「かご屋moily(モイリー)」カンボジアの村人がつくり出す天然素材のかご。
目次
カンボジアの良さを尊重する。
moilyのかごは、カンボジア北西部の都市シュリムアップの中心から一時間ほどの「コックトラーチ村」でつくられています。
池宮さん:「コックトラーチ村の住民のほとんどは農家です。作物が育ちにくい乾季(11〜4月)でも収入が得られるよう、かご編みをしてもらっています。
かご編みについてmoilyでは、2つのことを心がけています。ひとつは、「買取にすること」。村と相談して決めた基準をもとに、一般的な買取額の2〜3倍、高いものでは5倍ほどで買い取っています。また、工房で作業するのではなく、それぞれの家で作業してもらっています。そうすることで職人たちは子供の世話もできるし、家事を優先させることもできます。本人たちが「作ろう!」と思ったときにかごを作った方が、心もこもるし、丁寧な商品になりますしね。」
池宮さん:「もう一つは、カンボジアの良さを尊重するということです。今以上にたくさんのオーダーを取ってくることもできるとは思います。でもそうすることで、カンボジアのお昼は寝て、ゆるゆるとして、稲作が忙しい時期はつくらないという彼らの良さを奪ってしまう。カンボジアの穏やかな暮らし方だからこそ、他の人を受け入れ、心に余裕があると思うんです。仕事メインの生活になってしまい、心の豊かさや余裕を失うのは違います。本人たちが納得する、自分の生活に必要な分だけ、かごを作ってくれれば良いなと思っています。」
池宮さん:「そう思えたのにも、あるきっかけがありました。実は、一度かご編みの村が変わっているんです。最初の村に出会って一年ほど経ち、ようやく日本でも販売していけるという矢先でした。全員が辞めてしまったんです。当時の私は日本のやり方を押し付けてしまっていて、それが良いことだと思っていました。でも、カンボジアにはカンボジアの働き方があって……。そのとき、カンボジアの良さを潰してまで、経済発展をする必要はあるのだろうかと気がつきました。
もちろんそうすることで、かごの種類や数が足りなかったり、作りすぎてしまうということも頻繁にあります。特に農業期は極端に少ないですが、彼らの心の豊かさや、家族との時間は大切にしていたいなと思うんです。」
目に見える村の変化
現地の人が自らお金を生み出せる雇用をつくりたいとスタートしたmoilyの取り組み。最近では、少しずつ変化が見られるようになったそう。
池宮さん:「もともとはコックトラーチ村は、本当に生活が厳しい状態でしたが、今はかなり改善されてきましたね。統計を取っているわけではありませんが、目に見えて変化を実感しています。
村の人たちは銀行に預けず、金に変えるんです。いざというときに売るんだそう。お家の屋根が増えている人もいたり。出稼ぎに行かなくなった人もいます。moilyをきっかけに、「かごを覚えよう!」という人も現れてくれました。」
今ではこんなにも職人が増えました。
moilyがコットラーチ村と関わるようになってから、かご編みを覚えたというsetさん。
池宮さん:「ご縁があって、お医者さんに派遣で行ってもらったりもしています。診察してもらうことで、身体の具合が良くなった人もいます。私はつなぐことしかできませんが、それで新しい知識を得てもらえたらなぁと。その村の問題って外部の人が解決するのではなく、やっぱりその村の人たちが「なんとか解決しなきゃ」って、自分たちで変えていくものだと思うんです。そのきっかけとなる部分はつくれてはいるかなと思いますね。」
貧しさへの同情や支援をPRして
商品を売ることは絶対にしたくない
最後に池宮さんの今後の展望を教えていただきました。
池宮さん:「良く社会貢献しててえらいねとか言われるんですけど、全然そんなつもりはなくて。世界中を旅していたとき、たくさんの人たちに助けてもらいました。色んな国で貧困状況をみて、私ができることで何か恩返しがしたいなと、ただそれだけなんです。カンボジアだけじゃなくて、色んな国や村で、その土地の良さを生かしたものづくりや、ものづくりじゃなくても収入源や雇用をつくっていきたいですね。それを「やらなきゃ!」ではなくて、楽しくおしゃれに。いつの間にかみんなで解決できたら良いねというスタンスです。
貧しさへの同情や支援をPRして商品を売ることは絶対にしたくないと思っています。日本のライフスタイルショップや、百貨店でも、国産のものと同じように取り扱ってもらえるように。ですので、絶対に妥協はしません。一流のものをつくって、正当に判断してもらう。でも裏では、社会問題が自然と解決している。そういう取り組みを広げていきたいですね。」
作り手の気持ちや想いは、使い手にも伝わるものです。moilyのかごを手にしたとき、カンボジアで働く職人さんの丁寧な仕事ぶりが伝わってきて、温かな気持ちになりました。「寄付で売ることはしたくない」「絶対に妥協したくない」という池宮さんの言葉通り、ずっと使いたくなる美しいかごです。今年の4月には、待望の実店舗もオープンしました。ぜひ実際に手にとって、かごの質感、手仕事の美しさを体感していただきたいです。