目次
やきものの街・愛知県常滑でLIXILが運営する「INAXライブミュージアム」窯のある広場・資料館が、2019年10月にリニューアルオープンしました。
リニューアルされたのは、施設の中で最も歴史が長く1986年に開館した「窯のある広場・資料館」。築90年を超え、建物の老朽化が進み、この先もずっと残していけるようにと保全工事が行われました。
今回は、展示の装いを新たにオープンした「窯のある広場・資料館」のみどころをレポートしていきます!
「窯のある広場・資料館」とは
1997年に国登録有形文化財(建造物)に登録された「窯のある広場・資料館」。1971年まで土管などのやきもの製品を製造していた工場を保存公開したものであり、常滑の近代産業の営みを伝える貴重な建物なんです。
築90年を越え、建物の老朽化が懸念されたことから2015年に調査を開始。約3年間の保全工事を終え、2019年10月にリニューアルオープンしました。
100年後も残る、常滑の近代産業を伝えるシンボルとして
建物に入る前に、ぜひご覧いただきたいのが煙突です。高さは22m。使用されている煉瓦(れんが)はなんと3万個以上!
かつて常滑にはたくさんの煙突や窯がありました。しかし、使われなくなった煙突や窯は劣化が加速します。そのため多くの煙突が取り壊され、街の風景は大きく変わっています。そこで、「100年後の人たちにも、常滑の近代産業を伝えるシンボルとして遺す」ことを目指して保全工事が進められました。
そして驚いたのが保全工事の方法。
当時の姿に出来るだけ近く保全しながら耐震補強をするため、すべての煉瓦にナンバリングし位置を記録。耐震補強した煙突に、既存煉瓦を元の位置に張り付けたのだそう。ものすごい労力です。
では、いよいよ建物に入ってみましょう!
ミュージアムの総合受付として
リニューアルを機に、ミュージアムの総合受付も設けられました。6館からなるINAXライブミュージアム。来館された際は、「窯のある広場・資料館」から訪れてくださいね。
窯炊きの様子を再現!「窯プロジェクション」
入り口すぐそばにあるのは「窯プロジェクション」。開口5.5m・奥行き11m・高さ3.4mの煉瓦造の窯は、ものすごい迫力です。
一体どんな展示なのでしょうか。中に入ってみましょう!
こちらが窯の内部。1971年まで、土管や焼酎瓶、タイルなどを、実際に焼いていた石炭窯です。
煙突の煉瓦と違い、取り外して耐震補強することができませんでした。そこで、見学者が入る場所は、鉄骨シェルターをつくり安全を確保。それ以外の場所は、できるだけ当時の形に復元されました。
やきものの粘土の成分と食塩が化学反応を起こし、こうしたツヤっとした飴色に仕上がりになるのだそう。ぜひ当時の姿を残す、窯の内部にも注目してみてくださいね。
いよいよプロジェクションマッピングスタートです!
上映は「土管を焼く」と「土管を生きる」の2本立て。(ともに約3分)臨場感あふれる映像と音を体感しながら、やきものや常滑の歴史についてわかりやすく学ぶことができます。
特に窯の中で炎が燃える映像は大迫力!窯焚きの様子を臨場感たっぷりに再現しています。実際の窯内の温度は1,000℃を超えていたのだとか。
フォト・ギャラリー
「やきものの街 常滑 昭和38-39年」
フォトギャラリーでは、やきものの街”常滑”に魅せられ、街の様子を撮影した写真家 山田脩二氏の作品が紹介されています。昭和30年代、土管製造最盛期の常滑の活気が伝わる写真を常設展示。市内には400本近い煙突が立っていました。
こんなにもたくさんの窯や煙突があったのだと、思わず見入ってしまいました。
スコープを覗くと見える!「ものづくりの魂」
煉瓦窯の周りは回遊できるようになっており、窯の造りをじっくりと観察することができます。
また、土管成形に使用していた道具や機械も展示されています。
こんな仕掛けも。設置されたスコープを覗くと……
当時の職人たちが窯を焚いたり、土管を運び込む様子が映像で再現されていました。まるで本当にそこにいるかのような、リアルさです。
2階へ行ってみましょう!
2階は、当時は成形された素地の状態の土管を乾かす乾燥室として使われていました。
土管は直径30cmのもので1本約30キロ。運ぶのは重労働でした。そこで、写真のような「伊奈式運搬車」を使い、土管を運んでいたのだそう。
合理性を追求した工場建築
2階に上がったら、ぜひ建屋、特に小屋組みに注目してみてください。
工場の建屋は、窯と同じくヨーロッパの技術を取り入れた当時としては先進的な建築でした。妻側の梁は木造の限界に近い16m。合理性を追求したスリムな構造が特徴です。
リニューアルでは、2階の床材の一部が撤去され、1階からも小屋組みを見学できるようになりました。建築好きにはたまらないはず!
常滑でつくられたやきもの
常滑と言えば、やきものの街!
明治から昭和にかけて、常滑でつくられたやきもの製品と道具が展示されています。
「やきもの散歩道」で見かける焼酎瓶もありました!あの道や壁に使われているやきものは、こんな形をしているのかという発見がおもしろかったです。
最後は屋根に注目!
外に出たら、ぜひ屋根に注目してみてください。
瓦の色合いや風合いにもこだわり、写真家・山田脩二氏が、1980年から淡路島のだるま窯で焼き続けた「あわじ瓦」を使用しています。山田氏は、常滑などの街並みを撮影するうちに瓦の魅力にはまり、自ら職人になったのだそう。
手作業でつくられる瓦は、その日の天候や光のあたる角度によって、色味や風合いが変化します。
今回は、「窯のある広場・資料館」のみどころをご紹介しました。ただ、保全や改修を行うのではなく、常滑のやきものの歴史や文化を後世に伝えたいというLIXILの熱い想いを感じる展示の数々でした。
INAXライブミュージアムでは、やきものの街・常滑ならではの文化や伝統に触れながら、6つの施設が楽しめます。季節によってさまざまな展示やワークショップも開催されているので、何度訪れても楽しめますよ。家族でやきものについて、楽しみながら学んでみてくださいね。