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多治見駅から徒歩5分ほど、ながせ商店街にある複合施設「ヒラクビル」。「宝石時計メガネのワタナベ」として、長きにわたり、商店街の顔であったビルをリノベーションし、本屋・喫茶店・シェアオフィス・レンタルルームを併設した複合ビルとして2019年3月、新たな施設として生まれ変わりました。
ながせ商店街とは?
まずは、ヒラクビルのある「ながせ商店街」について簡単にご説明します。
ながせ商店街は明治時代、多治見駅の開業を機に陶磁器産業とともに発展。時代を経るごとに、生活用品や生鮮食品、娯楽施設など、市民の生活を支える商店街として盛えていきました。多くのお店が閉店を余儀なくされる中、現在も60店舗が軒を連ね、多治見の暮らしを支え続けています。
ヒラクビルがあるのは、そんな商店街の一角。多治見駅から5分ほどの場所にあります。
館内は、東文堂が運営する書店「ひらく本屋」を中心に、本を楽しみながらホッと一息つける喫茶店「喫茶わに」を併設しています。また2Fには、シェアオフィスやレンタルルームもあり、地域の人たちの交流拠点となる場所を目指しています。
商店街の拠点となる場所を目指して
なぜ、ヒラクビルをスタートすることになったのでしょうか。運営会社「多治見まちづくり株式会社」の小口さんにお話をお伺いしました。
小口さん:「多治見まちづくり株式会社では、商店街の活性化をメインに事業を展開しています。その事業の一つとして、最初に手がけたのが「カフェ温土 (おんど)」です。そこを会社の顔として運営をしていたのですが、会社として、もっと商店街を変えていきたい。商店街の中心拠点となるような場所が欲しいと思っていました。
そんなときに、閉店後空きビルになっていたここを見せていただける機会がついたんです。このビルは、もともと「宝石時計メガネのワタナベ」として、商店街のシンボル的な存在でした。実際に中を見せていただくと、広くて、なんでもできるぞって思ったのが最初の印象でしたね。
地域一番店だったので、つくりも豪華で、地元のタイルが施してある空間もある、床は赤絨毯。なんとかこの場所を再活用したいと動きはじめました。」
ヒラクビルができるまで
1Fの正面には圧巻の階段がお出迎え。
小口さん:「ビルを再活用するにあたって、最初に直面した問題が改修費用です。広さがあるので、いったいどの程度費用がかかるのだろうかと心配していました。ところが見積もりを出していただくと、実現できそうな金額だったんです。
これならなんとかなりそうだと思い、本格的に事業がスタートしました。なにをやろうかとさまざまな意見がでる中で、行き着いたのが本屋だったんです。たまたま多治見の書店・東文堂さんとつながりもあったので、書店をつくることで、周辺のお店ともつながる場所にしたいと考えました。
例えば、本があれば、本の中に出てくる食べ物のメニューを近くの飲食店でイベントの一つとして提供できます。また、本屋さんには商店街のおすすめ商品を並べることで、相互のやりとりができると思ったんですね。ビルを通して、まち全体とつながっていけると考え、東文堂さんの協力のもとキーテナントとして本屋をオープンすることになりました。」
シャンデリアは、ビルに残っていたメガネのレンズをリメイクして制作。
美濃焼タイルがたくさん貼られた迫力のある柱
−リノベーションをするにあたってこだわったポイントはありますか?
小口さん:「一番のポイントは、物にしても、内装にしても、あるものを活かしている点です。すべてを新しくするのではなく、使えるものはそのまま活かして、地元の資材を使ってリメイクしています。
また、多治見はタイルの産地でもあるので、至るところにタイルを施しました。本棚のタイルは地元の方や子どもたちにボランティアで手伝っていただきました。壁や床の塗装も自分たちで塗ったんです。オープン2カ月前になると、毎日ペンキまみれで作業していましたね(笑)。
できることは、自分たちの手でやったので、すごく思い入れがあります。トラブルもありましたが、毎日誰かしら遊びに来ては手伝ってくれるので、地域の人たちとの絆も深まりました。」
多治見タイルを使った本棚。地元の子どもたちやボランティアと協力してつくりあげたのだそう。
ドアノブのタイルは、商店街の別の物件で使われていたものを再利用しています。
喫茶わにのセンターテーブルと椅子は、メガネ屋だった当時のものをリメイク。
フロアのいたるところに、ビフォアー写真が置かれているので、チェックしながらビル内を見てまわってもおもしろいですよ。
まちへ、未来へ、ひらいていく
レンタルルーム
看板の文字も、陶器でつくられています。
−店名はどうやって決められたのですか?
小口さん:「店名の由来は、本をひらくや目をひらくといった、小さいなひらくから、未来をひらくまで、この本屋をきっかけに多治見のまちがこの本屋をきっかけにひらいていくという想いを込めて、ビルの名前をヒラクビルに。
未来がひらかれていくことを願って、キーテナントとなる本屋を「ひらく本屋 東文堂」と名付けました。本の選書も、ひらくを軸にテーマに基づいてセレクトしています。」
ひらくのコンセプトをしっかりと伝えていくため、商店街のいたるところにフラッグがかかっています。
時が再び、動き出す。14:48のオープン
入り口には、旧ワタナベ時計店時代の世界時計が今もなお、時を刻み続けています。そこにはこんな秘話がありました。
小口さん:「旧ワタナベ時計店が幕を閉じたのは、今から4年前、平成25年のことです。それ以来、この時計は2:48で止まったままだったんです。なんとかこの時計たちを再び動かしたい。そんな想いから、さまざま手を使って試みたんですが、なかなか動きませんでした。
近所の時計屋さんにも協力していただいて、なんとか電気を通すことに成功したんです!時計が動きはじめたときは本当にうれしかったですね。
時計が止まった時間が2:48だったので、午後2:48をヒラクビルのオープンの時間にしました。当日スタッフのドレスコードは、メガネに。僕はビルに残されていたメガネの中からフレームと自分に合うレンズを探してメガネをつくっていただきました。こうして、みなさんの協力を得て、無事にオープニングを迎えることができました。」
ここからは、ヒラクビルの楽しみ方をご紹介していきます。