こんにちは!酒好きライター・いずのうみです。おいしい料理とお酒を求めて、暇さえあれば酒場巡りをしています。年間100軒以上の飲食店に足を運んでいますが、特に立ち飲みや大衆酒場のような、誰でも気軽に楽しめる雰囲気のお店が大好きです。
名古屋で地元の人に長く愛され、味良し・雰囲気良しの名店を訪れる企画「名古屋の名酒場」。第一回目は、名古屋市中区、地下鉄伏見駅から徒歩2分の位置にある「島正」へ行ってきました。
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島正は、1949年(昭和24年)から伏見で続いている歴史ある酒場。屋台「きむらや」としてオープンして以来、戦後の伏見の人々とともに歩んできました。東京オリンピックを翌年に控えた1963年(昭和38年)、名古屋で屋台が全面廃止となった際に店舗を構え、何度か引っ越しを重ねて現在の場所に至ります。
創業75年を迎えるいま、お店の歴史と味を受け継いでいるのが、4代目の喜邑(きむら)竜治さんです。
お店は17時オープンですが、平日でも開店待ちの行列ができるほどの人気店。地元の常連さんだけでなく、観光客や会社帰りの方々など多くの人で賑わいます。
手間ひまかけて作られる
こだわりの「どて焼き」が名物
島正の看板メニューは「どて焼き」です。一般的には味噌おでんと呼ばれ、牛すじ肉や大根、豆腐などを八丁味噌で煮込んだ料理を言います。
昔は鉄板の上に八丁味噌で作った土手の中に水を入れ、焦がしながら煮込むことからそう呼ばれるようになったそう。島正では、創業当時から現在も変わらず「どて焼き」と呼ばれています。
島正のどて焼きは以下の具材があります。
・豆腐
・こんにゃく
・牛すじ
・大根
・玉子
・里芋
6種のどて焼きが一度に味わえる盛り合わせがおすすめです。
瓶ビールとどて焼きで乾杯!
さっそく、どて焼き盛り合わせと瓶ビールをいただきます。私は小さなグラスでゴクゴクと飲みたいので、ジョッキよりも瓶ビール派。
どて焼きは、甘みのない豆味噌を使っているため、見た目ほど味が濃くなくあっさりと食べられます。素材本来の優しい味わいと味噌のコクが重なりとってもおいしい!アツアツのどて焼きとよく冷えたビールは、一年中楽しめる組み合わせですね。
大きな大根は、下処理に3日間、煮込みに7日間、合わせて10日間もかけているのだそう。
大根は皮だけでなく実の外側も剥いて煮込むため、太い大根のみを厳選。豆腐は串で刺しても崩れないものを使い、煮込み時間は素材ごとに細かく調整するなど、一つひとつの工程にお店のこだわりが詰まっています。
牛すじはどて焼きとは別の鍋で煮込んでいます。脂の部分は極力削いでいるため、柔らかくあっさりした味わい。ときおりコラーゲンの部分がぷりぷりとしていて食感の違いも楽しめます。
牛すじの鍋に揚げたての串カツとさっとくぐらせた「味噌串カツ」も人気メニューです。外はサクサク、中はじゅわっとしていて、これまたビールが進みます!
このほか、鶏や魚の焼き物、惣菜系の一品料理などのメニューも充実しています。
島正に来たら、ぜひ頼んでほしい締めの一品が「どてオムライス」。どてめしの上にふわふわトロトロのオムレツが載っています。もともとは常連さんの要望ではじめたものが定番メニューとなりました。玉子の優しい甘さとどて焼きの奥深い味わいがご飯にピッタリ!老若男女を問わず人気の一品です。
屋台時代の面影を残す店内
島正の店内(1階)は、調理場をぐるりと囲むようにカウンター席が設けられています。これは、店員とお客さんが楽しく会話してにぎわっていた屋台時代の伝統を重んじているため。店内は常連さんだけでなく初めて来たお客さんも話しやすくアットホームな雰囲気で、いつも活気にあふれています。
島正が屋台だった頃は、栄から柳橋までの道に200軒ほども屋台が軒を連ねていたそうです。店内にはその当時の写真も飾ってありますよ。
もともと屋台の名前は「きむらや」でしたが、島正へ変更したのは、昭和時代に多くの人を魅了し剣劇を創出した劇団「新国劇」の俳優・島田正吾がきっかけでした。
新国劇の2大スターとしてカリスマ的人気を博していた島田正吾が「きむらや」を気に入り、新国劇のマークにサインをした暖簾(垂れ幕)を寄贈。それが屋台のトレードマークとなり、いつしかお客さんの間で「島正の店」と定着したことから、昭和30年代に正式に「島正」へと変更されました。
お店の看板にはいまも新国劇のマーク(二重の柳と蛙)が描かれています。
屋台がルーツの歴史ある名店。
島正のどて焼きで乾杯しよう!
島正は戦後の伏見で大衆とともに歩んできた歴史あるお店です。時代に合わせて味を調整していますが、名古屋の郷土料理で看板メニューの「どて焼き」と対面式の接客はいまなお変わることはありません。
一つひとつ丁寧に作られているどて焼きは味わい深く、ビールやハイボール、日本酒との相性も抜群。一人でもグループでも、おいしく楽しい時間が過ごせるでしょう。
地域の人に愛され続けて75年以上続く島正へ、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。