岐阜から全国へ。30年後も愛されるおやつ作り『大地のおやつ 』(山本佐太郎商店)

2018.8.8
大地のおやつ

大地のおやつ

 

和菓子職人「まっちん」こと町野仁英さんと、老舗油屋「山本佐太郎商店」のコラボレーションによる『大地のおやつ』シリーズ。余計なものを使わず、素材のおいしさをそのまま生かし、あらゆる年代の方に安心して食べていただけるお菓子を目指してつくられています。

 

今ではすっかり全国区になったこちらのシリーズですが、実はすべて岐阜県から全国に向けて発信しているんです。どのシリーズもとてもおいしくて、私も見かけるとつい手にとってしまいます。

 

今回はそんな『大地のおやつ』をプロデュースする、老舗油屋「山本佐太郎商店」4代目の山本 慎一郎さんにお話を伺ってきました。

 

 

明治9年創業の老舗油屋『山本佐太郎商店』

 

山本佐太郎商店

オーバーオールとキャスケット帽がトレードマークの山本慎一郎社長

 

最初に山本佐太郎商店の経歴からお伺いしました。

 

山本社長:「山本佐太郎商店は、1876年(明治9年)創業の油屋です。佐太郎は曽祖父の名前なんです。油は江戸から明治までは、工業用としての役割が一般的でした。和紙に油を塗ることで防カビ・防虫・防水効果が出るので、提灯や傘などに使われていたんです。

 

明治時代中期になると、電気やビニール製品が普及したことで油の需要が減り、工業用から食用に移り変わっていったという歴史があります。戦前は、菜種を石臼ですりつぶし、ろ過することで菜種油の搾油をしていました。

 

戦後、高度成長期になると、日本の外食産業が盛んになり油をたくさん取るようになっていきます。山本佐太郎商店も自然と時代の流れにあわせて販売先を変えていきました。曽祖父の頃は、自社で油を搾っていましたが、空襲で焼けてしまってからは現在の業務用卸問屋へと切り替えました。」

 

 

22歳。突然、家業を継ぐことに!

 

山本佐太郎商店

 

山本社長は大学を卒業後、22歳にして家業を継ぐことになります。

 

山本社長:「大学を卒業後すぐに家業へ入りました。しかし、その半年後に父が亡くなってしまったんです。食べていくには、継がなきゃいけない!やるしかない!そんな状況でしたね。当時の僕といえば、ヒッピーカルチャーに傾倒していて、長髪にやぶれたジーンズ姿の若者だったんです。(笑)

 

そんな、チャラチャラした中途半端な若者がいきなり後を継いだんですから、お客様は黙って離れてゆくこともできたと思うんです。でもお客様は離れていくことなく、僕を叱って、あたたかく見守り、育ててくださいました。これもすべて先代、先々代が長年に渡って信頼を築いてくれていたからこそです。」

 

 

和菓子職人まっちんとの出会い、「大地のかりんとう」誕生


大地のかりんとう

 

こうして、老舗の油屋を継いだ山本社長。『大地のかりんとう』を生み出すことになる和菓子職人まっちんさんに出会います。

 

山本社長:「油屋をやっていく中で、正直このまま油屋だけをやっていくのには限界を感じていました。油屋として何か新しい価値を見出すことはできないものかと、常に模索をしていたんです。そんなときに出会ったのがまっちんでした。

 

まっちんは三重県伊賀市出身で、岐阜市柳ケ瀬商店街の和菓子屋「ツバメヤ」の商品開発として携わっていました。「ツバメヤ」は山本佐太郎商店の取引先でしたので、ツバメヤへ出入りするうちに、同い年で、音楽の趣味も合うということで、すぐに意気投合したんです。

 

まっちんのつくる和菓子は、すべて身体に良い素材だけを使っています。例えば、僕はそれまで味というものは足していくものだと思っていました。ところが、まっちんの和菓子は引き算なんです。和菓子ではあまり使われない、全粒粉や玄米、粗糖を使用しているのも特徴です。まっちんのおやつ作りに共感して、2人で何かできたらいいねと話していました。

 

こうして、2人でいろいろなことを話し合う中で生まれたのが『大地のかりんとう』です。「和菓子屋と油屋がつくるお菓子だから「かりんとう」はどうかな?」とまっちんから提案があり、本格的にかりんとう作りをスタートさせました。」

 

まっちんさんと山本社長まっちんさんと山本社長

 

 

毎日、安心して食べてもらいたい

 

大地のかりんとう

 

大地のかりんとうでは徹底して素材の良さにこだわっています。その素材の良さは、シリーズ化した『大地のおやつ』でも同じです。

 

 

山本社長:「僕たちがおやつをつくる上でコンセプトにしたのが、「30年後も愛されるおやつ作り」です。だからこそ、安心で、気軽で、飽きがこないことにこだわって開発をしていきました。

 

レシピや使う素材はすべてまっちんが考案しています。例えば、和菓子をつくるときは、上白糖を使うのが一般的です。しかし、上白糖は化学生成という工程が入ることで栄養価やミネラル、風味が損なわれてしまいます。

 

そこでまっちんは、化学生成されていない粗糖を使い、小麦粉も北海道産の小麦をまるごと挽いた全粒粉、岐阜県産小麦粉を使用し、身体に安全で栄養価の高いレシピを考案しました。

 

かりんとうを揚げる油は僕のこだわりです。当初は太白胡麻油を使おうと思っていましたが、それだと価格があまりにも上がりすぎるので、純国産のこめ油にしました。こめ油で揚げたかりんとうは、ほんのり甘さを感じ、全粒粉との相性が抜群です。毎日、安心して食べてもらいたいので、保存料や酸化防止剤は一切使用していません。」

 


大地のおやつ

 

山本社長:「レシピを考えるのはまっちんですが、製造は各メーカーにお願いをしているため、メーカーの機械によって仕上がりが変わってしまうことがよくあります。するとまっちんは製造工場に直接行き、機械で試作した生地を手で触って確かめるんです。

 

その感覚を頼りに、生地の分量を配合していきます。これは僕には絶対できませんし、まっちんだからこそなせる才能だと思っています。」

 

 

いぶき福祉会とパートナーに


山本佐太郎商店

 

まっちんさんと山本佐太郎商店によるおやつ作りは2012年、本格的にスタートします。

 

 

山本社長:「かりんとうの製造を依頼をしたのが岐阜市にある社会福祉法人「いぶき福祉会」です。いぶき福祉会は、障がいのある人が生き生きと暮らせるよう仕事や地域とのつながりをサポートしている団体です。彼らは既に「ねこの約束」というマドレーヌやかりんとうをつくっている実績とノウハウがあったんです。

 

僕は油屋で製造設備もノウハウもなかったので、彼らに製造をお願いすることにしました。依頼した当初は、大量製造や品質を安定させることが難しく苦労しましたね。僕とまっちんは工場へ何度も足を運び、試食を繰り返して1年かけてようやく完成しました。利用者と支援者も本当によく頑張ってくれたので、今では安定した品質を保つことができています。」

 

 

初めてのイベントで300袋完売

 

大地のかりんとう

 

山本社長:「当初は、「油屋のかりんとう」とういう名前で、なるべくコストをかけないように透明なパッケージに帯だけというシンプルなデザインにしていました。おやつのことをきちんと伝えたいとも思っていたので、イベントに出店しては一つ一つ手渡しで販売をしましたね。

 

初めて出店したイベントでのことです。僕たちの予想に反して300袋も売れたんです。このことは大きな自信にもつながりました。購入していただいたお客様からも、また食べたいというお声を多くいただくようになったんです。

 

少しずつイベントで実績を積んでいき、名前も「大地のかりんとう」と改め、本格的に販路を広げていくことにしました。」


大地のかりんとう

 

 

スーパーへ相談に……何か違う

 

ツバメサブレ

 

山本社長:「本格的に販路を拡大するにあたり、スーパーへ相談にいきました。そこで言われたのが「消費者の購買行動は0.2秒で決まるんだから、中身が見える包装で、価格ももっと抑えてください」という要望でした。僕たちがつくるお菓子とは真逆だったんです(笑)。

 

大地のかりんとうのパッケージは、ただ単純にデザインを追求しているだけではありません。素材をアルミにすることで、遮光性という大事な機能を果たしています。材料も安全性とおいしさを優先。袋詰めは機械ではなく人の手でおこなうことで割れを最少限に抑えており、すべての工程に手間ひまをかけています。だからこの価格になるということをしっかりとお伝えした上で、取引をしたいと思いました。

 

そこで考えたのが、お客さまにきちんと伝えてくれるライフスタイルショップや雑貨屋さんに置いていただくことです。ライフスタイルショップには、日々の暮らしを大切に丁寧に暮らすことに長けた人が訪れます。そういう方たちに支持されていくことで『大地のかりんとう』はじわじわと人気が広まっていきました。」

 

 

福祉施設としてではなく、メーカーとして

 

山本佐太郎商店

 

こうして、大地のかりんとうは着実に売り上げを伸ばしていきます。そんな中、製造が追いつかない事態が発生します。

 

 

山本社長:「実は、一時期かりんとうが売れすぎて生産が追いつかないことがあったんです。「なんでこんなに作らなくてはいけないんだ」と不満の声が上がっていました。それまでの彼らは与えられた仕事をこなすだけの義務感がどこかにあったと思うんです。そんな彼らの意識を変えたある出来事がありました。

 

何カ月かに1回行われる、彼らが楽しみにしている遠足でのことです。旅先で偶然、販売先を訪ねることがありました。そこで、店員さんが自分たちのつくったかりんとうを丁寧に説明をして、お客様が笑顔で購入していく姿を目の当たりにしたそうなんです。

 

このことがきっかけで彼らにプロ意識が芽生えはじめたんです。自分たちがつくっているものは、人を笑顔にすることができるんだ!と実感したことで、かりんとう作りへの意識が変わりましたね。今では週に200kgを製造する一つのメーカーとしてともに切磋琢磨しています。」

 

 

パッケージデザインに想いを込めて

 

ともだちビスケット



大地のおやつ

 

大地のおやつシリーズはどれも大切なストーリーがあり、パッケージデザインにもとことんこだわっています。デザイン面についてもお聞きしました。

 

 

山本社長:「パッケージのデザインは、おやつの良さが伝わるように、イラストレーターさんと相談してつくっています。どのお菓子にも大切なストーリーがあるので、そんな僕らの想いをパッケージに表現してくれたのが、2人のイラストレーターさんです。三重県出身の矢田勝美さんと、伊賀市在住の田槙奈緒さん。このお2人にイラストをお願いしています。

 

イラストが出来上がり、印刷会社にこの色でお願いしますと言っても、その通りにならないことがよくありました。ですので、パッケージが出来上がると、印刷工場まで直接色を確認しにいくんです。印刷をしたときは納得していても、いざ店頭で並べたときに暗く見えたらまた色味を明るくしてもらいます。僕たちはそこまで徹底して、伝えることを大事にしてます。」

 

 

それぞれにストーリーがあるおやつ

 

一つひとつ想いが込められている「大地のおやつ」。今回は、その中からピックアップし、ストーリーと合わせて商品をご紹介します。

 

 

ツバメサブレ

 

ツバメサブレ

 

ツバメサブレは、滋賀県日野町の農家「大地堂」が育てたディンケル小麦に出会ったことで誕生しました。ディンケル小麦とは小麦が品種改良される前の古代小麦です。

 

この小麦を栽培しているのが「大地堂」の廣瀬さんです。2005年に栽培をはじめ、2007年に収穫に成功されました。特徴としては、通常の小麦よりも香り高くしっかりとした味わいがあると言われています。また、ビタミン・ミネラル・アミノ酸・食物繊維が豊富に含まれているのも大きな特徴。ツバメサブレでは、ディンケル小麦の石臼挽き全粒粉を使用し、さくっと焼き上げています。焼菓子シリーズの中でもまっちんさん渾身の力作だそう。

 

 

3じのビスケット

 

3じのビスケット

 

3じのビスケットはおいしい揚げビスケットが作りたい。そんな想いから開発をスタート。使用している原材料は、北海道産小麦粉をベースに風味豊かな石臼挽き小麦ブランを加え、他は粗糖、米油、自然塩、天然重曹のみです。

 

ビスケットの多くには、ショートニングが使われているのが一般的ですが、こちらのビスケットは一切ショートニングを使用していません。大量生産で利益を確保するメーカーは、日持ちができ、加工がしやすく、低価格などといった理由でショートニングを使用しがちです。しかし、まっちんさんはこのショートニングを絶対に使わないことを前提とし、試行錯誤を繰り返して完成したのが『3じのビスケット」』です。イラストに描かれている女の子が3時のポーズをしているものかわいらしくてほっこりします。ツバメサブレと同様高い人気があります。

 

 

ともだちビスケット

 

ともだちビスケット

 

生地のおいしさをそのまま生かしたシンプルな味わいの『ともだちビスケット』。お子さんも年配の方も、みんなが安心して食べられる、より日常に溶け込むお菓子を、より気軽な価格でとの想いから誕生したビスケットです。

 

ひとりのじかんに。 いつでもそばに。そんな想いを込めて 『ともだちビスケット』と名付けられています。サイズは小さなお子様でもお友だちと分けやすいように小さめにつくられています。

 

 

ご紹介した商品以外にもたくさんの魅力的なおやつがあるのでぜひ食べてみてくださいね。

 

 

長く愛されるおやつ作りを目指して


いぶき福祉会

 

現在は全国で300店舗以上で取り扱いのある『大地のおやつ』。「今後は、大地のおやつが購入できるショップやカフェ、まっちんのお菓子作りを間近で見られる場所、地域の人が気軽に訪れる場所をつくっていきたい」と笑顔で語ってくださった山本社長。

 

今回取材させていただき、もともと好きだった『大地のおやつ』がより一層大好きになりました。思わず手に取ってしまうかわいらしいパッケージに加えて、使用している素材はすべて安心して食べられるものばかり。親から子へ受け継いでいきたい大切なおやつです。

 

大地のおやつをお近くのライフスタイルショップで見かけたらぜひ手にとって見てくださいね。一口食べた瞬間、思わず笑みが溢れてきます。

 

 

【大地のおやつ】

https://www.m-karintou.com/

 

【山本佐太郎商店】

住所 :〒500-8084 岐阜県岐阜市松屋町17
定休日:日曜日・祝日