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「まり木綿」は名古屋芸術大学の同級生だった村口実梨さん(写真左)と伊藤木綿(写真右)さんのお二人による有松鳴海絞りブランドです。従来の有松鳴海絞りのイメージとは異なり、花柄や水玉のような愛らしい模様と、カラフルな色が女性たちから大変人気を集めています。
”伝統は「鑑賞」するのではなく、使い続けていくこと”をモットーに、今までにない自由な色使いと発想で、日々の生活に寄り添ったものづくりをされています。伝統を守りながらも、新しいチャレンジを続けるまり木綿のお二人。今回は、立ち上げの経緯や商品のこと後半では滅多に見ることができない、作業中の様子も含めてまり木綿の魅力をご紹介していきます。
まり木綿は、名鉄「有松駅」から徒歩数分の場所にあります。
まず簡単に有松鳴海絞りについてご説明します。
有松鳴海絞りとは、名古屋市緑区の有松・鳴海地域を中心に生産される絞り染めです。400年以上の歴史を誇り、国の伝統工芸品にも指定されています。その技法は100種以上におよび、『縫う』『括る』『挟む』の3つの動作を施すことで多彩な文様を表現しています。
−今日はよろしくお願いします!まず最初にお二人の経歴から教えていただけますか?
伊藤さん:「私たちはもともと、名古屋芸術大学のテキスタイルコースに在籍していました。有松鳴海絞りに出会ったのは、大学3年のときのことです。授業で、地場産業との連携プロジェクトということで、初めて有松鳴海絞りに触れたんです。
そのときに講師で来てくださったのが京都の和装ブランド「SOU・SOU」の代表である若林剛之さんでした。その際に代表が私たちが制作した生地をとても気に入ってくださり「商品化してみないか?」とお声をかけていただいたのが最初のきっかけです。在学中はSOU・SOUに商品を置かせてもらいつつ、卒業した年の5月にお店をオープンしました。」
−SOU・SOUさんがお二人の作品を気に入ったポイントはどんなところだったんですか?
伊藤さん:「みなさんがよく想像する、有松鳴海絞りといえば、凹凸した模様で藍で染めた渋めな印象だと思うんです。そんな中で私たちは「板締め絞り」という技法で、従来のイメージとは異なる、凹凸がなく、色をたくさん使った絞りを制作していました。
伝統技法と色彩感覚を合わせた、自由な発想や柄ゆきで、板締め絞りを染めた点などが、有松鳴海絞りの今までにないイメージとして認めていただけたのかな?と思っています。」
−まり木綿の特徴はなんですか?
伊藤さん:「まり木綿の大きな特徴は、「板締め絞り」に特化しているということです。板締め絞りは生地を屏風状に折りたたみ染め上げることで、連続した文様をつくりだすことができます。そこに、従来の絞りに使われている染料ではなく、発色のいい染料を使うことで、カラフルでポップな色合いの絞りをつくり出しています。」
−板締め絞りはとは、どういった技法になるんですか?
村口さん:「実は有松鳴海絞りと一言にいっても、100を超える技法があります。私たちが採用している「板締め絞り」は他の技法に比べると生産がしやすく、昔は赤ちゃんのおしめにも施されていました。大胆でモダンな印象の絞りに仕上がるので、ポップな色合いとも相性がいいんです。
また、染色によってにじみ方や、微妙に文様の形が変るので同じものがつくりにくい技法でもあります。同じ柄でも一枚一枚表情が違うことも魅力だと思うので、そこも楽しんでいただけるとうれしいです。」