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名古屋駅からJRで10分、尾張一宮駅から徒歩3分ほどの距離にあるレトロな佇まいのビル「Re-TAiL(以下:リテイルビル)」。今、こちらのビルが若手アパレルデザイナーやハンドメイド作家たちの間で注目を集めています。
館内には尾州織物を販売する「RRR MATERIAL PROJECT(アール・マテリアル・プロジェクト)」やクリエーターたちのアトリエなどが入居しています。このビルが注目されるようになったのには、一宮市在住でデザイン事務所を経営する稀温(きおん)さんの存在がありました。
今回は稀温さんにリテイルビルを案内していただき、ビルの魅力やRRR MATERIAL PROJECTについてなどのお話を伺ってきました。
尾州織物(びしゅうおりもの)とは?
まずは尾州織物について、簡単にご説明をします。尾州織物は愛知県の一宮市、稲沢市、津島市、江南市、 名古屋市と岐阜県羽島市を中心とした国内生産量の8割を占める毛織物産業の一大産地です。
イタリアの「ビエラ」、イギリスの「ハダースフィールド」と並び世界三大生地産地として知られており、世界の名だたる海外ブランドから国内ブランドまで魅了しています。
ビルの解体危機を救った
「RRR MATERIAL PROJECT」
リテイルビルの外観。RC造/地下1階地上3階 延床面積:1,021㎡
リテイルビルのエントランス。白いアーチ窓と茶色のタイル張りの外観が印象的です。
館内の天井や壁には、アーチ構造や天井の彫刻が美しく細部にまで装飾が施されており、大変意匠性の高い建造物。
入り口に施されたタイルもとてもかわいい
そんな尾州織物を長年支え続けてきたのが、こちらのリテイルビル。毛織物の最盛期だった1933年に建られてから80年以上、繊維組合の事務所として長く使われてきました。
しかし、事務所の移転が決まったことで、2015年末には取り壊されることが決定。地域住民からは、取り壊しを惜しむ声が出ていたそうです。
RRR MATERIAL PROJECTのコーディネーター・稀温さん
そんなビルの危機を救ったのが稀温さんです。稀温さんは「クリエーターズマーケット」の立ち上げや、栄の路地裏で人気を博した個性的なショップの集合体「さくらアパートメント」を開設した実績を持つ敏腕プロデューサーでもあります。
稀温さん:「過去に古い建物の再活用やイベントを開催してきたことから、この優美なビルが取り壊される前に、多くの人に見てもらえたら、と思ったんです。一宮が繊維の街ということは知っていましたが、関わっていくうちに想像よりはるかに豊富な素材があることを知りました。
もともと、尾州織物は一般消費者向けの販売はしていなかったので、一般の人が素材を購入する場所をつくれば、広く尾州織物のことを認知してもらえるのではないか。それに、繊維の街にある、歴史的な意味も持つこのビルで地元の素材を売るのは自然なことだと思ったんです。そこで、一宮の繊維メーカーを集って、布地を販売する素材のマーケット「RRR MATERIAL PROJECT」を開催することにしました。」
コンセプトは3つの「R」
そこから新しい価値を創造していく
稀温さんが立ち上げた「RRR MATERIAL PROJECT」には3つのコンセプトが込められています。
・Refindd (リファインド)
モノの見方を変えて新しい価値を見い出す。
・Recreation (リクリエーション)
リ・クリエーションで価値の再生を楽しむ。
・Relation (リレーション)
ひとの交流から価値あるものを集め引き継ぐ。
この3つの「R」をテーマに、モノゴトの価値を発見・再生する取り組みです。そして2014年の5月に、捨てられるはずだった布地やデッドストックの布地などを集めて販売する「RRR MATERIAL PROJECT」を初開催したところ、予想の2倍以上の来場があったそうです。
その後、協力してくれた繊維会社と「Re-TAiL」を設立。2016年1月にはビルを丸ごと一棟借上げて「せんいのまちで、せんいのビル。」をテーマに活用されることになります。