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名古屋市にほど近い場所、春日井市勝川町にてレトロでヴィンテージなオリジナルオーダー家具を製作、インテリアをセレクトしているインテリアショップ「TRIMSO(トリムソウ)」。
2009年のオープン以来、着実にお店のファンを増やし、ここ愛知県でインテリアの楽しみ方や魅力を伝え続けています。今回は、店主である家久ゆう子さんに、TRIMSOの誕生秘話やインテリアへの想い、魅力についてお伺いしてきました。
愛知県は主要都市なのにも関わらず、
インテリアショップがとても少ない
TRIMSO店主・家久ゆう子さん
広島県出身の家久さん。東京のインテリアショップで働いたのち、結婚を機にご主人の地元であるここ、愛知県に引っ越してきたそうです。
家久さん:「結婚をすると、新たに就職先を探すのは難しいですし、主人が家具をつくることができたので、自分の職場をつくるために、インテリアショップを始めたのが最初のきっかけです。
愛知県は主要都市なのにも関わらず、インテリアショップがとても少ないんですよね。街はこんなにも大きいのに、「これは何なんだ」って、とても驚きました。インテリアショップの競合相手が沢山いたら大変ですが、競合はいないからポテンシャルのある都市だなと感じました。
また、勤め人だったときのことです。びっくりするくらい欲しいと思えるインテリアがないんですよね。展示会に行けば、ソファ、キッチンボード、すごく種類はあるのに、「何でここはこうじゃないんだろ」「何でこういうのがないんだろうね」っていうのをいつもスタッフみんなで話していたんです。だから、仕入れだけのインテリアショップではお客様の望みを叶えることができない。
お客さんに「ここもう少しこうならないの?」って言われて、つくれなければ、話はそこで終わり。話は膨らまないし、その人の要望も叶えてあげられない。だけど、家具をつくることができれば、お客様の要望を叶えてあげられるし、ここの店でしか買えないものになる。そして、私たちは家具を作ることができる、そう思えたときにお店をやってもいいかな?って思いましたね。」
インテリアショップを始めるきっかけとなった
美容院との出会い。
大型のイカ釣り漁船電球¥2,800(税別)
TRIMSOは大須で開店する前、美容院の一室を間借りして、美容院に来るお客さんに家具を見てもらうかたちではじめたそうです。
家久さん:「お店を始める前のことです。近所に看板も出していないけど、見るからに素敵な美容院を見つけました。そこのオーナーさんは、DIYが今みたいに流行る10年以上前から自分でDIYをやるような人で、すごくセンスがいい人だったんです。あるとき、「お店のイメージに合う本棚が欲しいんだけど、オーダーしてつくってもらうと高いし」なんて話をしていました。
「このお店の雰囲気なら、うちの主人、家具もつくってるんでできると思いますよ。」って話をしたら、家具を製作させてもらうことになったんです。そしたら、すごく本棚を気に入ってくださいました。そこの美容院は、2棟の長屋を借りながらも1棟しか使用しておらず、1棟余っていました。オーナーさんが「家具を長屋に置いて、美容院に来てもらった人に見てもらえばいいじゃん」って、言ってくださったんです。
その言葉で一歩前に踏み出すことができて、インテリアショップを始めるきっかけになりました。店名の由来は、そこの美容室の名前がトリムさんで、そこに荘をつけて、トリムの家ってことで、トリムソウになったんです。実はめちゃくちゃ日本名なんですよね(笑)」
家久さん:「最初は、なんの施工事例もなかったんですが、いきなりテーブルの注文をいただいたり、庭の外構をやってもらえませんかと、話をいただくようになったんです。そんなに自分たちの家具がすぐに売れるなんて思ってなかったので、正直びっくりしましたね。じゃあ、試しにってことで、当時、一番集客があるイベントが覚王山まつりだったので、出店することになったんです。
出店してみると、想像以上に古い雑貨とかも売れるんです。「なんか売れるね」ってなって、古い雑貨や家具が好きな人っているんだねってことが多少分かるようになり、本格的にお店を考えるようになりました。どうせなら集客があるとこがいいよねってことで、大須に出すことになったんです。」
大須で見つけた古いビル
美容院の一室からスタートしたTRIMSOは、大須で本格的にインテリアショップをオープンさせます。
家久さん:「本格的にインテリアショップを始めることになり、最初にオープンした店舗が大須の古いビルの一室でした。私たちが見つけたそのビルはRC構造が出始めたころの、めちゃくちゃ素敵な古いビルだったんです。
部屋自体は狭かったんですけど、内装やビル自体の雰囲気がすごくいいので、ビルに合った古い家具やオーダー家具を置きました。
私はオーダー家具だけっていうのも嫌なんですよ。まずはお店に来てもらって、「あ、この雰囲気いいよね。」とか、お店でマグカップを買ってたお客さんが、結婚するようになって「家具を買うならTRIMSOがいいいよね」ってなっていくものだと思っているんです。それに、いきなり見ず知らずの店でオーダー家具なんて買わないじゃないですか、古いものも好きだったので、古い家具をやりつつ、オーダー家具もできますよってことでスタートしました。
日本の家具もあれば、アメリカの家具もあればいいんじゃないって。日本って文化もごちゃ混ぜですしね。北欧が好きだから、北欧の家具ばかりある家ってそうそうないんですよ。
女の人って、特に浮気症だから、気づいたら国がバラバラなんてこともあって、でもそれでいいと思っていて、テイストが決まっているお店もかっこいいけど、そういうお店ってどうしても敷居が高く感じる。私たちは、そういうお店はつくりたくなかったのが、理由でもあるんです。」
TRIMSOはお客さんに育ててもらったお店。
古い木箱 ¥1,000(税別)
家久さん:「お客さんはオーダー家具がつくれるという時点で、これもできるんじゃないかって思って、「できますか?」聞いてくださるんです。場合によっては、難しいかな?って思っても、最初は断りたくないんですよ。
本当に無理なら断りますが、持ち帰って、考えて、迷惑をかけるようなことは合ってはならないので、余程難しい場合はお断りさせていただくんですが、できる限りやらせていただいています。
TRIMSOはお客さんに育ててもらったお店なんですよ。お客さんの要望を叶えたい気持ちで仕事に取り組んでいたら、結果的に仕事の幅が広がり、今にいたっています。」
どんな物にもメリット、デメリットもある。
そこまで説明してあげるのがプロとしての仕事
チーク材組み木オーダーテーブル ¥205,000(税別)
家久さん:「私は家具を造作しすぎるのもオススメしていません。素材感いいもので箱をつくって、プラス家具で色をつけていく。家具であれば変えられますからね。人の趣味なんて、変わるのであまり造作しすぎない方がいいんですよ。
壁でも塗れるような壁にすれば、簡単に変えることもできますし、飽きたねってなれば塗ることもできます。そういう自分たちで手が加えられる素材っていうのが好きですね。
最近だと、木じゃない木目調のもありますけど、選んでいるお客さんがいると「やめた方がいい」って絶対に言いますね。例えば、表面だけ木のやつもあれば、プリント加工だったり、床材や壁がどんな素材でできているか知らない人もいて、それっていいのって思いますね。
家久さん:「それこそ、家を建てたあとに知識がついてくる人もいるから、扉を木のように見せてるものだと「この扉って木じゃないの?」ってなり、「木じゃないなら、塗れないの?」とか、あとあと知ることになる。
それってすごく説明不足で、どんなものにもメリット、デメリットもあるので、ちゃんと説明をしてあげるのがプロだと思うんですよ。家づくりはすべてを選べることが魅力なのではなくて、プロだからこそ、その人に合うものを5択くらいにしてあげて、選んであげるのが仕事だと思います。
お客さんはなんとなく選んでできたものが、なんか違うねってなることがすごく多けど、「自分で選んだんでしょ?」ってリスク回避もできる。自分の営業成績や販売数が欲しいだけで、建てる人のことを考えてない人が本当に多いんです。」
家ってなるべく壁をつくってあげた方がいいんです。
TRIMSOでは、家具を探しにくる方で、間取りの相談をされる方がとても多いそうです。
家久さん:「最近はいい傾向だと思うんですよね。家を建ててる途中で家具を探しにくる方がすごく多い。建ててる途中なら確認や変更できる箇所もあるので、早いのはいいですね。
家を建てる段階で図面を拝見して家具の相談をうけると、気になった点はお客さんに言って図面を直してもらうことも多いです。「え?なんでここにソファがあるの?」とか壁があまりになくて、「窓や扉ばっかりで、これどこに家具置くの?」って、家具のことを考えてない動線ばかり。」
ブルーのL字型オーダーソファ¥174,400(税別)
家久さん:「家ってなるべく壁をつくってあげた方がいいんですよ。家具を置きやすくするためにも。でも壁がない家ってすごく多くて、お客さんは頭の中で図面が立体にならないので難しい。建ててから扉多いねって、ビックリしますよね。
そのまま話が進んでいくことが多いので、お客さんは良い、悪いがわかんない。家づくりへの要望が叶っていればそれ以上のことは見ないんですよね。例えば「部屋全体はどうなっているのか」、「キッチンにはゴミ箱を置く場所があるのか」、「窓の数でカーテンにかかる値段が変わってくる」とかね。
インテリアも連動して家づくりを考えてあげればもっといい家具だって買えます。それに、新しく建てたはずの家に、欲しかった家具が置けないなんて悲しいですよね。L字ソファーを置きたいとなれば、壁をつくる必要があるので、L字を置くための間取りになっていく。そうなると、必然的に図面の段階で壁をつくる間取りになっていきます。家を建てる前に家具から選んだ方がいいですね。
その方が上手くいきますよ。こんな家具を置きたいとかであれば、この床の色がいいとかあるので、家づくりと平行して家具を探すことをおすすめしています。」
好きな空間で暮らしていたら、
楽しいことが絶対に増える。
青いオールドカリモクのソファ¥38,000(税別)/イギリスビンテージ丸いガラステーブル¥38,000
家久さん:「本来、インテリアに興味のない人なんていないんじゃないですかね。例えばお店やホテルに行ったら「素敵〜」とか思うじゃないですか、なら自分の家もそうしようよって。
非日常なところを選ぶんだとは思うんですが、何かしらの興味があるからそこを選ぶ訳で、そういう空間で自分が暮らしていたら、たかがインテリアだけど、楽しいことが絶対に増えると思うんですよね。なので難しいことを考えなくてもいいと思うんです。
服が好きな人は本来、インテリアにも興味を持ちやすいものだと思っています。素敵にしたい、かっこよくしたい、かわいくしたいという欲求があるわけですから。なんでそこってイコールじゃないのかな?って思うんですよね。
若いうちは、金銭的な面でどっちかになるけど、30代になれば使えるお金も増えてくるので、自分の家がそうであれば「毎日はびっくりするくらい変わるんだよ」って、お店に興味があるなら家にもっと落とし込んで欲しいですね。」
おしゃれする理由と同じで、
日本人はもっとインテリアに興味を持って欲しい。
緑の三人がけのオーダーソファ¥140,000(税別)
家久さん:「インテリアセンスがないんですよって言う人がいるけど、センスって磨くものですよね。インテリアに興味持つのは後天的なもので、最初から持ってる人なんていない。実家がめちゃくちゃ素敵な人なんてそういないですよ。
それでもインテリアが好きな人はいる訳で、おしゃれをする理由と同じで、日本人はもっとインテリアに興味を持って欲しい。だいぶ増えましたが、まだ同レベルにはほど遠いですよね。
多分、日本人は人を家に招く文化があまり根付いてないので、見られないから妥協するのかな?欧米諸国ですと、人を招くことが好きじゃないですか、招くから見栄が出る。素敵だねって言われたいから、インテリアにもこだわりが出てくるんだと思うんですよ。
最近だと、ホームパーティーも増えてきてるから、家に人を招く文化が根づけば変わっていくのかなって思いますね。」