名古屋市北区・名鉄瀬戸線「尼ヶ坂」駅を降りてすぐ、緑の多い坂道のふもとに佇むのが、今回ご紹介する「六識珈琲店」です。
2021年1月にオープンした同店では、サイフォンで淹れた香り高いスペシャルティコーヒーをいただくことができます。
目次
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すぐそばに公園や高架沿いの桜並木もあり、都心から近いと思えないほど緑が豊かなエリアです。
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煉瓦や木を使った店構えは、街の風景になじみ、思わず立ち寄りたくなります。
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アルミの削り出しでできた重厚感のある看板は、店主が以前勤めていた会社にオーダーしたものだそう。
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柔らかな日差しが差し込む店内。左手にカウンター、右手にテーブル席があります。
コロナ禍のオープンだからこそ作り込めた、
こだわりの喫茶店
六識珈琲店がオープンしたのは2021年1月。
長年勤めた金属加工メーカーを退職し、かねてからの夢を叶えた店主。コロナ禍の真っ最中のオープンということもあり周囲からは心配されたそうですが、あまりネガティブには捉えず、むしろゆったりとした時間の中で、自分のお店のあり方を作り込んでいったといいます。
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店名の「六識」は仏教用語で人間の感覚を表す言葉。店主の名前にもちなんでつけたのだそう。
サイフォンで淹れるコーヒーの魅力とは
お店に一歩足を踏み入れると目に飛び込んでくるのが、整然と並ぶサイフォン。実験器具のような佇まいにワクワクしてしまいます。
ハンドドリップでコーヒーを淹れるお店が多い中、独自のコンセプトでお店を作ろうと店主が選んだのがサイフォンでした。お店を訪れる若い人からは珍しがられる一方、年配の方からは「懐かしいね」といわれるのだとか。
六識珈琲店で使っているコーヒーはすべてスペシャルティコーヒー。店主が焙煎師さんと何度も話し合って出来上がった「六識ブレンド」のほか、数種類のシングルオリジンのコーヒーをいただくことができます。
また、お湯やコーヒー豆の分量、温度など、どんな条件で、どのように淹れるのが美味しくなるのかを試しながら、自分の求める味を作り込んでいったといいます。今回は特別に間近でサイフォンでのコーヒーの淹れ方を見せていただきました。
六識珈琲店で使っているサイフォンはHARIOの「TCA-2」。サイフォンの下のボール(フラスコ)にお湯を入れて沸騰させていきます。次第にコポコポと気泡が出てきました。
お湯が沸騰すると、蒸気圧の力で上のボール(ロート)にお湯が上がっていき、コーヒー粉と混ざります。
ここでコーヒー粉とお湯を混ぜます。小気味よいテンポで混ぜる店主の手つきに、思わず見入ってしまいます。ちなみに混ぜるのに使われているへらは、なんとご自分で削り出して作成されたのだとか。
そして熱源を止めると、フィルターを通ってコーヒーが下のボールへと下がってきます。なんだか本当に実験のようで面白いです。サイフォンを使うと、高温でコーヒーを淹れられるため、香りが豊かになるそう。
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六識ブレンド(HOT) 630円
出来上がったコーヒーは、自分でカップに注ぎます。しっかりとしたコクを感じながらも、すっきりした味わいで本当においしいコーヒーでした。カップに約1.5杯分とたっぷりいただけるのも嬉しいです。
たっぷりの氷を使ったアイスコーヒー
六識珈琲店では、サイフォンで淹れるアイスコーヒーと水出しアイスコーヒーがありますが、せっかくなのでサイフォンのアイスコーヒーをいただくことにしました。濃厚に淹れたコーヒーをたっぷり氷の入ったフレーバーグラスに注いで急冷します。
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六識ブレンド(ICE) 780円
少しずつ氷が溶けていく音がなんとも涼やかでずっと眺めていたくなるほど。グラスのステムを持って少しくるくるとかき混ぜると氷がほどよく溶け、ちょうどよい濃さに。スッキリしていて華やかな香りを楽しむことができました。
コーヒーとともにいただく、自家製スイーツ
コーヒーと一緒にいただきたいのが、自家製のスイーツ。昔からお菓子作りが好きだったという店主が一つひとつ丁寧に作るスイーツが、1日4〜5種類用意されています。
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ガトーショコラ350円 生チョコレートのような濃厚さを感じるスイーツはコクのあるコーヒーによく合います。寒い季節にはフォンダンショコラ風に変わるそう。
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ベイクドチーズ380円 クリーミーかつさっぱりとした味わいのチーズケーキ。サイズ感もほどよく、ランチの後などにもぴったり。コーヒーやスイーツに使われている食器は多治見の「サードセラミックス」さんのもの。
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焼きプリン350円・水出しアイスコーヒー630円 牛乳・卵・砂糖のみで作られたシンプルな焼きプリンは硬めで優しい甘さ。
唯一のお食事メニュー「ドライカレー」
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ドライカレー830円
六識珈琲店で唯一のお食事メニューが、ドライカレー。カレー好きという店主がつくるドライカレーは、うずらの卵を絡めていただく人気の一皿です。お皿に添えられるのはクリームチーズと生姜の酢漬けです。
街の人の日常に溶け込む空間
慌ただしい日々の中に必要な、家とも職場とも異なる「サードプレイス」。店主も会社勤めをしていた際、会社帰りにカフェに立ち寄ってちょっとした仕事をしたり、リフレッシュしたりという時間を大切にしていたのだとか。だからこそ、六識珈琲店も街の人にとってそのような存在になってほしいといいます。
サイフォンの前のカウンター席と、テーブル席の他に、窓際のカウンター席もあります。こちらの席でちょっとした書き物をしたり、本を読んだり、一人ぼーっと外を眺めて頭の中を整理したりするのもよいのではないでしょうか。
コーヒー豆の販売や、
ドリンクのテイクアウトも
「六識ブレンド」のほか、シングルオリジンなど、さまざまなコーヒー豆を販売しています。ドリップバッグもあるのでちょっとしたプレゼントなどにもおすすめ!また、サイフォンで淹れるアイスコーヒー以外のドリンクはテイクアウトも可能です。
「コーヒーを淹れるのも、デザートを提供するのもすべて一人で行うから、なるべく余計な装飾を入れず、すべてをシンプルにして好きなものを追求している」という店主。その洗練された雰囲気の中にある温かさや、穏やかさ、静かに流れる時間がとても心地よく、何度でも足を運びたくなるお店です。