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東名高速道路「浜松西IC」から車で20分のところにある「nicoe(ニコエ)」は、“うなぎパイ”で有名な春華堂が、うなぎパイ誕生50周年をきっかけに3年の構想経て、2014年にグランドオープンさせたスイーツコミュニティです。
29組の食やデザインの分野で日本を牽引するクリエーターたちが参画したこだわりの施設は、細部に至るまで配慮が行き届いており、大人も子どもも楽しく、心地よく過ごすことができます。今回は、年間約36万人が訪れるという人気施設を隅々までご紹介します。
創業132年の「春華堂」の歴史
春華堂は、浜松の”夜のお菓子”としても有名な「うなぎパイ」でご存知の方も多いと思いますが、甘納豆などを扱う和菓子屋として、1887年(明治20年)に浜松に創業しました。うなぎパイは今年で生誕58年ですから、それ以前の歴史が74年あるんですね。
ここにご紹介してる「知也保の卵」(税込160円/個)は、1941年に誕生したお菓子で、現在販売されている春華堂のお菓子で一番歴史があるものです。当時から変わらない製法と味ということで、いただいてみました。パリッとした最中の中に、甘すぎない白餡と、しっかりとした噛み応えの黄身餡。一口でいただける大きさで食べやすく、ロングセラーであることに納得。
この「知也保の卵」が大ヒットしたわけですが、そこから20年後に、うなぎパイが誕生します。きっかけは、二代目の社長が出張先で、「浜松出身です」と伝えたところ「あのうなぎが美味しいところね」と言われたことから、「浜松のうなぎを使ったお菓子を作ろう」と着想し、開発をはじめたそうです。
うなぎパイは、キヨスクで取り扱われ、さらに東海道新幹線の開通や高速道路の開通が後押しして鉄道の発展や人の交流とともに全国に広がります。
うなぎパイ(12本入 税込 962円~)
うなぎパイが全国的に有名な浜松土産となり、同時に春華堂の名も全国に広がりましたが、うなぎパイを扱う直営店は、全国でも浜松市内の6店舗しかありません。その理由は、浜松の地域を大切にしたい、ということに尽きるそうです。
全国的に有名になった今こそ、その知名度を活かして、浜松に人を呼びたい。創業当時から春華堂を受け入れて、愛し応援してくれた浜松の人々に恩返しがしたい。という理由から、工場や直営店は浜松で展開し、雇用を創出しています。
今回ご紹介する施設「nicoe」にも、「他地域から浜松に遊びに来てもらいたい。地元の方にも気軽に立ち寄ってもらいたい。そして訪れた方々の暮らしをお菓子を通じて豊かにしたい。」という想いが根底にあり、それが伝わる細やかな気配りや面白い仕掛けがそこかしこに見られます。
さっそく入場!
エントランスではピンク色のnicoeのロゴが目を惹きます。このロゴは、よく見ていると時折ゆらゆら動くのです。遊び心が感じられる仕掛けに、期待が膨らみます。
緑豊かなアプローチを進みます。晴れた日は模様が影となって綺麗。植栽は季節ごとの花や実を楽しめるもので、訪れた6月はレモンがたくさん実っていました。
アプローチの先に、インフォメーションがあります。笑顔で迎えてくれたのは、nicoeキャストの近藤さん。ユニフォームはケイタマルヤマさんが担当。係や店舗に応じてデザインされています。
ベビーカーや車いすの貸出もあります。雨の日には拭きタオルを置くなど、細やかな心配り。春華堂のコーポレートカラーである「ピンク」が随所に見られて、雨の日でも気分が明るくなります。
五感で味わう三つの店舗①「春華堂」
nicoeには三つの店舗があります。
まずはじめにご紹介するのは、和洋菓子「春華堂」。
こちらでは、春華堂で販売されている和洋菓子を気軽に見て、購入することができます。
多種多様なお菓子たち。お好きなものを詰め合わせることができます。
中央にあるタワーの中は、うなぎパイ!タワーを支える骨組みは、うなぎがモチーフ。
うなぎタワー(勝手に名付けました)の天井は鏡張りになっていて、こちらで記念撮影する人が多いのだそう。
こちらは洋生菓子。中にはnicoe限定ケーキもあります。
こちらのホールケーキは、すぐ横のブースでパティシエが仕上げをしています。
生クリームが滑らかに仕上げられていく様は、見ていて飽きません。
さらにその横では、焼きたてのどら焼きをいただくことができます。あたたかいどら焼きって、食べたことありますか?
ふつふつと気泡が出てきたらひっくり返す。その瞬間、ぐっと生地が持ち上がるんです。こんがり焼けた生地からは、甘くて香ばしい香りが立ち上ります。
大納言小豆の粒餡をたっぷり詰めて、完成。
焼きたてどら焼き200円(税込)
ふわふわで香ばしくておいしい。
どら焼きをつくる様子は、お子様でも近くで見られるようなつくりになっています。これもまた、見ていて飽きません。
nicoeでは、未来を担う子供たちへの「食育」と「職育」を目指しています。「こどもたちに、ものづくりの楽しさを伝え、夢を持つきっかけづくりをしていきたい」という想いが感じられる仕掛けが随所に見られますので、そのあたりも注目して読み進めてくださいね。
【春華堂】
電話番号 : 053-587-7878
営業時間 : 9:30-21:30(金・土は22:00まで) ※どら焼きの実演は、9:30〜16:00
五感で味わう三つの店舗②「五穀屋」
続いて、春華堂の原点である和菓子を通じて、日本の食文化を古来より支えてきた五穀や発酵、旬の暮らしを伝える「五穀屋」をご紹介します。
それぞれの店舗ごとに内装とBGMで雰囲気を変えているのですが、こちらは洗練された和の雰囲気の中に優しいぬくもりのある趣。木枠の中に商品や装飾品が飾られたり、販売窓口があったり、腰かけて休憩するところがあったりします。
中庭に面していて、腰かけて明るく眩しい緑を堪能することもできます。
日本には、旬に応じた言い伝えや食文化があります。五穀屋では、それにまつわるお菓子が展開されていて、その解説も勉強になります。こちらは、邪気払いの豆菓子。
発酵調味料を使った羊羹「五季」。こちらは、イタリア・フィレンツェで行われた和菓子の祭典に出展し、その際、名門メディチ家で献上されたお菓子です。酒、抹茶塩糀、りんご酢、白味噌、醤油糀に加えて、季節ごとの味も加わります。今はラムネ味。
玄米にお醤油をあわせたおせんべいと七福米に雪塩をあわせたおせんべい。こちらは日本政府主催のレセプションパーティーで振舞われたお菓子です。登山する時に持っていく“おむすび”をイメージしたこちらの商品のパッケージは、折り紙の技術で作られています。強度を持たせるための下部のカーブを出すのが難しく、日本ならではの職人技なんだそう。
五穀屋では、焼き立てのお団子をいただけます。
そしてもうひとつ、日光の天然水を使った、こだわりのかき氷をいただくこともできます。今回は夏ということで、かき氷をいただきました。
いちごと本みりんを合わせた特製ソース。
ソースを入れた器の上に、高く氷を重ねていきます。この氷、日本には片手で数えるほどになってしまった氷屋「徳次郎」さんから仕入れているもの。日光で四代続く氷屋さんで、天然水を自然の寒さでゆっくりと凍らせているため、非常に純度が高くて固く、透明なことが特徴。
純度が高い氷は、削ったときに束になっていくそうで、確かに見ていると、よく見るかき氷とは違う様相でした。
完成。束になった氷が美しい。
「シロップをかける前に、まず氷だけで食べてみてください!」と勧められ、ひとくち。口に含んだ瞬間、氷が水となり、すっと染み入る感じ。良いお水であることが瞬時にわかります。お水がおいしくて、しばらく食べ進めたくなります。
昔はこんな氷が普通だったのかな、いやいや、冷凍庫ができる前のかき氷はものすごく高級な食べ物だったに違いない、などと想いを馳せてしまうほどのインパクト。読者の皆さまにもぜひ食べていただきたい一品。
五穀屋けずり氷 純いちご(税込1,944円・お茶付)
十分に氷を堪能したところで、果肉たっぷりのいちごソースをかけます。本みりんのコクが加わった、甘すぎないソースです。氷の中にはフローズン練乳が隠れていて、それらと混ぜながらいただきます。
他にも、静岡抹茶(税込1,944円)、白桃甘酒(税込2,268円)があります。いずれもお茶が付きます。2019年4月27日(土)~9月30日(月)までの期間限定品。
【五穀屋】
電話番号 :053-587-7778
営業時間 :9:30~18:00(イートイン ラストオーダー 17:30)