世界中のどこを探しても見つからないような額縁店を。納屋橋に根付く、老舗『高山額縁店』|名古屋

2019.3.7
世界に一つ 額縁店

名古屋市中村区・伏見の西、納屋橋の川沿いに店舗をかまえる『高山額縁店』。創業73年を超える老舗の額縁店です。1階が額縁店、2階がギャラリー、その横には隠れ家的カフェバー「TWILLO(トワイロ)」を併設しています。

 

今回は、3代目のオーナー高山大資さんに創業秘話、額縁の選び方や魅力、納屋橋についてなどさまざまなお話を伺ってきました。

 


外観

 

高山額縁店があるのは、納屋橋の川沿い。東山線伏見駅より徒歩約7分ほどの場所です。

 

世界に一つ 額縁店

 

店内は、海外のギャラリーに訪れたかのような、空間が広がります。さまざまな額縁が店頭には並び、照明やインテリアにも額縁があしらわれています。

 

 

高山額縁店の誕生

 

高山大資 オーナー3代目のオーナー高山大資さん。

 

オーナーの高山大資さんは、3代目。祖父である高山常隆氏が納屋橋の地に額縁店を創業して70年以上が経ちます。最初に創業当時のエピソードをお聞きしました。

 

高山さん:「僕の祖父には若い頃夢があって、東京で弁護士を目指していたんです。しかし、第二次世界大戦によって徴兵を余儀なくされました。戦争が終わって、名古屋に戻ってきた祖父は、お兄さんが跡を継いでいた東区にある「高山ガクブチ」を手伝うようになったんです。

 

しかし、「これ以上兄に世話になるわけにはいかない」ということで、裸一貫で祖父は独立しました。独立するにあたって、当初は広小路通で探していたそうなんですが、20歳そこそこの若者に、貸してくれる人なんていません。

 

そんな中見つかった物件が、納屋橋のこの場所です。もともとは雑居スペースだった5坪ほどの場所を間借りさせていただき、高山額縁店が誕生しました。」

 

 

 

時代の移り変わりとともに

 

高山額縁店 創業
創業者・高山常隆氏と創業当時の写真。

 


高山さん:「戦後は物資がなく、家すらない方も多くいて、額縁なんて飾る余裕なんてないはずなんです。ところが、たくさんの人が亡くなったことで、英霊として帰ってきた方々を奉るための額縁が必要でした。当時は、英霊を奉るための額縁が需要のほとんどを占めていたようです。

 

その後、経営は軌道に乗っていきました。1960年代には高度経済成長期に突入し、マイホームブームが訪れます。人々の生活にゆとりが生まれ、絵画を買うことが心のゆとりの象徴でもあったんです。その頃の額縁は家の中に飾る絵画が大半でした。職人さんも切磋琢磨し合いながら腕を磨き、額縁生産業を引っ張っていきました。

 

バブル時代になると、絵画は投資目的になり、額縁の生産は海外に渡っていき職人さんたちはどんどん廃業をしてしまいます。バブルが崩壊すると、絵画は紙切れ同然。その頃には、職人さんを育ててこなかった額縁業界は、つくる人がいない状態でした。

 

この会社も、祖父から受け継いだときに、数字だけを見たらやっていける状態ではありませんでした。僕たちももうやめようか。そんな話しがでていましたが、周りの同業者がどんどんは廃業をしていくので、「やめないで」というお客様からの声を多くいただいたんですね。

 

そこまで落ちた会社だったので、もう一度ゼロからやり直そうと思い、新しい形を目指して、全面改築をすることにしました。」

 

 

世界中どこを探してもないような額縁屋さん

 

額縁 名古屋

 

高山額縁店 店内

 

高山さん:「僕が目指したのは、世界中どこを探しても見つからないような、額縁屋さん。それまでは、本当に昔ながらの額縁屋さんだったんです。埃が被っているものは一掃しました。形のないものから、完成品まで持っていくオーダーフレームの額縁店に180度転換をしました。

 

昔なじみのお客様には、本当に叱られましたよ。伝統を怖そうとしてるなとか、革命を起こそうとしてる。なんて言われたんですが、本当にその通りだったですよね。でも、もう僕は何も怖くなかったんです。祖父と働いてきたんだからこそ、今までやってこなかったことをやってみよう。一から勉強するつもりで、お客様と同じくらいのレベルでスキルアップしていく。やれることをすべてして、ダメなら潔く諦めようって気持ちでした。」

 

 

オーダーメイド 額縁店内には圧倒的数のフレームが並びます。

 


高山さん:「会社のウェブサイトも自分でつくりました。とにかく納得できるものをつくりたかったので1年かかりましたね。そこから、2年くらい経ってようやく反応がでてくるようになったんです。

 

もともとは60代〜70代の方が大半でしたが、今ではさまざまな世代の方に来店していただけるようになりました。また、高山額縁店へ行ったらすてきに仕上げてくれるじゃないかって、思いを持ってご来店いただくことも多くなりましたね。」

 

 

ここの場所だから、やってみたいと思えるギャラリーを

 

納屋橋 ギャラリー

 

高山額縁店 ギャラリー


高山額縁店の2Fはアートギャラリーになっています。そのことについてもお伺いしました。

 

高山さん:「僕はここを少しでも夢やロマンを感じさせる場所。そういうギャラリーを納屋橋につくりたいなって、思ったんですね。なので、ここにギャラリーをつくったときには、僕らが好きな作家さんであること、集客をぼくらに委ねないことを条件にしました。「ここってどれくらい集客あるの?」って聞かれるんですが、ぼくらは彼らの素性を知らないのに、中途半端なことは言えません。集客だけならここじゃなくていいと思うんです。

 

僕たちのギャラリーにはルールがありません。作家さんたちの好きなようにしていただけますし、マージンもとりません。なので作家さんが頑張っただけ利益になります。そのかわりに販売のお手伝いもしませんが、僕らは精一杯の応援はします。額縁を見に来られる方はほとんどが美術愛好家の方なので、買いに来てくださった方にはお声がけもします。最近では、僕らと肌の合う作家さんたちが増えてきて、この場所でやりたいと言ってくださる方も多くなりました。アートってどうしても敷居の高いイメージですが、気軽に来ていただける場所にしていきたいですね。」

 

 

額縁を選ぶたのしさを知っていただきたい

 

高山額縁店 額縁

 

額縁の選び方やコツってありますか?

 

高山さん:「額縁は作品によって全部違いますし、お客様の好みもあります。でも、楽しみ方はいくつもあるんですよ。芸術作品の一部として捉えることもできるけど、できれば、家具とかインテリアとしての立ち位置として確立していただきたいなって思っています。

 

例えば、結婚して新居の家具を選びに行くと、お互いがいろんな意見をだし合っていくと思うんです。長く使うものだからこそ、家具選びだけでも、すごく慎重に選んでいくんですよね。額縁も同じように、なんでもいいではなく、インテリアの一部として一歩入り込んでいただけるとうれしいですね。」

 

 

納屋橋 額縁

 

高山さん:「よくお客様から「お任せで」って言われるのですが、「何か嫌いな色とかありますか?」って聞くと、すごくたくさんでてきて、皆さん嫌いなものはハッキリしてるんです。じゃあ徹底的に嫌いなものを並べてくださいっていうと、「こういう風にしてほしい」「ああいうのがいい」という意見がでて、初めて僕らと足並みがそろうんです。それがいいんですよね。僕らも、お客様に納得していただけるものを買っていただきたいし、そういうのを飾っていただきたいんです。

 

額縁って一回つくると落ちない限りは、50年、60年は普通に持ちます。もしその方にお子さんが生まれて、そのお子さんが結婚されて子どもが生まれても家の中にあるわけです。なので、”なんでもいい”ではなく、ずっとおうちの中に飾るものだからこそ、選ぶ楽しさを知っていただきたいですね。」

 

 

カフェバー「TWILLO(トワイロ)」

 

トワイロ

 

併設しているカフェバー「TWILLO(トワイロ)」。額縁を選んだあとは、ここでくつろいで行かれる方も多いのだそう。額縁店の中から、この空間に入ると異世界に入ったような感覚になり、想像以上に感動しますよ。

 

お昼の12時から営業されているので、額縁店と合わせて訪れてみてくださいね。

 


【納屋橋TWILO カブトビール名古屋支店(ナヤバシトワイロ)】
営業時間:12:00〜23:00(LOフード22:00、ドリンク22:30)
定休日 :日曜、祝日
https://www.facebook.com/納屋橋TWILO-998687143617833/

 

 

 

生まれ育ったこの場所に少しでも恩返しを

 

納屋橋

 

最後に、納屋橋のこと今後のことについてお聞きしました。

 

高山さん:「最近では、納屋橋っておしゃれな街になりましたね。なんて言われることが多いんですが、普通の街になってきたんですよね。この辺りは昔から、風俗街で、ラブホテルも多い、みんなネオンしかみてないので、治安の悪い街という印象をもたれていたんです。すごくハンディのある街でしたね。

 

僕は高校時代をアメリカで過ごしてきたんですが、額縁屋のせがれとしては、アーティストたちが集まる街として知られているニューヨークのSOHOにも行きました。でも、実際に行ってみるとギャラリーはいっぱいあるけど、街としては何もないんですよね。表向きはビルだし、殺風景。でも、裏通りにはいれば、独特な雰囲気をかもし出していて、当時は覗き小屋なんかもあったんです。」

 

なやばし

 

カブトビール
納屋橋で開催されたイベントの様子


高山さん:「アートってエロチックなものでもあります。だからこそカオスな街・納屋橋にある額縁屋さんもかっこいいんじゃないかって思うようになりました。ハンディがある中でも、ご近所づきあいをしていて、風俗へ呼びかけるお兄さんたちは、街の門番的な役割をしています。あの店なくなればいいのにな、なんて気持ちは誰もないんです。

 

みんな、高山さんのお店大きくなったね。僕らがバーに行ってもいいの?とか、そういう昔ながらのご近所づきあいも構築されていて、こういう街はとても珍しいんです。

 

最近ではイベントも多く開催されるようになり、納屋橋が活性化されるようになってきました。僕らはこれからも、納屋橋にある額縁屋として歴史的な背景も大切にしながら、生まれ育ったこの場所に少しでも恩返しをしていきたいと思っています。」

 

 

高山額縁店


先日も旅行先で購入した絵画の額縁を高山さんにお願いをしたら、とってもすてきに仕上げていただきました。「台紙の色は何色にしますか?」と聞かれ、台紙=白というイメージしか持っていなかったので台紙の色一つでも絵の印象が変わることにとても感動しました。

 

気づけば、ここ最近は海外旅行に行ったら絵画を一つ思い出に買うのですが、すてきな額縁に納めたいから絵画が欲しいという気持ちに変わっていることに気づきました。それくらい、高山額縁店のつくる額縁もオーナーの高山さんも魅力的です。

 

ぜひ、世界に一つだけの額縁店へ訪れてみてくださいね。

 

 

【高山額縁】
住所  :名古屋市中村区 名駅南1丁目1-17
営業時間:9:00〜19:00
定休日 :日曜日
電話  :0525417813
http://nayabashi-gakubuchi.jp/smarts/index/