300年の歴史。三重県菰野町の萬古焼を食卓に。「かもしか道具店」
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地域ブランド「かもしか道具店」
「親父がやっている仕事があるうちに、何かやらなくては!」と山口さんは新規開拓を進めました。2005年には窯元仲間4人でテーブルウエアブランド「4th market」を立ち上げるなど、新分野にも挑戦していきます。その後2010年に、父親から経営を引き継いだ山口さんは、自社ブランド「かもしか道具店」を立ち上げます。店名の由来を教えていただきました。
山口さん:「菰野町から見えるセブンマウンテンには、天然記念物のニホンカモシカが生息しているんです。かつては世界唯一のカモシカ専門動物園(日本カモシカセンター)もあったくらい。菰野町の町獣もカモシカ。三重県の県獲物もカモシカ。地域ブランドをつくりたいという想いから、「かもしか道具店」と名付けました。」
山口さん:「僕の一番のミッションは、菰野町、四日市の萬古焼産地を守ることです。なので、かもしか道具店は、自分のお店ではなく地域ブランドとして捉えています。
例えば、山口陶器以外の窯元も巻き込んでものづくりをしています。ひとつの窯元ですべての工程を完結させるのではなく、得意なところへ外注していく。そうすることで、その窯元にも仕事が生まれる。産地全体として発展できます。
その中で一番気をつけているのは、下請けとしてではなく協力窯元として、一緒に仕事をすることです。ブランドコンセプトをしっかりと伝え、図面の段階から「この商品はあなたのところでお願いします」と依頼しています。
そして見積もりで提示された価格で商品を買います。ここで、1,000円と言われたものを500円にしてくれと言ったら、本末転倒ですよね。僕も窯元なので、どのくらいの費用や手間がかかるかは知っていますからね。1,000円のものを10,000円で売るのも僕の仕事。100円でしか売れないのも僕の仕事。産地に仕事を持ってくるのが、僕の仕事ですね。」
自社でつくれるものも、協力窯元さんに依頼して商品づくりをしている「かもしか道具店」。山口さんの「産地が元気にならんといけんから。」という言葉には、自社ブランドだけでなく、萬古焼の産地全体を捉えている大きな視点を感じました。