過去の名品を未来へとつなげていく空間。北欧ヴィンテージ家具ショップ「Espace KM」
目次
住空間をつくり上げる喜び
大学卒業後、商社で会社員をご経験されたのちにはじめた「Espace KM」。北欧ヴィンテージ家具のショップをオープンするに至った経緯をお伺いしました。
-インテリアにご興味を持たれたきっかけを教えてください。
丸山さん:「おそらく、幼少期に両親の姿を見ていたのが影響しているのかなと思います。
幼少期に7年ほどフランスに住んでいたことがあるのですが、よく週末は両親に連れられ蚤の市に行きました。両親は気に入ったアンティークやブロカントの家具を少しずつ集めていました。もっとも、当時のわたしの興味は蚤の市に出ている屋台でサンドイッチやクレープを食べることでしたが、今思えば、生活の一部に「古いもの」があって、それが当たり前だと感じていました。」
-特に印象に残っているシーンなどありますか?
丸山さん:「蚤の市で買った家具を届けてくれたデイーラーさんが、今まで大切に使われて来た家具のお手入れ方法やその家具の歴史を、まるで我が子のことのように両親に説明する姿、両親もまたそれを私や兄に嬉しそうに話す笑顔を見て、「もの」を繋いで行く素晴らしさを感じました。
実家では何度も修理や張り替えをして、今でもこれらの家具を大切に使っています。一つ一つの家具にはその出会いから修理や張り替えでお世話になった職人さんとの思い出があり、そういったことからも古いものへの魅力を感じるようになりました。」
-その後、大学では商学部に進まれていますが、どういった想いでしたか?
丸山さん:「進学先を決める際に、建築系の学科に進むか、経済・商業系の学科に進むかとても悩みました。でも、いずれ自分のしたいことをするとしても、一般企業でのビジネスの経験は将来必ず活きると思い、慶応義塾大学の商学部に進学しました。その後、最低5年間は、商売の流れや仕事の流れの一連のフローをやってみようと商社に就職しました。」
-退職後は、建築を学ばれたんですね。
丸山さん:「はい、中古不動産のリノベーションをしたいと考えていたこともあり、早稲田大学の芸術学校で建築を学びました。当時、問題意識として日本の「空き家率」が頭にありました。経済成長の中、スクラップ&ビルドで肥大化した日本の社会ですが、今後は超少子高齢の時代が待ち構えている。そのため、社会にある資源の有効活用はサステイナブルな社会の実現においては、とても重要であると感じていました。
リノベーションの知識や技術で、残っているいいものを使い、快適な住空間を提供していけば、社会に貢献できるのではないかと考えていました。」
-ご卒業後は準備期間を経て、北欧ヴィンテージショップをオープンされましたが、リノベーションを志されていた時から、心境の変化があったのでしょうか?
丸山さん:「大量生産、大量消費の時代から、よりサステイナブルな社会の実現に貢献したいという想いや、快適な住空間を提供することで社会に貢献していきたいという根底にある「想い」は同じでしたが、アプローチの仕方は少し変わりました。
子供の頃から身近で感じてきた、いいものが人から人へ、親から子へ、世代を超えて受け継がれてきたその光景もまたサステイナブルな社会のあり方であると感じるようになったことや、建築の勉強をする中で、案外小さなディテールの変化が空間にもたらすインパクトの大きさを実感したことが方向性をシフトした大きなきっかけだと思います。
使う家具や、配置を変えるだけでも、空間の印象は大きく変わりますから。
特に新しい土地で生活をはじめる時、本当にホッとできる場所があると、生活が少しだけ豊かになる気がします。リノベーションとまではいかなくても、お気に入りの家具が少しあるだけでも全然違うと思います。幼少期の海外生活や、商社時代の駐在経験など、引っ越しの多い生活を送ってきたからこそ、実感しています。
住空間って、結構大切ですよね。日本では、仕事をしている時間が長く、帰って寝るだけという人も多いのが現状ですが、もし、ひとつ体を安心して委ねられる椅子があったら、家での過ごし方もずいぶん変化すると思いますよ。」