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公園と商業施設が一体となった名古屋市・栄の「RAYARD Hisaya-odori Park(レイヤード ヒサヤオオドオリパーク)」。その北端のエリア「ゾーン1」は天気のいい日は芝生で思い思いにくつろぐ人々でにぎわう場所。その最北端、公園全体のつきあたりに「天狼院書店」があります。
名古屋では「名前を聞くのが初めて」という方もいるかと思いますが、従来の書店の型にはまらないコンセプトの書店として、全国的に熱いファンを持つお店です。そんなユニークな書店、天狼院書店の魅力を探ってみましょう。
本だけでなく、その先にある「体験」まで提供
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目前に広がる公園とテレビ塔を見晴らすカフェのテラス席。お気に入りの本とともに長居してしまいそう。
天狼院書店(以下天狼院)は、2013年東京池袋にオープン以来、福岡・京都などにも全国展開し、名古屋は9店舗目。
名古屋店長の松下さんによると、「IPS細胞のように進化し続けてきた」という天狼院ですが、その核となってきたテーマが「READING LIFE」という新しいライフスタイル。
本を買うだけではなく、ゆったりくつろげる併設のカフェ、著者によるイベントや、「フォト部」「デザイン部」といった部活、さまざまなスキルを学べるセミナーなど……。本を読んだその先にある「体験」まで提供していくというものです。
そして、その体験一つひとつに、天狼院らしいこだわりが溢れているのもポイント。一見、おしゃれなブックカフェといった雰囲気の店舗に、さまざまな仕掛けが隠されているんです。そんな見つけたら思わずニヤリとしてしまいそうな「こだわりポイント」をいくつかご紹介します。
こだわりポイント1 「秘本」がある
店内に入ってすぐの平積みと棚に置かれた、ミステリアスな黒いカバーに包まれた本。いったいなんだろうと思わず手にとってしまいます。これは「秘本」といって、天狼院店主の三浦崇典氏が人に教えたくないほどおもしろいと思った本を
・タイトル秘密です
・返品できません
・他の人には教えないでください
という条件で販売しているもの。本との出会い方にも新たなエンターテイメント性を持たせようという店主のユニークなアイデアです。ちなみに現在の「秘本」は10代目。6代目までの秘本は「ご開帳」(本のネタバレ)がされていますので、どんな本がセレクトされているのか、タイトルを見るだけでもワクワクします。
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秘本はすべて店主のセレクトですが、番外編としてあの糸井重里氏が選んだ秘本も。絶版だった名作を復活させ、30時間で1,000冊が売れたのだとか。こちらは「ご開帳」済み。
こだわりポイント2 「New Face」と名古屋本
本の品揃えは、一般雑誌、書籍などのほかに写真や、カメラ、デザインといったクリエイター向けの棚が充実しているのも、カルチャーに強い天狼院らしいポイントですが、特にビジネス書好きにチェックしてほしいのが店舗左のイベントスペースの壁に飾られたNew Faceの棚。
こちらはビジネス雑誌(週間ダイヤモンド、日経ビジネス)で連載も持つ店主の三浦氏が、出版社との定期的なミーティングを通して選書した新刊ビジネス書の棚です。ここに来れば、いまもっとも読むべきビジネス書のニューフェイスに出会えます。信頼できる目でセレクトされた本を一覧でき、直接手にとれるのはリアル書店だからこそ味わえる喜びですね。
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New Faceは新刊入荷の度に、リアルタイムで更新されています。「ビジネス書はいろいろありすぎて何を読んだらいいかわからない」という人はぜひこの棚をチェック。
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ライターでもある店主・三浦崇典氏の著作「殺し屋のマーケティング」
また名古屋店独自の棚として、歴史と戦国武将、名古屋カルチャーや郷土史などの名古屋関連本の棚も充実しています。
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公園に遊びにくるお子さんのための絵本・児童書の棚も。お気に入りは見つかったかな?
こだわりポイント3 こたつ席がある
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書店であることを忘れて、自分の家かというくらいくつろいでしまいそう。
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開放的なテラス席。愛犬がいる私としてはワンコOKなのもうれしいポイント!
併設のカフェスペースは、ワンドリンクのオーダーで席を利用できます。Wi-Fi、電源もあるので、セカンドオフィスとしての利用も可能。開放的な屋外のテラスも最高ですが、ぜひ体験してもらいたいのがカフェの一番奥のスペース。なんと「こたつ席」になってます。
お茶を飲みながらこたつでぬくぬくとお気に入りの本を読めるなんて、これからの季節最高のシチュエーションではないでしょうか?ちなみに夏場は「冷やしこたつ(!)」になるそうです。
こだわりポイント4 メニューにストーリーがある
ドリンクだけでなく、フードも充実している天狼院のカフェメニュー。その中には、一度聞いたら忘れられないネーミングのメニューがあります。
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元彼が好きだったバターチキンカレー800円。マイルドで食べやすく、飽きのこない味。
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やりすぎ豚汁800円。お好みでゆずコショウを加えて。塩味のおにぎりとともに、心も体もほっこり。
「元彼が好きだったバターチキンカレー」(通称「元カレー」)は、スタッフの女性が元彼の胃袋をつかむために作ったというレシピを採用したもの。また「やりすぎ豚汁」はメニュー開発の際に、具を大量に入れるスタッフを見て、「やりすぎじゃない?」と声をかけたのが名前の由来という具だくさんの豚汁。
おいしく味わいながら、それぞれのメニューが生まれたストーリーに思いを馳せてみるというのも楽しいですね。
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体にすーっと入りしみ渡る、甘酸っぱい果実そのものの味。里山十帖のみかんジュース/りんごジュース 480円
ドリンクメニューのおすすめは、「里山十帖」のオーガニックのみかんジュースとりんごジュース。「里山十帖」は、雑誌「自遊人」を発行する株式会社「自遊人」が新潟魚沼にある古い温泉旅館をリノベーション、オーガニック&デトックスの至極の宿として生まれ変わらせたもの。天狼院の「旅部」でも過去に2度訪れ、貸切りイベントを行っているのだそうです。
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ランチメニューもあり。テイクアウトも可能です。
こだわりポイント5 著者やその道のプロによるイベント・セミナーがある
店舗左手奥のイベントスペースでは、本を読んだ知識を、実践的に学べるさまざまなイベント・ゼミを開催。カメラやライティング、デザイン、動画、ブランディング、マーケティングや時間管理術などのテーマを、関連本の著者や、その道の第一線で活躍するプロから直接学べます。
例えば「セルフブランディング全力授業」ゼミを担当する講師は、俳優・モデル・アイドル撮影の第一人者である写真家、青山裕企氏。ちなみに青山氏は偶然にも名古屋出身ということで、親近感が湧きますね。
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イベントスペースでは191インチのスクリーンを活用し、店舗をつないで行うゼミも。
また名古屋店独自のイベント企画として、公園スペースを活用した青空の下での読書会や撮影会なども開催されるそうです。
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11月7日(土)には、「青空ファナティック読書会」を初開催。店舗前の芝生広場で大好きな本について語りあう会です。
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シューティング・ノート 3,200円(税別)
ライティングとカメラ関連のゼミが充実している天狼院ですが、カメラ好きのためのノートも販売しています。天狼院では「海の出版社」と名づけた出版事業も行っており、そこから出版された「シューティングノート」は自分史上最高の1枚を撮るためのデータと振り返りが記せるノート。水平開き、書きやすい紙にこだわるなど、文具好きも気になる一冊です。
楽しみ方はあなた次第、
「人生が変わる書店」
今回は、ユニークな天狼院のこだわりポイントをご紹介しました。
お気に入りの1冊を手に入れる、カフェでゆったりくつろぐ、ゼミやイベントを体験し、仲間とつながる……‥自分次第で、いろいろな楽しみ方、活用ができるのが天狼院の魅力です。
「大人が真剣に遊べる場を作りたいですね。ここで人生が変わるくらいの体験をしていただきたいです」と名古屋店長の松下さんが語ってらっしゃいました。
本から始まる「READING LIFE」の楽しみ、ぜひ体験してみてください。