個人作家でもない。大きなメーカーでもない。“第3の陶芸”のあり方。「3RD CERAMICS(サードセラミックス)」|岐阜・多治見

2018.7.27
3RD CERAMICS

全国でも有名な焼き物の産地、岐阜県多治見。この街にアトリエを構え、陶磁器のデザイン・生産・販売を行う『3RD CERAMICS(サードセラミックス)』。

 

「気づきのある暮らしを送る人へ」をコンセプトに、個人作家でもなく、大きなメーカーでもなく、新たなモノづくりのカタチを提案しています。今回は、3RD CERAMICSの誕生秘話、商品のこだわり、今後の展望など、たっぷりとお話を伺ってきました。

 

 

それぞれの陶芸との出会い

 

3RD CERAMICS

 

3RD CERAMICSのアトリエ多治見駅から徒歩10分ほどのところにある、3RD CERAMICSのアトリエ。ここで、陶器の製造から窯焼きまで行われています。


3RD CERAMICSは、制作担当の長屋有さんと土井武史さん、販売・マネージメント担当の花山和也さんの3人が織りなす陶磁器ブランド。今回はつくり手である、長屋さん、土井さんのお2人にお話を伺いました。

 

長屋有さん制作担当の長屋有さん。大学では、プロダクトデザインを専攻されていたそう。


はじめに3人のこれまでの経歴を教えていただきました。


長屋さん:「大学卒業後、一旦はデザイン事務所に入ったのですが「ものづくりに携わりたい!」という想いが捨てきれず、多治見市意匠研究所で陶芸を2年間学びました。卒業後は、2年ほど個人で作家として活動していました。ほとんどフリーターですけどね(笑)

 

土井君は、意匠研究所の1年上の先輩なんです。あるグループ展をきっかけに、一緒にやろうかということになりました。」

 

土井武史さん制作担当の土井武史さん。幼少期から粘土遊びが好きだったのだといいます。

 

土井さん:「僕は陶芸コースのある京都の銅駝美術工芸高等学校で、15歳から陶芸をはじめました。大学卒業後に、多治見市意匠研究所へ入学しました。

 

多治見市意匠研究所は、専門学校と職業訓練学校の間のような場所ですね。僕のような経験者も、有くんのような初めて学ぶ人も、陶芸のことを一から十まで学べます。各分野の専門家の先生がいらっしゃるので、例えば釉薬について勉強したいという場合は、釉薬の研究者の方から教えてもらったりもできます。」


長屋さん:「花ちゃん(販売・マネージメント担当の花山さん)は、陶芸作家をしている地元の先輩についてアシスタントをしていたんですよ。共通の知り合いも多かったので、話したことはなくても、うっすらと存在は知っていました。僕の展示会に遊びにきてくれたこときっかけに仲良くなったんです。当時、彼は経理関係の仕事をしていたので、最初は、そういう面をサポートしてもらえたらと声をかけました。」

 

 

個人作家でもない、大きなメーカーでもない。
第3の切り口の陶芸

 

長屋さんと土井さん

 

それぞれ別々の道で陶芸と出会った3人が集まり、2014年に3RD CERAMICSが誕生しました。


長屋さん:「僕も土井くんも、お互い作家向きではなかったんですよ。作風というか、好きなもの、やりたいことが、いわゆる作家さんというものを目指している感じではなかったんです。

 

2人で話したときに、力を合わせたら自分たちあったスタイルができるのではないかと感じて、一緒にやろう!ということになりました。個人作家でもない、大きなメーカーでもない。第3の切り口で陶芸をやりたいなって。そういう想いを込めて、『3RD CERAMICS』という名前にしました。」

 

 

長屋有さん

 

長屋さん:「とはいえ、すべて机上の空論だったので、いざやってみるとうまくいかないことばかりでした……。当初はもっと量産する予定だったんです。大きな工場だと、一日何千、何万と製造しています。作家さんだと、一日に数個ほど。その間をとって、100〜200個つくれたら良いねという話だったんですけど、実際は、数十個つくるのが限界でした。今は、自分たちでできる範囲で、とりあえず落ち着いたという感じですね。

 

3人でできることの幅は、1人よりも確実に多いですし、少人数ならではの小回りなんかも強みかなと思います。」

 

 

3RD CERAMICSの商品

 

3RD CERAMICSの風鈴左から、「風鈴 シカク」「風鈴 サンカク」「風鈴 タテナガ」。真っ白な磁器(ボーンチャイナ)のカサに、真鍮(しんちゅう)でできたリングが涼やかな音を奏でます。


続いて商品づくりについてお話を伺いました。


長屋さん:「最初につくったアイテムは「風鈴」です。個人で作家をしていたときからお付き合いのある、名古屋のお店「AUTHOR(オーサー)」の店主さんからの依頼がきっかけでした。」

 

土井さん:「いろいろなご縁を通じて、商品は少しずつ増えていきました。例えば、フラワーベースは、もともと長屋が個人作家として活動していたときにつくっていたものを、サードセラミックスとして改めてつくって欲しいというご要望から誕生しました。他にも、「黒泥皿」というシリーズは、僕の地元でケータリングをやっている友達からの依頼で制作したものがベースとなっています。」

 

では、ここからは3RD CERAMICSの商品をご紹介していきます。

 

 

一つとして同じ形はない「フラワーベース」

 

3RD CERAMICS
フラワーベース


コンセプトは、最もスタンダードな花瓶。ろくろで制作され、ひとつとして同じ形はありません。浮かびあがるグラデーションのような模様が特徴的です。フラワーベースとしてはもちろん、そのままオブジェとして飾ってもすてきです。

 

 

釉薬の自然な色むらを楽しむ「黒泥皿」

 

黒泥皿

黒泥皿

 

白濁した釉薬(ゆうやく)を自然と垂らし、あえて色むらを出した黒泥のテーブルウェア。濃淡の出やすい釉薬を使い、お皿の一枚一枚の表情を楽しめるようになっています。ワンプレートで使いやすい9寸から、前菜などを盛り付ける小皿として使える3寸まで、サイズは5種類。

 

 

ゆるやかなウェーブが印象的「シェード」

 

3RD CERAMICSのシェード

 

ゆるやかなウェーブが優しい印象を与えてくれるランプシェード。ゆるやかなウェーブや、土のざらつきを感じる質感など、大量生産のプロダクトでは出せない味わいが魅力です。

 

 

新たな第三の切り口

 

マグカップ

 

長屋さん:「基本的に3RD CERAMICSの商品は、ろくろでつくっています。ろくろでひいているので、どうしても個体差が出てきてしまいます。出てきてしまうというよりは、一個ずつ違うことがむしろ長所になるものづくりをしていきたいなと考えています。」

 

素焼きの状態のマグカップ
素焼きの状態のマグカップ

 

アトリエにある窯
アトリエにある窯で焼き上げます。


長屋さん:「そうした中で、最近新しいつくり方をはじめました。それがこの「MPマグ」です。このマグカップは、素焼きの状態まで、地元のメーカーさんに制作を依頼しています。これに自分たちで調合した釉薬をかけて、自分たちの窯で焼くというスタイルのもの。今後はこのスタイルも伸ばしていきたいなと思っています。第3の切り口というのは、こういうところにあるんじゃないかなって。

 

制作できる個数もすごく増えますし、コストも下がるので、比較的お手頃な価格で提供ができます。より身近に、日常の中で、僕らの陶芸を楽しんでもらえたらうれしいですね。」

 

炭化を使ったマグカップ

炭化

 

長屋さん:「そしてこのマグカップでは、「炭化」という技法を使ったシリーズも制作しています。「サヤ」という容器に、炭やもみ殻と一緒に入れて窯で焼きます。そうすると、炭素が陶器に吸着して、ランダムに色がつきます。ちょっとした温度差で、炭素が吸着したり、色が飛んだりするので、一つ一つ表情が違うんです。

 

こうした技法は、手間もかかりますし、個体差が出るので、大きなメーカーさんではほとんど取り扱われていません。僕らの第3の切り口としては、こうした技法なども、取り入れていけたらと思っています。」

 

 

今後の展望

 

 

続いて、今後の展望について伺いました。


長屋さん:「これまでは、大手メーカーさんよりはちょっと高く、作家さんよりは少し安いという価格帯が多かったのですが、もう少し価格帯の幅を広げていきたいなと考えています。素焼きまで依頼するスタイルはある程度できてきたので、次はじっくりと手をかけた一点ものに挑戦していきたいですね。」

 

試作段階のコーヒードリッパー試作段階のコーヒードリッパー


土井さん:「例えば、これは名古屋のMIROKU COFFEEさんと共同開発している陶器のドリッパーです。シンプルな構造ですが、リムの本数や高さを変えながら、5〜6回試作を重ねました。同じ豆で、同じ時間で淹れても、全然味が違うんですよ。こないだようやく完成して、コーヒー屋さんに委託販売をしてもらっています。」


長屋さん:「僕はコーヒーは詳しくないんですが、そんな僕が飲んでも味が違うのがわかるくらい、本当に違います。不思議ですよね。」

 

 

長屋さん:「名古屋の「稲熊家具製作所」の稲熊くんと、コラボレーションライトを製作しました。彼とは大学の同級生なんです。

 

彼が旋盤という機械を購入したことをきっかけに、何かつくろうということになり制作することになったのですが、いざはじめて見ると、とても苦戦しました。まず、普段つくっているフラワーベースや、お皿などに比べて、サイズが大きいということが一つのハードルでした。もう一つは、普段は陶器をメインに扱っているのですが、光を通すために磁器を使いました。焼き方の具合も異なるので、そこに慣れていくのは大変でしたね。

 

先日も東京のお店に納品してきました。これからも長く続けていきたいですね。」

 

稲熊家具製作所の記事はこちらから
https://life-designs.jp/webmagazine/inakagu/

 

 

それぞれの良さがあるからこそ

 

 

最後にお互いの尊敬している部分について、伺ってみました。


長屋さん:「最初一緒にやりたいと思ったきっかけも、僕にないものをたくさん持っているからです。特に焼き物の知識量。土井くんは、高校から焼き物を学び、メーカーにも勤めていたのでかれこれ10年ほど焼き物をやっているんです。知っている知識量が圧倒的に違いましたね、いまだにそうです。そういうところですかね。引き出しが多いんですよね。焼き物という面でだけですけど(笑)」


土井さん:「ちゃんとオチつけるんですね(笑)。僕は、今までやってきたことを反復して精度を高めていく性格なんですけど、有くんは自分から湧き出るものもあるし、他人から「こういうのつくれない?」と提案をもらったときに、自分のストーリーをつくってお返しができるんです。そういうところがすごいと思いますね。」


販売・マネージメントを担当している、花山さんの存在も大きいのだといいます。


長屋さん:「3RD CERAMICSは、つくり手以外の人がいるというのが強みですね。制作をしていると、なかなか他のことに手が回らないんです。例えば、展示会などでも、本当はそこで話をしたり、自分たちで売りたいなという気持ちはあるんですけど、なかなか難しい……。僕らだけでなく、作家さんの多くがそうなんじゃないかな。その中で、花ちゃんがいるというのは、めちゃくちゃ強みですね。僕らにはできない「伝える」という部分を彼が担ってくれているからこそ、制作に集中することができています。」

 

photo by 中島光行(@mitsu_nakajima)


2014年にスタートし、今年で4年目になる3RD CERAMICS。東海エリアだけでなく、各地で展示会やポップアップショップなども開催され、着実にファンを増やしています。

 

次回は京都の「Community Store TO SEE 」で開催される「森からはじまる。/3RD CERAMICS & 市川岳人 exhibition」。愛知県を拠点に活動する木工作家・市川岳人氏との、合同展 & ポップアップストアです。


▼詳細情報はこちらから
http://t-o-s-e-e.jp/

 

長屋さん、土井さん、ありがとうございました。


それぞれ「土井くん」「有くん」「花ちゃん」と呼び合う光景が印象的でした。性格も、好きなものも、歩んできた道も違う三人だからこそ誕生した3RD CERAMICS。個人の作家ではなく、大きなメーカーでもない、“第3の陶芸”のあり方にどんどんと挑戦しづつけている3RD CERAMICS。今後も目が離せません。

 

【3RD CERAMICS(サードセラミックス)】
住所    :岐阜県多治見市虎渓町2-16 MAP
定休日   :不定
お問い合わせ:info@3rd-ceramics.com
http://3rd-ceramics.com
https://www.instagram.com/3rd_ceramics/?hl=ja