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富士山麓にアトリエを構える、作陶家・吉田直嗣(よしだなおつぐ)さん。白磁の白、鉄釉の黒。うつくしいフォルムの吉田さんの器は、料理人はもちろん、ファッションやインテリアのプロなど幅広い層に支持されています。
今回は、富士山麓にあるアトリエにお邪魔し、陶芸をはじめられたきっかけから、アトリエのこだわりまで、たっぷりとお話を伺ってきました。
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富士山の麓、静岡県駿東郡。豊かな森に囲まれた別荘地の一角に、吉田さんのアトリエ兼ご自宅はあります。
自転車がお好きだという吉田さん。吹き抜けの壁部分には、愛車が飾られていました。
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鉄釉の黒の器
一見カフェやギャラリーのような雰囲気の建物。中へ入ると、開放的なアトリエが広がっています。この場所で、吉田さんの器たちは生み出されているのです。
自分が使いたい食器がなかった
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作陶家・吉田直嗣さん
まずはじめに、陶芸をはじめられたきっかけについてお話を伺いました。
– 陶芸をはじめたきっかけを教えてください。
吉田さん:「もともとは家具がつくりたいと芸術大学に進みました。大学に入って先生方の話を聞くうちに、家具デザインと家具制作は違うこと、自分がやりたいのは図面を描くことではなく、つくることだと気がついたんです。
陶芸をはじめたきっかけは、友人に誘われて入った陶芸部です。入部した理由のひとつは、一人暮らしをはじめたときに、自分が使いたいと思う器がなかったこと。当時は、今のように雑貨屋さんに器が置いてあるわけでもなかったですし、意を決してデパートに行っても、自分が求めているものが見つからない……。
それなら自分でつくろうと、陶芸部に入りました。もちろん、最初から思い通りにはつくれませんでしたが、ろくろが上達するのが楽しくて、どんどんのめりこんでいきましたね。僕を探すときは、部室に行けば居るというくらい。作業着のまま授業を受けていました。(笑)」
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アトリエには、制作中の器がずらり。ここから実際に展示やお店に並ぶのは、一握りなのだそう。
– 在学中も現在のようなスタイルだったのでしょうか?
吉田さん:「作風は異なりますが、ずっと食器や花器などの”器”をつくっているという点は変わらないですね。家具デザインが自分に合わなかったことの理由のひとつとして、自分の手の内で完結しないということが、自分にとって違和感だったんです。器は考えるところから焼きあがるところまで、自分の手の内ですべて収まるというのが、自分には合っていると感じています。」