プロから学ぶ、空間づくりのポイント。(中家 拓郎さん)

2018.7.19
のらっこアセット英会話

これまでHouse Designsでは、インテリアショップ・工務店・グリーンショップなどさまざまなデザインのプロにお話を伺ってきました。今回は、いつもとは少し違った視点で、「デザインとは何か?」「空間づくりとは何か?」について考えてみたいと思います。

 

今回インタビューをさせていただいたのは、ウェディングを中心に、住空間、店舗、舞台演出など、さまざまな 空間デザインを手がけている中家 拓郎さん。前回はウェディングの空間演出について、事例を交えながらご紹介させていただきました。今回はイベント、店舗デザインなどの事例と合わせながら、空間デザインとは何か、じっくりとお話を伺いました。


前回の記事はこちら
http://life-designs.jp/magazine/takuro-nakaya/

 

 

今回お話を伺った中家 拓郎さん


オーダーメイドウェディングのプロデュース会社「Bridal Plus(Smile Stori inc.)」で、デザイナー・アート ディレクターを務めながら、フリーランスとしても、さまざまな空間デザインを手掛けている中家さん。中家さんが手がける空間デザインの幅はウェディングに止まらず多岐に渡ります。

 



中家さん: 「僕が扱う空間は、ディスプレイや一日限りのイベント、店舗の内装・設計・インテリア、公園やまちづくりまで、幅広くあります。エリアブランディングのプロジェクトで、ハードの活用の方法を考えるアドバイザーのような立ち位置で関わることもあります。プロジェクトの大小に関係なく、空間デザインは僕のライフワークの一部です。」



 

では、ここからは実際の事例と合わせながらご紹介していきます。

 

 

素材と仲良くなることで作られる空間
「TEDx Nayabashi」

 

TEDx Nayabashi

 

まずは、2014年に名古屋で開催されたイベント「TEDx Nayabashi」についてお話を伺いました。TEDはニューヨークに本拠地を置く団体で、TEDの精神である「ideas worth spreading(広める価値のあるアイデア)」のもと、ライセンスを受け、世界各地で発足しているコミュニティーがTEDxです。さまざまな分野のスピーカー(話し手)が登壇し、活動やアイディアを18分に凝縮してプレゼンテーションを行います。




中家さん: 「TEDx Nayabashiの空間デザインチームのディレクターとして、ダンボールという素材だけを使って、ステージやテーブル、ブースや照明シェードなどをデザインし、会場をつくりました。

TEDxの目的は拡散すべきアイデアを来場者の中で育て、実際に何かを生み出していくことでした。そのため、来場者がただ聞き手で終わるのではなく、登壇者や来場者同士での対話、イノベーションの種となるコミュニケーションとコラボレーションを誘発するような空間が求められました。」

 

イメージスケッチ

休憩スペースのイメージスケッチ。こうしたスケッチは中家さん自らが手書きで描いています。

 

ダンボールのテーブル
ダンボールでつくられたスタンディングテーブル。中心には、灯りが置かれています。

 

tedx





中家さん:「講演と休憩の時間を同じだけとり、休憩時間も質の高いアクティビティを生むことに注力しました。空間をデザインすることは、そこで過ごす時間をデザインすることでもあります。

人は、何もない真っ暗な空間にいると不安になり、どこにいれば良いかわからなくなります。その中に1つ灯りを置くとその周りに人が集まり、自然と対話が生まれます。

 

そこから発想を得て、4〜5人が囲うことができる円形のスタンディングテーブルの真ん中に、人の5感を刺激し、惹きつける要素を入れ込める仕様にしました。

そしてその要素は、時刻(朝・昼・夜)や講演の内容によって、変化していく。八丁味噌の社長と水耕栽培の第一人者の登壇の後の休憩では、水耕栽培のレタスと八丁味噌が入れ込まれ、その場で自由に収穫して食べることができます。それ自体が1つのコラボレーションになっていること、たった1日のための空間の時間軸を丁寧に考えることも重要な要素でした。」

 

ダンボールのライト

 

 

中家さん:「このイベントでは「ダンボール」という一つの素材を追求することで、強度、しなやかさなど、ダンボールの特性を知ることができました。今ではレーザーカッターや3Dプリンターなどの便利な機械がありますが、当時はあまり普及していなかったので、すべて手作業で行いました。1カ月間、毎日誰かが僕のうちに来て作業していましたね(笑)。すごく大変でしたが、このイベントをきっかけに、一つの素材を追求することの大切さを実感しました。素材を追求するということは、ダンボールだけでなく、木材、紙、布、すべての素材にいえることだと思います。」

 

 

意味が込められた素材を使う
「cafe kinari」

 

cafe kinari

 

cafe kinari

 

続いて店舗デザインの事例をご紹介していきます。


中家さん: 「大須の「cafe kinari」というカフェの内装デザインを担当しました。ここでは、床やカウンターの壁に、小学校や中学校のテーブルの廃材をタイル状に加工して、モザイクタイルのように貼り合わせています。実際に使われていたものなので、表面を良くみると、相合傘や、テストのカンニングなどが書かれた跡が見つかるんです

よ。僕も昔、落書きや彫刻刀で彫ったことがあるような気がします(笑)。」

 

cafe kinari


中家さん:「造作家具を頼んだ職人さんがたまたま見つけてきた素材で、それを採用したのですが、ここには学校の放課後のように自由に過ごして欲しいなという想いを込めています。ただご飯を食べたり、お茶をして帰るのではなくて、勉強している人もいる、話している人もいる、読書している人もいる。そんな放課後のように、どこか居心地が良くて、つい長居したくなる空間にしたかったんです。学校のテーブルは、誰もが懐かしいと思うものですしね。それと気づかなくても、ただ綺麗な空間よりも落ち着くかなと。」

 

cafe kinari

 

cafe kinari


選ぶ素材一つでも、その空間に込めた想いを表現できるんですね。デザイン、形、価格だけでなく、どんな空間にしたいか、どんな想いを込めたいか、そんな視点から素材を選ぶのも良いのではないでしょうか。

 

【cafe kinari】
住所  :愛知県名古屋市中区大須二丁目23番34号 大須GATEビル3F
アクセス:地下鉄鶴舞線 大須観音駅2番出口 徒歩1分
営業時間:11:30~22:00
電話番号:052-201-2585

http://cafekinari.com/

 

 

子供がよろこぶ工夫がいっぱい
「のらっこアセット英会話」

 

のらっこアセット英会話

 

続いてご紹介するのは、子ども英会話&速読のスクールの内装デザインです。

 

中家さん: 「3年ほど前にウェディングを担当させていただいた当日の新婦さんからの依頼で、子ども英会話と速読の教室の内装デザインを担当しました。クライアントである、のらっこ先生のテーマは「森の教室」と「宇宙の教室」。森の教室は速読、宇宙の教室は英会話のスペースになっています。宇宙から雨が降ってきて、木が生えて、その下で本を読むというストーリーです。子供たちがよろこぶ、そして自主的に行動したくなるような工夫を随所に凝らしました。



 

設計者さんや職人さんに無理をお願いすることもありました。それでも今できる最大限のことをしたい、必要としてくれたことに応えたいと思い、なんとか形にすることができました。」

 

のらっこアセット英会話
カバンをかける水滴型のボタン。自分でかけやすいように子どの手の届く高さになっています。

 

のらっこアセット英会話
子どもが自分で開け閉めしたくなるようにと、ハンドメイドで製作したドアの取手。過去の結婚式で使った木材を磨いて取手にしたそう。

 

子供たちがよろこぶ工夫、子供たちが自主的に行動したくなるような工夫は、住まいやインテリアにも活かせそうなアイディアです。

 

のらっこアセット英会話
エントランスの看板。「Forest」「Space」の文字は中家さんの手書きです。


温かみのある空間にはこんな秘訣がありました。


中家さん: 「僕は木工も家具製作もできないですが、自分でできることは、できるだけ自分の手を動かしてつくるようにしています。例えば、エントランスの「Forest」「Space」という看板は、木の板をやすりがけして、僕がペイントしました。他にも、木陰で本を読むイメージにしたかったので、既存の照明に手づくりの大きな葉っぱを組み合わせて、オブジェのに変えました。リボンカーテンをどうしても使いたいという希望もあり、布の色など迷いながらも選び、スタッフに力を借りて全て手作りしました。手づくり感満載で、完璧ではないかもしれませんが、手でつくるからこその温かみが僕は好きです。」

 

のらっこアセット英会話
木陰の読書をイメージした、木のオブジェ。照明は中家さんもご自宅で愛用されているという「季節のペンダント」という作家さんのもの。

 

できるだけ自分の手を動かしてつくる。まさにDIYの考え方そのものです。住まいやインテリアにおいても、プロにお願いする部分、自分たちでつくってみる部分を分け、手づくりだからこその温かみをプラスしてみてはいかがでしょうか。

 

のらっこアセット英会話

 

のらっこアセット英会話手づくりのカーテン。後納品で、宇宙の教室にもカーテンをプラスされたそう。

 

中家さん: 「引越し後すぐに、のらっこ先生の夢の1つだった生徒100人を達成しましたが、なんと年度末をまたず150人になったそうです。とても小さな教室なので、定員でお断りせざるおえないこともあるくらい、入塾希望も多いようです。1年経った今でも「毎日こんな可愛い教室で仕事が出来て幸せです」とメッセージをいただきます。夢の実現の1つを僕に託してくれたことが何より嬉しいです。」

 

【のらっこアセット英会話】
住所  :愛知県春日井市旭町1-6 ままま勝川1階
営業時間:14:00~20:00(平日) 10:00~12:00(土曜日)
http://noracco.com/
https://www.facebook.com/noraccoasset

 

 

共にストーリーを考える楽しさ
「空間演出×音楽番組 アポローン」

 

アポローン

 

続いて、舞台美術の事例を教えていただきました。

 

中家さん: 「日本大学芸術学部の日芸祭2017で、放送学科が主催する空間演出×音楽番組「アポローン」にゲストとして、参加させてもらいました。ダンサーさんの踊る空間を演出して欲しいという依頼でした。生放送の番組の一部という特性もあり、自分で事前施工ができないため学生たちが施工でき、CM中の1分で撤収できるものであること、また予算もあり低コストでなければならないことなど、とても難しい条件がありました。」

 

 

 

中家さん: 「30mの白い布を一枚だけ現地で買い、道具は使わず、人の手による「裂く」「結ぶ」という2つの行為によってつくられるミニマムな舞台美術を考えました。意識したのは、制限と対比です。無彩色である白と黒、光と影。幾何学的な配置と直感的なバランス、布というマテリアルのしなやかさと力強さ、ダイナミックなダンスに対する静かな空間の態度。また番組の後半がプロジェクトマッピングによる演出だったので、そこの対比も大切にしました。制作では10人くらいの学生たちが協力してくれて、材料の買い物から完成までを1日で行いました。



 

この事例で感じたことは、誰かとともにストーリーを考える楽しさです。ダンサーのERlkaさんとの顔合わせの後、帰りの電車が一緒だったんです。電車の中の雑談で、コンセプトやモチーフが決まっていきました。前半・後半で変化をつけたいこと、ダンスだけでなく表情やしぐさで演じたいこと。そして生まれたのが鳥かごのイメージです。コラボレーションをする相手との対話を通して、自分の作品も変化していくのが新鮮でした。」

 

 


中家さん :「完成したストーリーは、「捕らわれている少女が自由になる夢を見る」という物語でした。鳥かごの影の中でうずくまっている少女、曲が始まると少しずつ、自分が自由に動けることを知り、走り回ったり、飛ん跳ねたりします。でも最後はまた暗闇に囚われて終演します(苦笑)。悲しいストーリーですが、これは彼女と対話したからこそ生まれたものです。



 

誰かと対話しストーリーをつくることは、舞台演出だけでなく、空間デザインに共通してることだと思います。僕のアイディアなんてちっぽけなもので、それを一緒に形にする仲間やパートナーがいるから成り立っています。店舗デザインや住宅デザインでも、考え方は一緒。一人一人の考えやアイデアを出し合って、ストーリーを完成させることは、空間デザインの大切なポイントの一つだと思っています。」

 

番組の様子はこちらから
https://www.youtube.com/watch?v=WUxpIBSrAJo&feature=youtu.be&t=1m

 

 

余白をのこすデザイン
「コミュニティビル MINGLE 」

 

コミュニティビル MINGLE

 

いま現在、取り組んでいる岐阜県美濃加茂市のプロジェクトについて話していただきました。



 

中家さん:「岐阜県の美濃加茂市役所でまちづくりコーディネーターとして活躍されている恩人からのご縁で、美濃加茂市の方々と繋げていただき、いくつかのプロジェクトに関わらせていただいています。」

 

カフェスタンド(tunagu cafe)
カフェスタンド(tunagu cafe)

 

 


中家さん:「

昨年は、日本昭和村という名前で長年親しまれてきた都市公園が、ぎふ清流里山公園(県立公園)としてリニューアルオープンするにあたり、公園入り口にある、おんさい館(みのかも道の駅)の中にオープンする、こだわりのある農家さんの野菜市場(tunagu ichiba)、新鮮野菜と果物を使ったメニューを提供するカフェスタンド(tunagu cafe)のデザインやディレクションに携わりました。一般社団法人tunaguが運営しています。」


【ぎふ清流里山公園】
https://satoyama-park.gifu.jp

 

コミュニティビル MINGLE

 

中家さん:「今年は、 駅前の3階建ての小さな空きビルを、リノベーションの力でコミュニティビルMINGLEとして生まれ変わらせるプロジェクトに、デザインの部分で関わっています。1階はカフェ・バー、2階はゲストハウス、3階はシェアオフィスになる予定です。地域の人たちを巻き込んで、掃除イベントや活用方法を考えるワークショップまで、なんども行われてきましたが、いよいよ1階部分の工事が始まりました。

 



これらのプロジェクトには、企業、地元の有志、地元住民、行政関係者、ワーキングホリデーで滞在していた学生など、たくさんの方々が関わっています。だからこそ、全てを作り混むのではなく、あえて余白をつくることが重要だと思っています。

 

たくさんの人が想いを1つの形にしていくことは、簡単なことではないのかもしれません。家づくりでも家族の想いが最初から同じではないかもしれませんね。最初から決めすぎず、住みながら育てていくような余白の空間をつくってみてはどうでしょうか。

」

 

コミュニティビル MINGLE


中家さん:「デザインは、形の定まっていないものを決めていくことですが、たくさんの人がそれぞれの立場で関わりながら実現していくプロジェクトでは、決めすぎることがときに誰かの想いを壊すリスクがあるのかもしれません。コンセプトを決め、イメージを共有していくにつれて、より具体的な想いが形として現れてきます。その受け皿がないとみんなの想いを形にしたみんなに愛されるデザインはできないと思うのです。

 



僕が用意できるのはあくまで6〜7割くらいなのかもしれません。そこから先は関わる一人一人によって形になっていきます。」


【MINGLE】
http://nagoya.identity.city/mingle/

 


その他の事例も少しだけご紹介していきます。すべてに共通していることは、デザインのストーリー・意味がしっかりと考えられているということ。そしてそのストーリーを元に、仲間とつくり上げられた空間であるということです。

 

JAPAN CRAFT BEER GARDEN @LACHICJAPAN CRAFT BEER GARDEN @LACHIC

 

三十路祭り in Nagoya三十路祭り in Nagoya

 

某マンションの1棟まるごとリノベーション計画)
某マンションの1棟まるごとリノベーション計画

 


最後に中家さんのお話から住まい、インテリアに活かせる考え方をまとめたいと思います。

 



①素材を良く知ると特徴をデザインに生かすことができる

②素材や物の背景を考え、意味の込められたものを使う

③子供が自主的に行動する工夫を考えてみる

④自分の手でできることはやってみる

⑤対話し空間のストーリーをつくる




結婚式の事例同様、空間デザインでも大切なことは「本質的な意味」を考えることでした。表面的なデザインや、見栄えを考えるのではなく、どういう空間にしたいのか、どんな想いを込めた空間にしたいのか。そういった背景が明確です。だからこそ中家さんのデザインはどれも他にはない魅力があるのだと思います。そして、信頼できる仲間やパートナーとともに、できるだけ自分の手でつくり上げていく。それこそが、良い空間づくりには欠かせないポイントだと教えていただきました。


 

 

【profile】
中家 拓郎 TAKURO NAKAYA
1985年生まれ。飛騨市、高山市で高校まで過ごし、三重大学・大学院で建築デザインと都 市計画を専攻。 修了後、(株)内藤建築事務所へ入社し、公共建築などの意匠設計に携わ る。京都・名古屋での勤務を経て、2012年よりフリーランスとして活動を開始、2013年に 個人事務所を設立。2014年よりBridal Plusと提携、2016年よりSmile Story(株)取締役に 就任。イベントやウエディングから住宅や店舗の内装デザインまでフィールドを問わず、こ れまで100件以上の空間デザインプロデュースを手がけている。

Instagram:n2_works
mail:nakaya.takuro@gmail.com
HP:bridal-plus.jp / smile-story.jp