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こんにちは、版画家の伊藤里佳です。
今回は、三重県いなべ市を拠点に活動している ”アトリエhitotema”をご紹介したいと思います。
アトリエ hitotema
「アトリエ hitoteme (ヒトテマ) 」は、写真の作家である田中翔貴さんと、陶作家である秋保久美子さんのご夫婦のユニットです。2017年の春から活動をはじめました。
おふたりが、いなべにアトリエを構えるきっかけとなったのは、4年ほど前、自然の多いところを条件にさまざまな場所でアトリエを探していたところ、いなべを知り、たまたま足を運んだ先で出会った方々や山が近く魅力的な景色に惹かれたところでした。
それからは、休みの度にいなべに通い、猟師さんや、金属作家の方、農業をしている方……とさまざまな技を持っている人と知り合いになり、いなべでの生活を想像できるようになりました。
移住を考えていたタイミングで、「いなべ市地域おこし協力隊」という仕事があることを知り、ご主人の田中さんが応募し、3年という期限つきで仕事をはじめることになりました。
アトリエを構え、地域の方々と交流するようなイベントを開催したり、フリーペーパーを作成したり、作ることを通して地域になじむことを大事にしてきました。
20年間、使われていなかった場所を借りることができ2人で少しずつ手直しをしていきました。元縫製作業所だったこともあり、フリーペーパーにはミシンで縫い合わせたデザインがぴったりですね。
小学生が学校帰りにのぞいてくれたり、地域の人は見守ってくれていて、何かあったら助けてくれるような方々で、いい地域に巡り合えたと感じているそう。
お話を伺っている間にも、隣のおうちのおばあちゃんが、差し入れを持って展示をみにきてくれました。
陶作家で、テキスタイルを学んできた秋保さんと、写真作家の田中さんの二人での活動として染色も行っています。制作で写真を扱う田中さんが植物を直接写しとるという方法を試行錯誤することからはじまりました。
植物を布に挟み金槌で丁寧に叩き写し、媒染液で定着させるという方法で作られています。生まれた技法は「形地(カタチ)染め」と名づけられました。
以前の染め方は、植物(主に花)を挟み込み板締めで植物を布に定着させていました。
現在の染め方と比べるとぼんやりと植物が染まっていて、進化を遂げていることがうかがわれます。
植物の持っている色素を布に定着させるのですが、同じ植物でも四季で色が変わるそう。「植物」という材料もすぐに手に届くところにあり、大きさの制限もなく制作ができることも魅力のひとつ。さまざまな土地で育つ植物を比べたり……と、無限の楽しみが広がります。
今後は滞在制作などで土地柄を写し、作品として展開していきたいとお話してくださいました。
「日曜日のホットケーキ」秋保 久美子展
そして、アトリエhitotemaでは3月12日(金)から3月21日(日)まで「日曜日のホットケーキ」秋保久美子 展を開催しています。
2021.3.12(金)ー3.21(日)
11:00-16:00 ※会期中
アトリエの奥に看板が立っています。
可愛い猫がお出迎えしてくれます。
細い小道を抜けるとギャラリー空間にでます。
このスペースは人が通れるようなスペースではなかったそうですが、今回の展覧会のために整備して通れるようにしました。
こちらが入り口を入ったところ。
室内はきれいに設えてあり、小さな美術館のような空間です。
小さい頃の日曜日の朝ごはんに家族で食べたホットケーキの思い出から、記事で顔を描いてひっくり返す作り方をヒントに土の色の違いを楽しみながら作られたそう。
お皿の他にも壁掛けや花器など美味しそうな陶器たち。
仕事を通じて陶芸と出会い、近年は陶器やイラストを中心に制作されています。
意外にも個展は今回の展示が初めて。
1年ほど前に岐阜の「なうふ現代」というギャラリーでhitotemaとして初めて展示させてもらえる機会をもらい、アート作品として陶器を発表できたことも大きなきっかけになったそうです。
全体のイメージをしながら、制作、そして展示をするということが大変だったそうで、ご主人の田中さんにアドバイスやアイディアをもらったり、空間作りの仕上げをしてもらったりしたそう。
おまけくじでは、小さな袋に陶器のオブジェとささやかなお菓子が入っています。何が当たるかはお楽しみ!
設えた空間に心地よく並ぶオブジェや陶器、ドローイング。一つひとつが素敵で、ついつい長居してしまします。アトリエ hitotemaとしての活動や、田中さんと、秋保さんそれぞれの活動が今後も楽しみです。
私は気になった、こちらの key flower を連れて帰ることにしました。
みなさんも足を運んでお気に入りのひとつを見つけてください!そして、自然や丁寧な暮らしを感じてみてくださいね。