目次
2021年1月16日、金山総合駅から徒歩約7分のところにある沢上商店町の中にオープンした本屋さん、「TOUTEN BOOKSTORE(トウテンブックストア)」。
文章に使われる読点(、)は私たちの暮らしにも馴染み深く、文章の切れ目やアクセントに使われ、さりげないけどなくてはならない存在です。
そうした読点(、)のような本屋さんになりたいと話す、オーナーの古賀 詩穂子さんにお店を開いた背景やこだわり、今後の展望についてお伺いしました。
TOUTEN BOOKSTOREとは
TOUTEN BOOKSTOREは金山総合駅の南口から大津通りを歩くこと約7分、右手に現れる沢上商店町の中程に位置する本屋さんです。
ガラスとサッシの入り口には「BOOK、COFFEE、BEER、 TOUTEN BOOKSOTRE」と書かれており、読点(、)へのこだわりが感じられる出入り口。
ガラス戸のため中の様子が伺えて入りやすいのが特徴です。
お店に入ると、まだ開店して間もないためか木の心地よい香りが漂います。
自然の光が差し込み明るい店内は縦長で奥に長く、整然と並ぶ書籍が壁一面に。店の一番奥の絵本の部屋には児童書や絵本が並ぶ棚とベンチ、小さなテーブルがありコーヒーやクッキーなどのカフェメニューをゆっくり味わうことも可能です。
雑誌やコミック、ビジネス書や文学など幅広い書籍を取り揃えている1階の店舗に加え、4月以降は2階にワークショップやギャラリー、カフェスペースもオープン予定とのこと。
地元の人だけでなく、InstagramやTwitterなどのSNSをきっかけに若い人も多く訪れる町の本屋さんTOUTEN BOOKSTOREには、どのような思いやこだわりが込められているのでしょうか。
TOUTEN BOOKSTOREを開くまで。
– このお店をオープンするまでの経緯について教えて下さい。
古賀さん:「大学を卒業してから出版取次の企業へ入社し、そこで本屋さんを訪れたりお店の人とふれあうなかで次第に本屋さんを開きたいという気持ちが芽生えました。本屋さんには『プライベートな空間』と『パブリックな空間』の両面があり、いつ来ても受け入れてくれる場所だなと感じる一方で、そういう場所は本屋さん以外にはあまりないなと感じました。
例えば公園は場所や時間によっては安全な場所ではないし、スーパーやコンビニのイートインスペースも時間や人の流れが早くてゆっくり休まることができないな、と。
本屋さんはそうした場所とはちょっと違って、自分の思考を深める、ちゃんと考えられる場所だなと感じたのが大きな理由ですね。でも本屋さんという業態は毎日1軒のペースで減っていて、その中でもあった方が良いと思うなら、自分でやろうかなと思いました。」
– 出版取次の会社を辞めてすぐに開店に向けて動いたのでしょうか?
古賀さん:「いえ、出版取次の仕事を辞めてから3年ほど東京で仕事をしていました。取次の仕事とは別に本屋に関するイベントを開催することがあり、そこで新しい本屋を開業し運営していた会社の社長と知り合って。東京の会社で新事業をはじめるから「来てみない?」とお声がけいただいたのです。東京は出版社の9割以上があることもあり、出版の聖地でもあるので東京に行ったら絶対に勉強になるなぁと考えていたところでした。」
– なるほど。その後東京でお仕事をし、名古屋へ戻ってこられたきっかけはどういものでしょうか?
古賀さん:「私自身がもともと名古屋近くの出身ということや、当時付き合っていた人も名古屋で、結婚のタイミングで名古屋へ戻ってきました。それがちょうど1年前(2020年3月)くらいです。」
– それからすぐに本屋さんの開店に向けて動き出したのでしょうか。
古賀さん:「いえ、本屋さんを開くのはもう少し後でもいいと思っていました。ただ、物件探しをしているときにちょうどこの物件に出会って。ここは築50年くらいの建物をリノベーションしているのですが、もともと金山で本屋さんを開きたいという思いがあったのと、広さもあってお店を開くのにイメージが描きやすかったのが大きいですね。物件は水物というのもあって、ビビっときたら決めた方がいいと思い決断しました。」
企画から出版まで自分で行った『読点magazine、』
– 名古屋に戻ってからTOUTEN BOOKSTOREを開店されるまでに『読点magazine、』というフリーペーパーも制作されたのですね。
古賀さん:「はい。本屋さんを立ち上げるために自分のなかの思いや情報をアウトプットするために創りました。このマガジンの中では、自分が多くの人に知ってほしい本屋のあれこれを伝えられるような企画を組んでいます。」
−『あの本屋の経営どうなっているの?』や『本とかわいい人』など、気になる企画が多くありました。
古賀さん:「本屋さんをはじめ、出版はだいたい利益が薄い仕組みの話が問題となりがちなのですが、その仕組みの中で書店員がどういう棚作りをしているのかはそれぞれ違うんです。本に関しては同じ商品、同じ値段、同じ発売日で地域によって大差はありません。ただ、そのなかで1冊1冊をお店のどこに置くのかは書店員の判断ですし、書店ごとに違いが出るのですごく奥深いと思います。
あとは本屋さんが日々の営業をどのように行っているのか、仕事に対する思いなどを聞きたくてマガジンを作ったというのもあります。書店員というのはある種職人だと思っています。
『本とかわいい人』(※)は、私自身がいろんな分野のものを組み合わせて考えることが好きで、本をファッションで推すのも読書の入り口になるのかなと思ったのです。例えばモデルさんのネイルの色と本の表紙のカラーが合うから、と選ぶ書店員さんもいて、人によって選書の基準がそれぞれでとても面白いですよ。」
※本とかわいい人:本屋さんにかわいい人を連れていき、かわいい人に合ったスタイルの本を書店員さんい選書してもらう企画
– いち消費者としてはなかなか考えつかない視点ですね。
古賀さん:「そうかもしれません。正直なところ、本屋に行くきっかけになったり本を読むきっかけになれば何でもいいかなと思うこともあります(笑)。そうしたときに『本とかわいい人』のようなスナップは親しみもあるし、そこに本というツールを入れ込みたいなと思っいました。」
『読点magazine、』はWEB上でも読むことができるので、ぜひチェックしてみてくださいね。
▼『読点magazine、』はこちら