素材の持つ質感と形の調和を追求した国産材の家具。稲熊家具製作所|名古屋・笠松

2018.6.14
稲熊家具製作所

名古屋の中心から少し離れた、笠寺の鉄工所跡地にある「稲熊家具製作所」。オリジナル家具を中心に個人住宅や店舗什器、オーダーメイド家具まで幅広く展開。国産材の無垢材を用いて素材の持つ質感と形の調和を追求し、一つひとつの家具を手仕事によって丁寧に作り上げています。

 

今回は、家具の製作から販売まで一人で手がけられている、家具職人の稲熊祐典さんにお話を伺ってきました。

 

 

木工との出会い

 

稲熊祐典さん稲熊家具製作所の稲熊祐典さん


稲熊さん:「木工に興味を持ったのは、名古屋学芸大学時代です。卒業後は、高山の木工芸術スクールに通い、木工や家具の基礎を1年間かけて学びました。その後は、家具工房に3年ほど勤め、2013年に「稲熊家具製作所」をオープンさせました。最初は工房だけのスタートだったのですが、家具に実際に触れていただける場所をつくりたいと、2014年にショールーム兼ショップをオープンしました。」


ショールーム
設計士である稲熊さんのお兄さんが手がけたショールーム。鉄工所の倉庫をリノベーションした開放感のある空間です。

 

家具がつくられているアトリエ家具がつくられているアトリエ。ショールームの横に隣接しています。

 

 

長く使ってもらえるものをつくりたい

 

椅子

 

まずは家具のこだわりを聞かせていただきました。

 

稲熊さん:「北欧の家具にとても影響を受けていることもあり、家具製作で意識していることは、無駄をなくすことです。シンプルなデザインにすることで、長く使ってもらえるものをつくりたいと思っています。木材・アイアン・ファブリック、それぞれの素材の質感とデザインの調和を心がけているのもポイントです。」

 

オーダーメイドのダイニングテーブルと椅子オーダーメイド(Dining Table /Dining Chair/Dining Bench) Photo : Ryoji Yamauchi

 

オーダーメイドのカップボードオーダーメイド(Cup Board) Photo : Ryoji Yamauchi

 

稲熊さん:「家具のお届けまでの期間は、ご注文いただいてから2~3カ月ほどです。造作家具の場合は、建物との絡みがあるので、半年前からご相談いただいています。つくる時間よりも、ヒアリングやデザインを考える時間の方が長いですね。最初の案から、お客様と相談しながら、デザインの細部を組み立てていきます。」

 

 

木材へのこだわり

 

家具用の材木

 

素材の質感を大切にしている稲熊家具では、木材へのこだわりも人一倍です。主に国産の楢(ナラ)・楓(カエデ)・胡桃(クルミ)が使用されています。

 

稲熊さん:「できるだけ国産の木材を使うようにしています。以前、材木屋さんに行ったときに「どこ産ですか?」と尋ねたところ、「おそらく中国かロシアですね。」という答えが返ってきて、とても引っかかったんです。仲介業者を介しているので、どこ経由で来たのかわからないのかわからず、品質も落ちてしまっていることがありました。

 

オーダーをいただいて製作するとき、どこどこの木を使いますと堂々と言いたいという理由から、国産材にこだわるようになりました。お客様も気持ちがいいし、安心だと思うんです。もちろん価格は安くはありませんが、国産材は品質も安定しています。」


 


木材の品質を確保するためには、乾燥の方法も大切なのだそう。

 

稲熊さん:「木材の乾燥方法には、天然乾燥と人工乾燥の2つがあります。天然乾燥は、屋外や倉庫で製材を1〜3年ほどかけて乾燥させます。時間はかかりますが、木材の本来の色味が残ります。

 

人工乾燥は、乾燥装置の中に搬入し、装置の中で熱を加えたり、除湿したりして、木材を短期間の間に乾燥させる方法です。短期間で値段も比較的安いのですが、濃い色の木材だと変色してしまうこともあります。海外の木材は、人工乾燥のものが多いので、乾燥方法という視点からも、できるだけ国産材を選ぶようにしています。」

 

アトリエで乾燥させている木材アトリエの一部でも木材を乾燥させています。実際に家具になるまでには、1〜3年もの時間がかかるのだそう。

 

 

木の魅力や、木の形を活かした五感で感じる家具「1/ONE」



1/ONE(ワンバーワン)

 

これまでの「スタンダード(オリジナル家具)」「オーダーメイド」に加え、新たに「1/ONE(ワンバーワン)」という木材を生かしたシリーズが加わりました。

 

稲熊さん:「1/ONEは、木のもともとの形を生かした家具です。一枚板ではなく二枚の隣合わせの板をつなげる「ブックマッチ」という技法を用いました。ブックマッチとは、一本の丸太から板材を挽き、隣同士になる板と板の切断面を左右対象に本を開くように並べ、つなぎ合わせた板のことです。

 

天板が出来上がったら、それを最大限に生かす脚をデザインします。この天板にはこの脚という風に、木材の木目(もくめ)や形を生かすよう、ゼロから考えていくので、一つとして同じデザインはありません。世界で一つだけダイニングテーブルになります。」

 

ブックマッチに使用する木材

 

余白道具THE APARTMENT STOREで開催された企画展「余白道具」

 

1/ONEは、栄のTHE APARTMENT STOREで行われた企画展「余白道具」をきっかけに生まれました。

 

稲熊さん:「もともと「ブックマッチ」という技法には魅力を感じていたのですが、なかなか製作する機会がなかったんです。そんな中、「余白道具」という企画展を開催することになりました。多治見で陶磁器を製造している「3RD CERAMICS(サードセラミックス)」、イラストレーター「Miltata(ミルタタ)」との合同展です。実は2人とは大学の同級生なんです。

 

「今できること。価格帯をあげた一点もの。」というテーマで、企画展に向けて製作を始めました。そこで生まれたのが「1/ONE」です。スタンダードやオーダーメイドでは、どうしても予算の兼ね合いがありますが、「1/ONE」にはやりたいこと、今できる技術をすべて詰め込みました。」

 

 

陶磁器×木材のコラボレーションライト「燈台」

 

燈台

 

企画展を開催した3RD CERAMICSのメンバーである長屋有さんとともにつくりあげたコラボレーションランプ「燈台」。磁器のシェード、木の台座、一つひとつ形が異なります。

 

稲熊さん:「多治見の陶器ブランドの3RD CERAMICSの長屋くんと、コラボレーションライトを製作しました。台座には、桑(クワ)、梨(ナシ)、欅(ケヤキ)の木材を使用し手作業で削り出し、磁器も一つひとつ形が違います。

 

心を豊かにするということは、好きなものの中で暮らすこともひとつだと思いますが、それ以上に時間を大切にするこだと僕は思っています。灯りは張り詰めた日常をほぐしてくれる道具のひとつではないでしょうか。この灯りも、誰かの日常に寄り添う存在になってくれればうれしいですね。」

 

燈台
燈台 / 磁器 Type -1st- ¥85,000(税別) 磁器はふんわりと光を通してくれます。

 

夕方の暗さになると、光の透過がよりはっきりしてきます。

 

 

ウールの質感と木材の組み合わせ「オリジナルチェア」

 

オリジナルチェア

 

最後にスタンダードシリーズのチェアをご紹介します。

 

稲熊さん:「フレームの木の部分でこだわっている点は、エッジを残すことです。理想の座り心地になるまで、何度も試作を重ねました。こちらの椅子は、カエデ材、チーク材で製作可能です。

 

ファブリックは、デンマークで唯一生産している椅子生地メーカー「ケアロップヴァヴェリ社」のものを使用しています。ウールの質感がとても良く、使えば使い込むほどにツヤとなめらかさが出てくるので、経年変化も楽しめます。」

 

オリジナルチェア

 

ケアロップヴァヴェリ社の椅子生地

 

 

稲熊家具製作所

 

あえてコンセプトをつくらないようにしているという稲熊さんの言葉の通り、稲熊家具製作所の家具はどれもとてもシンプルです。しかし、その裏側には、使い手・素材・デザインへのこだわり・家具づくりに真摯に向き合う稲熊さんの姿勢がありました。実際に触れ体感することで、より一層稲熊家具製作所の良さが伝わるはずです。

 

【稲熊家具製作所(いなぐまかぐせいさくしょ)】
住所  :愛知県名古屋市南区道全町4-2-2
電話番号:052-883-9950
営業時間:土・日曜日 13:00〜18:00 月~金曜日 予約制

※不在の場合もありますので事前のご連絡をお願い致します

http://inakagu.com/about.html