目次
神社といえば、二本足の鳥居に朱色などの社殿が一般的ですが、愛知県日進市の「白山宮」境内には、神社とは思えないモダンでお洒落な建築の「足王社」が近年SNSなどでも話題です。
そのほか多くの神様を祀るお社や古墳もあり、見どころもいっぱい。また参拝者に優しいバリアフリー仕様にもなっています。
”すべてのものをくくり合わせる” むすびの神
菊理姫命(くくりひめのみこと)を祀る「白山宮」
愛知県日進市の「白山宮」は現在の石川県の白山のご分霊を祀る神社で、正確な創立は不明ですが、境内に6世紀頃と推定される古墳もあることから、かなり古い年代の創立とみられています。
ご祭神は日本書記で一度だけ登場する「菊理姫命(くくりひめのみこと)」を祀ります。
伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と伊弉冉尊(いざなみのみこと)が夫婦げんかをした際、仲裁したことで仲直りしたことから、”あらゆるものをくくり合わせる縁結びの神”として、古くから信仰されています。
女性からの信仰が厚い「香良洲神社」
白山宮の境内には、多くの神様を祀るお社が合祀されています。その一部をご紹介します。
まず、本殿向かって右横にひっそり建つのが「香良洲神社(からすじんじゃ)」。
ご祭神は天照大御神の妹神「稚日女尊(わかひるめのみこと)」を祀り、大正時代の尾張風土記には、当時出産や産後の肥立ちが良好なことを感謝する手紙が多く残っており、婦人のまもり神として女性から厚く信仰されています。
良縁を祈願「縁むすび社」
あらゆる人やものを結ぶ縁結びの神様ということで、やはり良縁を祈願したいところですよね。
「縁むすび社」では女性の切実な想いがあふれ出るかわいいピンクのハートの絵馬が目を引きます。連理木(れんりぼく)にしっかり繋がれた紐で運命の人に出会えますように……。
本殿参拝の前には「祓戸大神(はらえどのおおかみ)」
駐車場から本殿へまっすぐ伸びる参道の右手にある「祓戸大神(はらえどのおおかみ)」。
その名の通り、日頃自分の身についてしまった罪・穢れ(けがれ)などを強力に祓ってくれる神様です。ぜひこちらは本殿への参拝前にお参りしましょう。
推定6世紀頃の市最古の「白山古墳」
鳥居をくぐってすぐ右手に見える「白山古墳(白山第1号墳)」。気づきにくいので、うっかりそのまま通り過ぎてしまいそうです。
木々が生い茂る階段を登っていくと……
「白山古墳(白山第1号墳)」に到着しました。
昭和55年に日進市の指定文化財に認定された白山古墳からは、推定6世紀頃のものと思われる金環(きんかん)や鉄刀(てっとう)などの副葬品が出土したそう。
遺物は岩崎城歴史博物館に展示されているそうなので、気になる方はそちらにも足を運んでみては。
暑い時期に嬉しいミストと休憩所
そして暑い時期には嬉しいミストもあるので、束の間の涼をとることができます。またそのすぐそばには屋根付きの休憩所もあるので、ゆっくり境内で過ごしたい方には嬉しいですね
モダンな建築美に目を奪われる足腰の神「足王社」は
アスリートも祈願で訪れる通称「サッカー神社」
さて、白山宮では珍しい神様を祀る「足王社」、通称「サッカー神社」が話題となっています。
ご祭神はあまり聞きなれないですが、「足名稚神(あしなづちのかみ)」という足腰の神様です。モダンな建物は、一見カフェのようにも見えますよね。
正面にきてみました。不思議な形です……
右斜め手前から見た景観。とてもお社があるようには見えませんね。
近くまで行ってみると、天井にぽっかり穴があいています。
上空から見ると、なんと「わらじ」の形をしているそうです。かつての参拝者がわらじをたくさん供えていたことからだそうで、境内にもわらじの展示もあるので探してみてくださいね。
また、天井に穴が空いてる理由として、神様の力や息吹をこの境内、そして裏手の鎮守の森へと循環させ、神様の力をさらに増していく…という想いがあるようです。
風が通り抜けるので気持ちよく、また白木と緑のコントラストがなんともいえず美しいですね。
そして正面に見えるのがお社です。ここで参拝します。
参拝の際には左手に設置された「撫で布(なでふ)※奉納料500円」を納めて祈願します。
中には御朱印が印字された、さらしの布が入っています。それを持ったまま左手の入口から入ります(右回りに進む)
たくさんの木の柱が立ち並び、まるで千本鳥居のよう。強度のあるヒバの木をふんだんに使って組み立てられた柱の間からは光が差し込みます。
「洞の参道」と名付けられた回廊式の参道は国内でも非常に珍しい!実際入ってみても斬新な形に驚かされますが、優しい木々に囲まれてとても心地よいです。
そしてさきほどのお社のちょうど真裏にあたる場所に「痛みとり石」が祀られています。
もともとこのあたりは飯田街道の裏道にあたることから裏街道と呼ばれていて、美濃方面から多くの人がこの裏街道を通っていました。痛みとり石は、その街道沿いの山をくりぬいた小さな祠とともに、旅や道中の安全祈願で道祖神のひとつとして信仰されていたようです。
実際足の悪いおばあさんが毎日お参りして撫でることで治ったということもあり、今では
多くの人が撫でて信仰するように。よく見ると足の指のようにも見えますね!
そしてさきほどの「撫で布」でこの石を撫でて御蔭(おかげ)をうつし、体の悪い箇所に布で撫でてさするとよいとされています。
足王社がサッカー神社と呼ばれるようになった理由は、平成13年に山にあった祠をきちんとここでお祀りした年がちょうどサッカーワールドカップが開催された年と重なったことに由来します。
珍しい足腰の神様を祀る神社ということで、日本代表チームが祈願で参拝したことでサッカー神社として一気に知られるようになりました。
わらじのデザインをはじめ、サッカーボールやバスケットを模した絵馬がたくさん掲げられて、想いが伝わってきますね!
2020年にはグッドデザイン賞を受賞した足王社。
平成13年~29年までは現在の稲荷社が祀られている場所にありましたが、一年の月日をかけて独創的なデザインとして生まれ変わりました。神を遠くから拝むのではなく、より身近に感じられるような配慮がなされています。
「サッカー神社」にちなんだエンブレム入りのお守りや
絵馬のほか、ヨゲンノトリの疫病退散の御朱印も!
では次はお守りや御朱印のご紹介です。サッカー神社らしく、日本サッカー協会公認のエンブレムが刺繍されたお守りや絵馬が渋いですね。
野球・サッカー・バレー・バスケなど各種目の御守りと必勝祈願絵馬をセットにした、その名も「スポーツ守/初穂料1000円」。
こちらは縁結びの各種お守り。結びの神様らしくお守りも結びを意識したデザインのものが多いのが特徴ですね。
御朱印は「白山宮」「足王社」「香良洲社」の定番の3種類のほか、季節限定や毎月かわるものなど多数用意されています(写真は足王社の御朱印/初穂料500円)
こちらは茅の輪祭限定の見開きの特別御朱印。毎年7月末に行われる茅の輪祭りにちなんだ御朱印です(2021.7月28日~8月1日の期間限定頒布/初穂料1,000円)
コロナによって疫病退散で一気に知られたアマビエですが、そのアマビエと同様に疫病退散としてかつて幕末に現れたという「双頭の鳥(ヨゲンノトリ)」があるのをご存じでしょうか?
幕末の加賀国(現在の石川県)に現れ、”世の中の人が9割りがた死ぬという難が起こる”と予言し、”みずからの姿が厄除けになる” と話したとか……。
白と黒の2つの頭を持つ不思議な鳥、アマビエとともに、世の中が早く収束することを願うばかりです。
バリアフリーで参拝者にもやさしいつくり
白山宮は平成8年に本殿の改装を皮切りに、13年にはバリアフリー事業に着手。その足王社をぐるりと囲むように坂道になっているので、車イスの方などはこちらから入ることができます。
ちなみに駐車場は2箇所あり、本殿に近いほうはそのまま平らな道を進むと本殿へ、そして階段下の駐車場からは途中スロープで、さきほどの足王社のまわりの道をくぐるとこの鳥居から入ることができます。
鳥居近くに建つこちらの歌碑は、先代の宮司が社殿ができあがるのを思い描いて歌った歌碑です。「まめ人の ささげまつりし 新宮に みひかり高く 神鎮まりましぬ」
こちらが境内に近い駐車場。本殿へはこちらが近いので、足の悪い方やバリアフリー利用の方はこちらからどうぞ。
正式な鳥居からの参拝はこちらの駐車場から。こちらから入る際は、途中の祓戸の神様へのご挨拶などもお忘れなく。
神社の中でも珍しい、独創的なデザインの足腰の神様を祀る神社「白山宮」。
裏街道を通っていた昔の人々の想いを引き継ぎ、新しい形として新たに生まれ変わった足王社。また、バリアフリーでどなたも参拝できる優しい心づかいの神社が、これからも地域の氏神さまとして、未来へ引き継いでいってほしいと願います。