素材の持つ質感と形の調和を追求した国産材の家具。稲熊家具製作所
目次
木の魅力や、木の形を活かした五感で感じる家具「1/ONE」
これまでの「スタンダード(オリジナル家具)」「オーダーメイド」に加え、新たに「1/ONE(ワンバーワン)」という木材を生かしたシリーズが加わりました。
稲熊さん:「1/ONEは、木のもともとの形を生かした家具です。一枚板ではなく二枚の隣合わせの板をつなげる「ブックマッチ」という技法を用いました。ブックマッチとは、一本の丸太から板材を挽き、隣同士になる板と板の切断面を左右対象に本を開くように並べ、つなぎ合わせた板のことです。
天板が出来上がったら、それを最大限に生かす脚をデザインします。この天板にはこの脚という風に、木材の木目(もくめ)や形を生かすよう、ゼロから考えていくので、一つとして同じデザインはありません。世界で一つだけダイニングテーブルになります。」
THE APARTMENT STOREで開催された企画展「余白道具」
1/ONEは、栄のTHE APARTMENT STOREで行われた企画展「余白道具」をきっかけに生まれました。
稲熊さん:「もともと「ブックマッチ」という技法には魅力を感じていたのですが、なかなか製作する機会がなかったんです。そんな中、「余白道具」という企画展を開催することになりました。多治見で陶磁器を製造している「3RD CERAMICS(サードセラミックス)」、イラストレーター「Miltata(ミルタタ)」との合同展です。実は2人とは大学の同級生なんです。
「今できること。価格帯をあげた一点もの。」というテーマで、企画展に向けて製作を始めました。そこで生まれたのが「1/ONE」です。スタンダードやオーダーメイドでは、どうしても予算の兼ね合いがありますが、「1/ONE」にはやりたいこと、今できる技術をすべて詰め込みました。」
陶磁器×木材のコラボレーションライト「燈台」
企画展を開催した3RD CERAMICSのメンバーである長屋有さんとともにつくりあげたコラボレーションランプ「燈台」。磁器のシェード、木の台座、一つひとつ形が異なります。
稲熊さん:「多治見の陶器ブランドの3RD CERAMICSの長屋くんと、コラボレーションライトを製作しました。台座には、桑(クワ)、梨(ナシ)、欅(ケヤキ)の木材を使用し手作業で削り出し、磁器も一つひとつ形が違います。
心を豊かにするということは、好きなものの中で暮らすこともひとつだと思いますが、それ以上に時間を大切にするこだと僕は思っています。灯りは張り詰めた日常をほぐしてくれる道具のひとつではないでしょうか。この灯りも、誰かの日常に寄り添う存在になってくれればうれしいですね。」
燈台 / 磁器 Type -1st- ¥85,000(税別) 磁器はふんわりと光を通してくれます。
夕方の暗さになると、光の透過がよりはっきりしてきます。
ウールの質感と木材の組み合わせ
「オリジナルチェア」
最後にスタンダードシリーズのチェアをご紹介します。
稲熊さん:「フレームの木の部分でこだわっている点は、エッジを残すことです。理想の座り心地になるまで、何度も試作を重ねました。こちらの椅子は、カエデ材、チーク材で製作可能です。
ファブリックは、デンマークで唯一生産している椅子生地メーカー「ケアロップヴァヴェリ社」のものを使用しています。ウールの質感がとても良く、使えば使い込むほどにツヤとなめらかさが出てくるので、経年変化も楽しめます。」
あえてコンセプトをつくらないようにしているという稲熊さんの言葉の通り、稲熊家具製作所の家具はどれもとてもシンプルです。しかし、その裏側には、使い手・素材・デザインへのこだわり・家具づくりに真摯に向き合う稲熊さんの姿勢がありました。実際に触れ体感することで、より一層稲熊家具製作所の良さが伝わるはずです。