でもこの伝統の味を堪能できるのは「大久手山本屋」ならではの新たな魅力ではないでしょうか。

手づくりにこだわった手打ちうどん
愛知の醸造文化の結晶でありたい

「大久手山本屋」のこだわりは、なんといっても手打ちうどん。

職人によって手打ちされたうどんは塩を一切使用せず、うどん粉と水だけで練りこまれ独特のコシを生み出します。味噌煮込みうどんならではの食感は、一度食べるとやみつきになる人も多いのではないでしょうか。

手打ちうどん

実際に手打ちしているところを見学させてもらうことに!4代目 青木一哉さんに職人の技を披露していただきました。

これから練り込んだ生地を綿棒を使って伸ばしていきます。

手打ちうどん

手打ちうどん

綿棒を巧みに使い、みるみるうちに綺麗に伸びていく生地。とても力のいる作業を素早くこなしていく職人技、圧巻です……!

手打ちうどん

伸ばした生地を折りたたみ、麺の形に切っていきます。

生地を切るときは、息を止めているそう。みているこちらもついつい息を止めて集中してしまいますね……。この技を習得するのは、長い修行と年月が必要です。

手打ちうどん

あっという間に、綺麗な手打ち麺が完成!

均等に切られた麺は、まさに芸術作品のようです。

機械で作る麺と大きく違う点は、うどん粉と水を練り込むときに混ざる細かい空気の気泡が、機械だと無理やり伸ばすせいで少なくなってしまうのだとか。手打ちの麺だとその空気の気泡が残るので、その中に味噌が染みこみほどよい味わいが生まれるんです。

手打ちだけは次の代に変わっても守り続けてほしい、と語っていた4代目 青木一哉さん。

山本屋の手打ちうどんに懸ける熱い想いを感じました。こうして昔から守られてきた伝統的な味は次の世代へと受け継がれ、そして多くのお客さんに愛されていくんですね。

玉子入り味噌煮込みうどん 1,100円

「大久手山本屋」定番、玉子入り味噌煮込みうどんをいただきました。土鍋のふたを開けると、ふつふつと沸騰した味噌煮込みうどんが!熱々の状態でいただくことができるのは、お店ならではの魅力。

青木さんに、味噌煮込みうどんに対する想いをお聞きしました。

青木さん:「この鍋の中の約9割は愛知県産の地元でつくられたものを使用しています。半田のお醤油や知多のみりん、岡崎の八丁味噌に名古屋コーチンなど、地元の企業さんと一緒につくり続けてきた商品です。それぞれの職人さんがつくった良いものをこの信楽焼の鍋へ詰め込んで『愛知県の醸造文化の結晶をつくっていくんだ』というプライドがあります。」

熱い想いが込められた「大久手山本屋」の味噌煮込みうどんは、ここ愛知のこだわりが詰まった味を堪能することができます。

大久手山本屋

職人さんが毎日早朝から仕込む出汁に、調合された味噌が濃く深い味わい。

少しとろみがあり、食べ応え抜群なコシのある麺と絡まって口の中でおいしいさが弾けます。玉子の黄身を割って麺に絡ませながら食べると、マイルドな味に変化!より一層うまみを引き立てます。

スタンダードな味噌煮込みうどんですが、これぞまさしく思い描いた味!名古屋に生まれ育ってよかったなと思わせてくれるおいしさです。


味噌煮込みうどんが定番メニューですが、そのほかにもカレー煮込みうどんやおすまし煮込みうどんなど、バラエティ豊かなメニューが揃っています。何度でも訪れて、いろいろな味を食べてみたくなりますね!

もうすぐ創業から100年を迎える今、
この先の100年も続いていく会社にしたい

青木さんに今後の展開についてお伺いしました。

青木さん:「もうすぐ創業100年を迎えます。初代から続いてきた伝統を守ることは大事なことですが、この先また100年と受け継いでいくには革新も起こさないといけません。その革新を起こすには、時代にあわせる必要があります。大正時代から守ってきた手打ちうどんだったり愛知県産のものにこだわったり、そこはこの先もずっと守り続けていかなければいけませんが、その頃の時代とは違う外部環境があります。

例えば、今でいうと新型コロナウイルス。ステイホームで山本屋の良さを伝え楽しんでもらうために『味噌煮込みうどんづくりキット』を販売。集客が減っている今だからできることを考えなければなりません。

ほかにも、外国人の増加で英語を使っていかないと集客が見込めなかったり、SDGsをテーマに環境へ配慮していったり、競合他社とどう差別化していくかなど……。これまでにはなかった変化があるので、それに対してうまく対応していってより良い会社にしていこう!というのが今取り組んでいることですね。」

大久手山本屋

老舗ならではの良さを残しつつ、時代背景にあわせ進化を続ける「大久手山本屋」。新しいことにも躊躇なく取り組む青木さんの姿を見て、次はどんなことを仕掛けていくのか今後の活躍に期待が高まりました。

ぜひ名古屋に訪れた際は、「大久手山本屋」の名物 味噌煮込みうどんを食べに行ってみてください!ひと口食べれば、きっとあなたも虜になるでしょう。地元のこだわりと愛情がたくさん詰まった、愛知ならではのおいしさに出会えますよ。

スポット詳細

【大久手山本屋】
住 所 :〒464-0854 名古屋市千種区大久手5丁目9-2
営業時間:11:00 – 22:00 (LO 21:30)
定休日 :月曜日 (祝日の場合は営業、翌日休業)

http://a-yamamotoya.co.jp/

名古屋生まれ、名古屋育ち。大学ではメディアプロデュースを専攻しデザインや広告について学びました。グルメやアート、ファッションに敏感で、趣味はイラストを描くこと・花束を作ること・映画を見ること。喫茶店やカフェめぐりが好きで、毎日1杯以上コーヒーを飲むのが日課です。グルメを中心に隠れた東海地方の魅力を発信していきます。

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