【インタビュー】映画『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』。身近な共感がたっぷり詰まった新感覚のオフィスムービー!

掲載日:2022.12.09
【インタビュー】映画『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』。身近な共感がたっぷり詰まった新感覚のオフィスムービー!

初の劇場映画『14歳の栞』がロングランヒットを記録した、竹林亮監督の2作目『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』が公開中!
小さなオフィスで起きた、“社員全員タイムループ”を軸にさまざまな人間模様を描いた今作。物語が生まれたきっかけから撮影現場のエピソードまで、竹林亮監督と脚本を務めた夏生さえりさんにインタビューしてきました!

あらすじ
月曜日の朝、プレゼン資料の準備で忙しい吉川朱海は、後輩二人から「僕たち、同じ一週間を繰り返しています」と報告を受ける。なんと、社員全員が同じ一週間をタイムループしていたのだ。社員達の様々な思惑が交錯しながら、繰り返される一週間。しかし、タイムループ脱出の鍵を握る肝心の部長は、いつまで経っても気付かない。吉川を含む社員達は一致団結し、タイムループ脱出に向けて様々な方法で部長にアプローチするが…。

―“タイムリープ”という現実ではあり得ない設定なのに、登場人物達の人間模様や日常のリアルに共感が止まらない不思議な作品でした!今作が生まれたキッカケを教えてください。

夏生さん:「私たちの上司が、いつも同じ内容のツイートをしていたことがキッカケなんです。“今日もめちゃめちゃ仕事するぞ!”という投稿内容なのですが、「あれ?この内容、前も見たことあるような……」という既視感があって。その上司の投稿をスクショして同僚に送ったら、私と同じ反応をしたんです。その時に同僚と、“もしかしたら、上司はタイムリープをしていて、私たちも巻き込まれていたらどうする!?”という話になったことが始まりです。」

―夏生さんの体験がキッカケだったんですね!

竹林さん:「そうです、彼女の実話です(笑)」
夏生さん:「怖いですよね(笑)」

―日常で起きたことがキッカケだからこそ、共感する部分も多かったのかもしれません。物語の展開や結末はどのように決まっていったのでしょうか?

竹林さん:「タイムループから抜け出すために頑張る、という全体の展開が決まった時、結末はこうあるべきだろうな、という伝えたいメッセージなどは割とスムーズに決まりました。でもその結末で伝えたい想いを表現する方法がなかなか決まらず、チーム内で議論しました。“タイムループ”というカチッと設定がある分、説得力のある方法でメッセージを表現したかったんです。」

―今作で伝えたかった想いを教えてください。

竹林さん:「今作の主人公は、今日が何曜日か分からないような目まぐるしい日々を過ごしています。そして、“今”ではない別の未来を目指して、今という時間を疎かにしてしまっている状態。僕自身もそういう時期があって……。そういう状態の人々が、「“今”という時間を疎かにして本当に良いのか?」と考えるキッカケになるといいなと思います。今という時間を過ごしながら未来に向かっていると思うので、今の暮らしや人としっかり向き合わないまま、未来を見すぎながら歩くと、どこかでつまづいてしまう。そんなメッセージも含んでいます。」

―体験がテーマに編み込まれているんですね。

竹林さん:「そうですね。10年以上社会人をやっていると、後悔する出来事も多い。忙しくて、主人公のような状態になっていた頃の自分を思い返しながら、つくりました。」

夏生さん:「色んな夢の目指し方があると思うので、この物語で描いていることが正解ではありません。上を目指すことは悪いことではないし、やりたい事をやらずに終わることも悪いことじゃない。どちらの道を選ぶにしろ、“今”の時間を自分はどう生きていたいか、目の前にいる人と自分がどう向き合っているか、など今の自分の状況を立ち止まって考えられるキッカケになったらいいなと思います。」

―タイムループが続くからこそ生まれる、登場人物達の掛け合いや演出もおもしろかったです。少しずつ未来が変わっていく様子を表現する上で、こだわった点などはありますか?

竹林さん:「映像面では、カメラワークが複雑にならないように意識しました。一週間という膨大な時間の中から一部のシチュエーションを切り取って、その一部が繰り返しているように、分かりやすく伝えなければいけない。なので、カメラワークはパターン化して、少しずつ崩していくような撮り方をしていきました。」

夏生さん:「脚本面では、 “このシーンあったな”と思わせるような言葉使いに気を配ったりしました。あと、一週間のどのシーンを繰り返せばいいか判断することも難しかったです。一週間を全部見せずに、“一週間”として観ていただく工夫や方法はすごくこだわりました。」

―キャストの方々に指示をしたことはありますか?

竹林さん:「日常の延長線上でタイムループが起きていることを表現したかったので、演技にもリアリティをもたせたいと思っていました。そのためには、登場人物達に対して「こういう人、本当にいそう」と感じさせることが一番説得力があります。なので、キャストの皆さんには繰り返すことでどんどんコミカルな演技になっていっても、日常的なリアリティを意識してほしいことは最初に伝えました。あとは皆さん器用な方々ばかりだったので、上手く解釈して演じていただきました。」

―上司役・マキタスポーツさんの「合点承知の助!」「いけいけどんどん!」など受け答えにもリアリティを感じました(笑)

夏生さん:「そういう誰も言わないだろうというギャグも色々入れています(笑)。でも、マキタスポーツさん自身も色々アドリブを入れてくださって。劇中でグッとする台詞があるのですが、実はマキタスポーツさんのアドリブで、私も監督も書いていないということもありました(笑)。」

―撮影現場も賑やかそうです!

竹林さん:「そうですね!現場はすごく和やかな雰囲気でした。ただ、今作は一週間で撮りきっていて、結構ハードな撮影スケジュールだったんです。なので、キャストの皆さんを含め、気を抜くと眠気が襲ってくるような現場でした(笑)」

夏生さん:「今日が何曜日なのか分からない感覚を、キャストの皆さんが一番味わっているかもしれませんね。」

竹林さん:「月曜日のシーンを撮り続けている時が一番すごかったかも。劇中で何十回もループしている疲労感が、キャスト自身からも滲み出ていたかもしれません(笑)」

―コピーライターとしてもご活躍している、夏生さんならではの言葉選びも印象的でした。

夏生さん:「主人公・吉川の「未来のことばかり考えて、今を捨てるのはやめる」という台詞には、自分が大事にしていきたいことを込めました。吉川と同じく、私も忙しいと今を見られなくなってしまいます。だけど、“今”が続いている先にしか、未来はない。そんなメッセージが伝わるといいなと思います。」

―私もその台詞、グッときました。

竹林さん:「さえりさんは“ロジックの鬼”なんですよ(笑)最初から色々な台詞を積み上げて、ここぞというシーンで伝えたい台詞をしっかり入れてくる。そのロジックは彼女しか分からないので、本当にすごいと思います。」

―今作が観る人にとってどんな存在になってほしいですか?

夏生さん:「映画のポスターに、“また月曜日がやってくる”というコピーを入れています。ループするような日々を過ごしている人からすると、月曜日がやってくることに対して、すごく憂鬱な気持ちになってしまうけれど、そのループを抜け出す頃には、“また月曜日がやってくるから、どう過ごそうかな!”と前向きな気持ちで、月曜日と向き合えるようになっていると思います。この映画を観たからといって、劇的に人生が変わるわけではないけれど、ずっと続いていく日常を“月曜日”という区切りのたびに映画を思い出したりして、立ち止まるキッカケになれたらいいなと思います。」

竹林さん:「常々、色んな人と関係を築きながら生活していると思うんですが、普段接している人でも、想像力を働かせないと、共に上手くやっていけない時があります。それなのに、忙しくなるほど、想像力を働かせたり、人に関心を持つことが難しくなってしまう。今作を観て、人に関心を持つことでどんな変化が起こるのかを知ることで、普段とは違うスイッチが入ればいいなと思うし、その変化を80分のなかで体験できると思います。忙しいと思う人でも、映画館に足を運んでいただけたら、悪いようにはしないんじゃないかなと思います(笑)」

“社員全員がタイムループ”という斬新な設定を軸に、タイムループを抜けだそうとする社員達の奮闘劇をコミカルに描いた今作。物語が生まれたキッカケが、夏生さん自身の体験談にあったことには驚きましたが、“だから、こんなにも身近に感じるのか…”と今作に感じた親近感の理由に納得したインタビューでした。

今作の主人公のように、【“今”と向き合えないほど忙しい日々を過ごしている】という状態は、渦中の自分自身ほど一番気が付かないものです。最近の自分のスケジュール帳を見直して、休みなく、かつ同じルーティーンで過ごしているように感じた人は、すぐさまこの映画を観に行ってください。“プチタイムループ”から脱出するヒントに出会えるはずです。

スポット詳細

【映画名】
MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない
https://mondays-cinema.com/
公開中
※刈谷日劇では12/16(金)より上映予定

1989年生まれ。名古屋発女性情報誌の編集長を経て、フリーランスに転向。グルメを中心とした店舗取材をはじめ、沖縄やバリ島、ハワイなど国内外の旅ロケ、アーティスト・俳優のインタビューなど幅広い業務を経験。現在はファッションWEBマガジン・雑誌の編集ディレクターを務めるほか、ライターとしてWEBメディアで取材記事を作成、ライター講師などを担当。猫と旅とビールが好き。

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