こんにちは、版画家の伊藤里佳です。
今回は昨年オープンしたばかりの名古屋テレビ塔のホテル「 THE TOWER HOTEL NAGOYA」のギャラリースペース「on hold」をご紹介したいと思います!
久屋大通パークは名古屋の地下鉄桜通線・名城線「久屋大通駅」と、地下鉄東山線・名城線「栄駅」を結ぶ、全長約500メートルの公園です。その中にある、名古屋のシンボル、名古屋テレビ塔は昨年ホテルにリノベーションされ「THE TOWER HOTEL NAGOYA」としてオープンしました。
宿泊客ではないと入りにくい雰囲気がありますが、on holdはホテルの中にあるので入っても大丈夫!ついでに「THE TOWER HOTEL NAGOYA」の雰囲気を味わうことができます。
今回はホテル内のギャラリー「on hold」で展覧会中のdrawropeさんの個展「output human」をご紹介しようと思います。
まずこちらがホテルのエントランスです。
テレビ塔の南側の西角にあります。
エントランスの壁には、鷲尾友公(わしお・ともゆき)さんの絵が描かれていてシックで華やかな印象。
こちらは東側の入り口。
東側は、NAGOYA TV TOWER ENTRANCE となっていますが、ホテルではなく展望台への入り口なのでお間違いなく!!(私は間違えて入ってしまいました……。)
奥にあるエレベーターで4階のLOBBY FLOORE、RECEPTIONへ向かいます。
4階へ上がったところ。見晴らしが良くて気持ちが良いです!
窓から見える建物の形もテレビ塔を感じることができます。
奥に進むとレセプションが現れます。壁のタイルが素敵です。
ギャラリーに来たことを伝えると「on hold 見学許可証」が渡されますので、身につけてギャラリーへ向かいます。
ギャラリーのエントランスには森北伸(もりきた・しん)さんの立体の作品や
鷲尾友公さんの作品が常設されています。
ホテルのグッズや、お土産コーナーも設けられています。
もらってみたい、食べてみたい素敵なパッケージのカヌレや
こちらも美味しそうなクッキー缶が並んでいます。
ギャラリーは、奥のホテルの一室なので、宿泊も可能(要・予約)となっています。
ギャラリーは客室なのでカードキーを挿すところがあります。
客室内には、名古屋テレビ塔の鉄骨部分が部屋を貫通するように残されており、部屋のアクセントになっています。部屋番号を照らす「L01」の文字もかっこいいです。
今回の展示「output human」について”drawrope”の白澤真生(しらさわ・まさお)さんにお話をお伺いしました。
白澤さんは普段、グラフィックデザインのお仕事をされています。”drawrope”(ドロロープ)という名前は造語でdraw(描く)と、rope(ロープ)を組み合わせたもの。
以前、「どこにもない名前にしよう!」と、「drawlog(ドロローグ)」という名前で個展をした白澤さん。尊敬している人から、「名前がいいね。」と言ってもらったのだそう。
さらに、「仕事する中で、どれだけ自由に作れるか、という線引きが自分は得意なのかな。」と考え、”rope”を使うことに。「”rope”には、プロレスのリングのように境界や線引きを連想させたりするという思いから、”drawrope”という名前にしました。」と、白澤さん。
「もっと自由に作りたい。」という思いが個展の制作に繋がっています。
見たことがないものを見てみたい欲求。
僕は、その欲求に支配されたい。
デザインが良いか悪いか、考えるほど
どこかで見たことがあるものになっていく矛盾。
本当はもっと自由で良いはずなのに。
頭は、もういらないのだ。もっと純粋に欲求を満たすために、
とにかく大量に生み出す
アウトプットヒューマンになろう。
考えるのは生み出してから。そこから生まれたものは、
美しいものかは分からない。
役に立つものかは分からない。それでも心がざわつく
そんなものを見てみたいのだ。
DMのご自身の手記より。
まず、こちらは記帳台。名前や感想を書いて、来ましたよー!という証を刻みましょう。電話機もスタイリッシュでステキです。
今回の個展は、コロナ渦ということもあり、家の中にあるものを題材にしています。ひとつはお絵かきできる「ラグ」、もうひとつは「お絵かきボード」です。それらのものをヴィジュアルに消化したものが作品となっています。
「FATHER」「 MOTHER」こちらは銀の紙にプリントされています。
拡大したところ。お絵かきボードの模様が蛇のうろこのようで、生き物のようです。
こちらは、「RUGPHABET」と「MUGOHABET」。オフセットで刷られており、「芸術作品は、部屋を飾るためにあるのではない。敵との闘争における武器なのだ。」というピカソの言葉が刻まれています。「RUGPHABET」はラグの模様から、「MUGOHABET」はお絵かき板の模様から作られています。
左側の作品のポスターハンガーはHARVA LEHTO(ハルバレヒト)さんに提案して作ってもらったもの。大きな額は、なかなか作ってもらえるところがなく、自分で見つけた岐阜のお店に注文して作ってもらっているそうです。別々のところで作っているのですが、同じような木の質感でマッチしています。
アートホテルの展示なので「アートにしなくちゃいけないかな、と思ったけどデザインも自分の要素の一部なので、タイポグラフィにしてみたりしてデザインの要素を取り入れて作っています。」とのこと。こちらもお絵かきボードの模様が。
こちらの目に飛び込んでくる作品は、造形作家の荒木由香里さんとのコラボレーションの作品。「BLACK」と「RED」です。
自分が過去にデザインしたものを荒木さんに渡して作品制作を依頼したのだそう。「ゴールを決めずに作ろうと考え制作している中で、人に作ってもらえば、自分が想像したものではないものができるのではないかと思い依頼しました。」とのこと。
「こんなのありなんだ。とか、自分は固定概念に縛られているな。って思います。自分だったらあそこにメガネはつけられないなぁ。車、あそこに乗せられないな。って。」と感想を聞かせてくださいました。また新しい発想が浮かびそうですね。
荒木さんは先日、令和2年度愛知県芸術文化選奨を受賞し、新人賞 受賞記念展「集合」を、4月16日金曜日から5月1日土曜日まで、AIN SOPH DISPATCHで行います。
AIN SOPH DISPATCH
13:00-19:00
木曜休廊
〒453-0013 名古屋市中村区亀島1-8-26 phone:052-433-1619
こちらもぜひ足を運んでみてください!
こちらはリトグラフで作られたもの。LITTLE ADシリーズ。
LITTLE ADは、子供の絵をアートディレクターの指示書と捉えて、グラフィックで再現するシリーズです。「今回、家の中にあるものを使って何か作ろうとした時に、子供の絵が目に入りました。それを使ってリトグラフで作品を作ろうと思い、版画家の片山浩氏に依頼して制作しました。」と話してくださいました。しかも、「リトル=リトる」と繋がって、リト(リトグラフ)で制作するのはぴったり!
制作中の片山浩さんにお会いできたので、リトグラフの制作の様子を紹介したいと思います。
版が常にぬれている状態になるようにスポンジに水を含ませて、版を湿らせます。ローラーにインクをつけて、版にインクをのせます。リトグラフは水と油の性質を利用した平版で、反応しているところにインクがつくようになっています。
こちらはLITTLE ADのハンコ。押すかどうか、かなり悩んだのだそう。「押さないほうがアートっぽく見えるのかな?アートってぽくってどうなの??」と、考えを巡らせ、デザイン側の視点で押すことにしたのだそう。
「アートとデザインってビシッと境界ができるものではないし、自分はアートとデザインの中間でありたい。」との想いがあるそう。
手書きの1/10は、この世に10枚存在するうちの1枚という意味。エディションナンバーと呼ばれるものです。
白の上にのった金色と、黒いインクの上にのった金色の、そして模様の下地の上にのった金色の違いをみることができます。インクは白澤さんが使ってみたかったものを準備しました。
先ほどの作品と、リトグラフにしていないLITTLE ADシリーズが収まっている冊子を見る白澤さん。ぜひ、原画と比較してみて欲しいとのこと。「なかなかいい感じにできたなぁ。」と本人談。
ホテルの部屋には、こちらのタイポグラフィが飾られていますが、こちらはテキスタイルの作品。布が二重になっていて、上側にある布をほどいて模様がでる仕組みになっています。知人のアドバイスを受けながら制作されました。こちらは、手先が器用な白澤さんの奥さんのあゆみさんが丁寧にほどいています。
こちらはDMをポスターにしたもの。金色を使用したかったが、B0の大きさのポスターで金色は刷れないので、クラフト紙に刷られているそう。クラフト紙とは思えない質感。そしてなぜか金色に見えます!!
大学では、テキスタイルを学んでいた白澤さん。「CDジャケットを作りたい。」という思いでデザイン科に入学しましたが、デザイン科の1年生が受講するファンデーション(さまざまな種類のデザインを学ぶ)が自分に合わず悩んでいました。その時に、横浜トリエンナーレでみた作品をみて、「アートって面白いな。」と感じ、アートに目が向くように。当時、「デザイン科の中でも一番デザインっぽくなかった。」という、テキスタイルコースへ進むことを決めました。
昼間は手を動かしてアナログな作業を行い、家に帰るとパソコンで友達にプレゼントするために好きな曲を選曲したCDを作り、CDジャケットのデザインを制作したり、学祭の時にはポスターを作ったりして学生時代を過ごしていたのだそう。
「今まで、遠回りをしながら、ここまでたどり着いたな。」と感じているそうです。
私は手ぬぐいを購入させていただきました。受付でお支払いをすると、「ザ タワーホテルナゴヤ」と書かれたハンコが押された紙袋に入れてくださいました。森北さんの立体作品と、鷲尾さんの絵が盛り込まれています!!
ギャラリーからも、テレビ塔北側の景色がみれます。気持ちの良い景色です。
人にお願いをするのが苦手な白澤さんですが、今回の展示では「output human」というタイトルをつけたように、とにかくたくさんの作品を生み出すことを目標にしたので、いろんな人にお願いして作品を作りだしました。
素材を生かす塩味や、素材を漬け込む味噌味。自分は味噌味だと語る白澤さん。今後のdrawropeはどんな味噌味になっていくのか、今後の作品も楽しみです!
THE TOWER HOTEL NAGOYA おまけのおすすめ場所は、お手洗い。
入り口には金鯱が。
角度のついた壁面がステキ!パノラマビューを楽しめます。
洗面もステキ。テレビ塔の中にいることを感じることができます!ぜひ寄ってみて下さいね。
「drawrope」の「output human」は4月25日まで開催しています。久屋大通パークのお散歩のついでに、 「THE TOWER HOTEL NAGOYA」のギャラリー「on hold」に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
「output human」
2021年4月1日(木) – 25日(日)
12:00 – 17:00
[入場無料・予約優先制]
on hold
THE TOWER HOTEL NAGOYA
4F L01
愛知県名古屋市中区錦3丁目 6-15先
地下鉄東山線・名城線 栄駅3番出口より徒歩5分
(セントラルパーク地下街内31番出口より直結)
地下鉄桜通線・名城線 久屋大通駅4B出口より徒歩3分
(セントラルパーク地下街内26番出口より直結)
“on hold”は、昨年10月にTV塔を改装し生まれたアートホテル「THE TOWER HOTEL NAGOYA」の中にあるギャラリースペースです。アウトプットする自粛グラフィックの新作ポスターを発表します。ですので、是非ご来場をお待ちしております。なお、新型コロナウイルス感染拡大防止対策はホテルの対策に準じて行います。入場は、ご予約の方、優先になりますのでご注意ください。
入場予約・会場についてのお問い合せ
THE TOWER HOTEL NAGOYA
Tel 052 – 953 – 4450
https://thetowerhotel.jp/
ギャラリースペース”on hold”内で作品と過ごす、ご宿泊体験もできます。詳しくは、ホテルへご宿泊の予約をされる際にお申し付けください。
WEBストアで作品の購入をしていただけます。
https://drawrope.stores.jp/
お問い合わせは [email protected] まで