「八風農園(Happu farm)」は三重県の北部に位置するいなべ市にあります。花の百名山ともいわれる藤原岳の麓にあり、緑豊かな景色が広がるのどかな場所。名古屋市内から電車で約1時間、車では1時間もかからない距離です。
※2022年9月取材時の情報です。
目次
八風農園のオーナーは2013年にいなべ市に移住した名古屋市出身の寺園風(ふう)さん。(以下:風さん)有機栽培で野菜を育てる専業農家であり、「松風カンパニー」の社長としても活躍しています。
いなべ市を選んだ理由は、「僕の農業ができるフィールドがいなべにあったから」なのだそう。「ただ農業がしたい!その気持ちだけだったんですよね!」と爽やかな笑顔で答えてくれました。今回は八風農園の美味しさの秘密や、風さんが農業に出会った経緯、想いをご紹介します。
八風農園のテーマは
「みんなの食卓をそろえること」
八風農園はいなべ市内の3箇所を拠点にしていて、合わせると約5ヘクタールもの規模。昔農家を営んでいた地元の方たちから、使われていない畑を管理する代わりに無料で借りているのだとか。
八風農園のテーマは「みんなの食卓をそろえる」こと。育てている野菜は約80種類、1番収穫ができる時期は夏と冬なのだとか。さらに野菜だけではなく、卵もお肉もそろえられます。八風農園ではニワトリを飼育しており、産みたての卵が食卓を彩ることも!実際、「今日は卵は産んでいないの?」とお客様から要望があり、風さんが卵をとりに行く……という光景も見ました。
-ニワトリがいるのには驚きました!
風さん:「ここには約60~70羽のニワトリがいるんです。新鮮な卵がいただけますし、卵を産まなくなったメスやオスのニワトリなどはお肉として食べることもありますよ。オープンファームのときにバーベキューとして焼いたり、ノール(※)のシェフにテリーヌにしてもらったりね。」
-食卓をそろえるって野菜だけじゃないんですね!
風さん:「そうですね。けど今は牛がいないからバターはまだそろえられないんです。牛を飼うには広い土地が必要ですからね~。」
空気が澄んで緑の香りがする中、笑顔ですべてを育てる風さんの本気度が垣間見れた瞬間です。野菜だけでなく味噌やお酒、肉などもそろえられるからこそ「みんなの食卓をそろえる」のコンセプトの意味を理解できました。
※ノール:松風カンパニーの系列店。八風農園で採れた野菜でフレンチを楽しめるお店
「農業がしたい!」
風さんを突き動かした想いとは?
自然の中で遊ぶのは当たり前!テレビ番組にも影響を受ける少年時代
-どうして農業をしたいと思ったのですか?いつ頃からその思いが芽生えたのか気になります。
風さん:「農業に興味が湧いたのは幼少期の遊びがそうさせたのかもしれません。家族とスキーや山登り、キャンプや釣りに行ったり。とにかく自然の中で遊ぶ経験が多かったんです。あと、テレビから得る情報も大きかった!例えば動物のドキュメンタリー番組や環境問題をテーマにした番組とか。「地球が壊れていく……」という番組を見ると、「それはダメだ!」って素直に強く思っていました。
中学生の時にテレビ番組の『DASH村』を見て、自分たちで色んなものを作って無駄のない生活をしているのを見たとき、こんな暮らしがしたいな!っていう気持ちが芽生えていました。だから進路も農業高校を選びましたね。」
18歳で200万円を親から渡される。自立の一歩目はアジアの旅!
-農業高校卒業後には農家になる決意をされたと?
風さん:「実は僕の家は、「高校を卒業したら家を出て好きに生きていきなさい」という親との約束ごとがあって。卒業のタイミングで親から200万円渡されたんですよ。進学してもいいし就職してもいいし。一人で独立しなさいっていうルールなんです。」
-えぇ!?それは興味深いですね!
風さん:「最初は青年海外協力隊も考えたけど条件を満たしていなくて。けど海外の旅はしたかった。知人からインドやチベットを勧められたから行ってみると、アジア圏にハマっちゃったんです(笑)。その後アジアを巡る中で、自分が美味しいと感じるものにたくさん出会いました。旅を終えた後はそろそろ仕事がしたい!するなら農業だなっていう気持ちが固まりましたね。 」
-旅を通じて仕事として農業をする決意が強まったのですね。
風さん:「僕の名前は「アジアに風を吹かせる」という意味で親がつけてくれました。だから何かの専門性を活かしてアジアに貢献できたら……っと思っていて。でも、自分がやりたいと思えることが台風のような風で大きく広がって、アジアに伝わったらそれでいいや!と思えたんです。」
帰国後に出会った松阪市在住の農家のおじいさん
帰国後、風さんは松阪市の農家をされているおじいさんに出会うことに。彼のもとで週の半分は住み込みで農業を学び、半分は名古屋のカフェで働く生活を約5年続けたのだとか。そのおじいさんから学んだ農法を活かしたのが、今の八風農園の原点です。
八風農園が掲げる自然派農法ってなに?
美味しさのひみつは「草堆肥」
八風農園は「自然派農法」で育てています。しかしその農法はインターネットで調べても記載されていません。風さんの作る野菜はなぜ選ばれるのか、その秘密をうかがいました。
-自然派農法ってどんな農法ですか?
風さん:「実は、自然派農法は松風カンパニーのホームページを作ってくれる高杉さんが考案したネーミングなんです。僕の農業の方法を見て生み出してくれました!」
-だから調べても載っていないんですね(笑)。
風さん:「そうなんです。有機農家さんでも、無農薬だけど堆肥をあげている人はいるんですよ。でも僕が出会った農家のおじいさんは自然農法に近くて、草刈りなど全て手作業。肥料もあげてなかったんです。刈った草を畝にただ置いて、それを肥料として使っていました。でも野菜の味はめちゃくちゃ美味しいんです!舌触りにハリがあって、新鮮な細胞を食べている感じですね!肥料をあげないだけでこんなに美味しくなるんだ!という単純な仕組みを知りました。けどさすがに手作業で草を刈るのはちょっとしんどいのが本音で(笑)。だから僕の場合は、草刈りは機械を使うけど肥料はあげないやり方。自然「派」農法ということにしているんです。」
-風さんの野菜の美味しさの秘密は農法がポイントですか?
風さん:「ポイントは草チップです。よく河川敷や道路沿いで、業者の方が草を刈っている風景を見ませんか?刈った草は産廃として隣町の菰野町で処理されて、チップに砕かれたものを僕の畑に運んでくれています。草チップは2年ほど置きっぱなしにすれば腐葉土のような土になって、僕はそれを「草堆肥」って呼んでいます。草堆肥を使うと野菜もよく育ち、有機物がある程度循環していい感じの畑になるんです!そうなればもう肥料はやらず、その状態で毎年野菜を作り続けています。」
「オープンファーム」
いなべの恵みを五感で感じられるイベント!
八風農園では「オープンファーム」も不定期で開催されています。いつも食べている野菜が、どのように育ち、どのような想いで作られているのか実際風さんからお話を聞けるイベントです。今回は足を運んだ際に、採れたての野菜や見たこともない野菜を生で食べさせてもらいました!
シカク豆
ツルムラサキ
タイバジル
ゴーヤ
八風農園の野菜はどこで買えるの?
八風農園の野菜は、主に名古屋市や三重県内で購入できます。
・松風カンパニー系列店
上木食堂
https://matsukazecompany.com/ageki
ノール
https://matsukazecompany.com/nord
フライベッカーサヤ
https://matsukazecompany.com/saya
岩田商店
https://iwata-syouten.stores.jp/
・なばやし夜イチ
http://natsu1yoichi.blog133.fc2.com/
https://www.instagram.com/nayabashi41/?hl=ja
・トナリノマルシェ
他にも風さんとお知り合いの「雨ニモマケズ」さんが、三重県内のイオンモール(桑名・四日市・津南)などで販売しています。
http://amenimomakezu.shop/index.html
風さんは八風農園を軸とした「松風カンパニー」の社長として、いなべ市内に新しい風を吹かせている1人。自分たちのことは自分たちで考えてまかなえていけるような「コンパクトな社会」を企業として目指しています。それはひとりひとりが自立しながら、みんなで手を携えて暮らすイメージなのだとか。
「コンパクトな社会」の先駆けの役割を担いながら、日本からアジアに風を吹かせる日はそう遠くないと感じます。いなべの恵みが感じられる野菜を味わいながら、その想いも一緒に感じてみてはいかがでしょうか。