2024年3月にリニューアルオープンした愛知県半田市にある「ミツカンミュージアム(MIM)」。”お酢”で有名な会社「ミツカン」の酢づくりの歴史や、食文化の魅力などを楽しく学べる体験型の博物館です。
半田は酒粕からお酢をつくり出した地。江戸前ずしブームのきっかけにもなりました。今回はそんな半田のお酢づくりについて学べる「ミツカンミュージアム」を徹底レポートします!
目次
場所はJR武豊線「半田」駅から徒歩3分、名鉄河和線「知多半田」駅から徒歩13分の半田運河沿いにあります。昔はここから完成したお酢を船で運んでいたそう。ミツカンのマークがいたるところにあります。
「ミツカンミュージアム」の見学は事前予約制。ガイド付きツアーを含む5つのゾーン全てを回れる「全館コース」と、「大地の蔵」と「光の庭」の2つのゾーンを自由に楽しめる「ミニコース」の2種類があります。
<全館コース>
滞在可能時間:120分
定員人数 :30名
利用料金 :大人¥500、中高生¥300、小学生¥200、乳幼児無料<ミニコース>
滞在可能時間:120分
定員人数 :15名
利用料金 :大人¥300、中高生¥200、小学生¥100、乳幼児無料※障がい者手帳をお持ちの方ご本人とその付き添いの方1名は該当料金の半額となります。
今回は5つのゾーン全てをじっくり見学できる「全館コース」に参加しました。受付を済ませ、予約時間になったら見学スタート!大きな荷物などは受付横の無料コインロッカーに預けておきましょう。
館内でも館外でも楽しめる!
MIMのARコレクション
リニューアルのひとつ目のポイントは「MIMのARコレクション」。
館内の各ゾーンでスマートフォンのカメラアプリをかざすと、MIMのARコレクションを取得できます。各ゾーンでGETできるARコレクションは異なるので、スタンプラリー感覚で集めると楽しいですよ!
見学をスタートする前にアプリをダウンロードしておきましょう。
▼アプリのダウンロードはこちら
https://www.mizkan.co.jp/mim/app/
取得したARコレクションは館内での記念撮影にぴったり!館外でも表示できるため、ご帰宅後にも楽しめます。
江戸時代の酢づくりが学べる「大地の蔵」
まずは「大地の蔵」ゾーンへ。
ここでは、江戸時代の酢づくりや、現在の醸造の様子を見ることで、脈々と受け継がれてきたものづくりの精神にふれることができます。
半田市のある知多半島は、江戸時代から日本有数の酒造りの地域でした。酒以外にも、味噌・醤油・酢などの醸造品も盛んです。ミツカングループの創業家である中埜家も、もともとは酒造家。酒造りの過程で余る「酒粕」の有効利用として酢づくりをはじめました。
それでは、酢づくりの工程をみていきましょう。天井や梁・柱・桶などの一部は、実際に使用されていたものだそうです。
当時の酢づくりは9つの工程に分けられ、すべて人の手によって行われていました。お酢の原料となる酒粕を大きな桶に入れて、長時間寝かせて熟成させる「粕熟成」からスタート。
熟成した酒粕を桶に移し、水を加えてかき混ぜます。その後、約1週間で「もろみ」ができあがります。
もろみを酢袋にいれ、槽(ふね)で圧搾して絞ります。もろみから絞り出された液が「酢もと(お酒)」です。
酢もとの半分を、大きな鉄釜で温めます。できたものは「わかし汁」と呼ばれていました。
わかし汁と残り半分の酢もとを、2階にある仕込み桶に移します。仕込み桶には、前回発酵したお酢が「種酢」として半分残っており、種酢の中の酢酸菌が働くことで、約1カ月かけて酢もとがお酢に変化します。
出来上がったお酢の半分は、1階の貯蔵桶に移し、2〜3カ月ほど熟成させます。残り半分は、次の仕込みに使われます。
その後ろ過したお酢は、樽に入れます。樽を縄で縛り、製品の完成。これだけの工程をすべて手作業で行なっていたなんて驚きです。
フロア中央にある桶の中をのぞくと、現代の酢づくりの様子をみることができました。「ミツカンミュージアム」では、実際にお酢をつくっています。工場の設備や使用する道具は大きく変わっていますが、酒粕から粕酢をつくる製造原理は変わっていません。
静置発酵室では「三ツ判 山吹(みつばん やまぶき)」という粕酢が実際に発酵されています。山吹は館内のミュージアムショップでも購入が可能なので、お土産にぴったり!
廊下には蔵で働いていた人々にまつわる展示、桶や樽を作った道具を展示。リニューアルによって映像がプラスされ、さらにわかりやすく楽しく学べるようになりました!
体験コーナーがリニューアル!
リニューアルで新登場したのが、体験アトラクション「あなたも酢づくり職人」。映像に映し出されるアバターを通じて、お酢づくりが体験できます。
アバター用の写真を撮影して、アトラクションスタート!
原料である「お酒(日本酒やワインなど)」「酢酸菌」「空気」を集めてお酢をつくります。複数人が同時に体験できるので、家族や友人と競い合っても楽しいですよ!
酢づくり職人たちの作業を体験できるコーナーも!
まずは酢を運ぶ作業に挑戦!左右の桶は合計15kgもありかなりの重さにヘトヘト……。実際の職人は3倍ほどの重さの桶を担いでいたというので驚きです。
続いては、中身が見えない樽の中のお酢の量を判断する作業。
樽の天面を木槌で叩いたときの音の聞こえ方で、中身の量を確認していたのだそう。お酢が満杯になっているものはカンカンとした高い音。空の樽はトントンという低い音がしました。
半田の風情を感じる「風の回廊」
こちらでは、ミツカンがともに歩んできた半田の情景や人々の息吹を、当時の懐かしい写真と音の演出から感じることができます。
ガイドの方と合流して「時の蔵」へ。
ミツカンの変革と挑戦の歴史をたどる
「時の蔵」
続いては「時の蔵」ゾーンへ。真っ暗な部屋の中に足を踏み入れると、プロジェクションマッピングがスタートします。
目の前に木の巨大なオブジェが現れました。
これは、江戸時代に半田から江戸までお酢を運んだ「弁才船(べざいせん)」をほぼ実物大で再現したものです。(長さ約20メートル、高さ約5メートル、重さ約20トン)
かなり大きな船ですが、これよりも大きな船で運ぶこともあったそうですよ。
壁には、ミツカングループの歴史が絵巻物のように描かれ、ミツカンの変革と挑戦の歴史を学ぶことができます。
実は江戸前ずしとミツカン粕酢には深い関係がありました。
江戸では、今の握りずしの原型である『早ずし』が流行。当時はまだ高価だった「米酢」が使われていたので、粕酢にすることでもっとおいしく手軽なすしがつくれると、又左衛門は江戸への売り込みを開始します。米酢よりも甘みと旨味のある粕酢は、すしによく合うと瞬く間に人気をはくします。
江戸っ子のハートをつかんだ握りずしの大ブームとともに、又左衛門の粕酢は江戸前ずしに欠かせないものとなっていったのでした。
酢づくりだけでなく、ビールや酪農、ハンバーガーショップまで営んでいたというから驚きです!
階段で2階へ上がり「弁才船」の甲板に乗り込みます。まさか乗れるとは思っていなかったので、ワクワクが止まりません。
室内が暗くなり目の前の壁で映像がスタート。半田から江戸へのお酢の運搬の様子が、軽快な音楽とアニメーションで表現されています。
航海のシーンでは、風が吹き雷が光ったり、実際に船に乗っているような感覚になります。テーマパークのアトラクションのような楽しさ!
日本の食文化に触れる
「水のシアター」
「水のシアター」は、映画館のような空間でした。ミツカングループのミッション「やがて、いのちに変わるもの。」を表現した映像が映し出されます。
お寿司や未来の食について楽しく学べる
「光の庭」
最後は「光の庭」ゾーンへ。さまざまな体験を通して、食の魅力を楽しく学ぶことができます。おそらくお子さんはこのゾーンが一番テンションがあがるのではないでしょうか。
お酢ドリンクが試飲できる「お酢ドリンクバー」
まずはお酢ドリンクが試飲できる「お酢ドリンクバー」。受付で受け取ったメダルと交換します。
フォトスポットとしても大人気「すし大陸」
まず目に飛び込んできたのは、大量の握りずし!
「すし大陸」と名付けられたテーブルには、20種類以上の握りずしが1,000貫以上並びます。テーブル側面の引き出しの中には、すしの豆知識が紹介されていました。フォトスポットとしても大人気!
オリジナルラベルのマイ味ぽんが作れる「味ぽんスタジオ」
続いては、オリジナルラベルの「マイ味ぽん」がつくれる「味ぽんスタジオ」へ。味ぽん(¥200)を購入しスタートです。
ラベルの二次元バーコードを読み込んで撮影スタート!
購入した「味ぽん」にラベルシールを貼り、「マイ味ぽん」の完成です。専用の化粧箱もついてくるので、お土産にもぴったり!
SNSでもお馴染みの「フォトすポット」
自分の身体を使って「す」の文字を完成させる「フォトすポット」なんかもあります。こちらはSNSでもお馴染みですよね。
フードロスなどの社会課題を楽しく学べる「そうぞうファクトリー」&「みらいウィンドウ」
今回のリニューアルで新しく登場したのが「そうぞうファクトリー」と「みらいウィンドウ」。フードロスなどの社会課題を楽しく学ぶことができるアトラクションです。
世の中には無駄に捨てられてしまう材料がまだまだいっぱいあります。まずは、ハンドルを回して捨てられてしまいそうな食材をGET!
たたいたり、こねたり、色をつけたり、デコレーションしたりして「未来の食べもの」に変身させます。
「みらいポスト」にカプセルを入れると、「みらいウィンドウ」に自身が作った「未来の食べもの」が映し出され、おいしイイネ!ポイントが表示されます!社会問題を考えるきっかけになりますね。
ここでしか買えないアイテムも!
ミュージアムショップ
最後は、ミュージアムショップへ立ち寄りましょう。
ミツカン創業のお酢「三ツ判山吹」や、ここでしか買えない数量限定発売のお酢「千夜」といったプレミアムなお酢もありますよ。エントランスとつながっているので、ツアー参加者ではなくても立ち寄ることも可能です。
想像以上にボリューム満点の見学ツアーでした。ガイドツアーと聞くと、少し小難しい印象がありましたが、終始楽しく過ごすことができました。これだけの内容で、入場料500円はお得すぎます!
大人だけでなく、子どもも、家族みんなで学べる博物館です。楽しくミツカンの歴史や、酢づくりの奥深さを学んでみませんか。ミツカンは「半田赤レンガ建物」や、半田の食文化とも深いつながりがあります。半田へおでかけの際には、ぜひ最初に立ち寄っていただきたいスポットです。