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緑豊かな丘の上に、三角屋根と土色の壁がほっこり可愛らしい佇まい。
新東名高速「浜松浜北IC」から約10分。かつて城下町や宿場町として栄えた街、浜松市北部の天竜区二俣町に、今回ご紹介する「秋野不矩美術館」があります。
ここ二俣町のご出身である日本画家 秋野不矩(あきのふく)さんは、数々の賞を受賞しており、天竜市(現 浜松市)の名誉市民です。その功績を称えて建てられた市立の美術館で、設計者は、建築家 藤森照信さん。藤森照信さんといえば、自然の原理や素材を活かした建築で有名ですが、この美術館は秋野不矩さんたっての希望で、藤森さんを設計者に推薦したそうです。
美術館の開館は1998年。訪れたときは完成から21年の歳月を経ていましたが、古びれた雰囲気は全くありません。むしろ月日を経たことで、作品やそこにある空気感と馴染み合い、いっそう魅力が増している印象を受けます。その魅力を余すところなくお伝えしたいと思います。
美術館までの道のりを楽しむ
秋野不矩美術館の入口は、少しわかりづらいかもしれません。
写真(上)の看板を目印に中に入ると、まず左手に駐車場があります。車で来られた際には、こちらに駐車しましょう。(足腰に自信のない方は、坂の上に少しですが駐車場があるのでそちらをご利用ください。)
駐車場から坂道をのぼります。(早くて2分~ゆっくりで5分くらい)
道中は、さまざまなものが目を楽しませてくれますよ。
沿道にある、季節ごとの顔をみせる木々や草花。
ふと上を見上げると、風合いのある照明。足元の溝蓋は木。昔使われていた電柱に取り付けられたレトロな傘の白熱灯は、人気の被写体です。
途中、後ろを振り返ると、美術館がそびえ立っていることに気づきます。
上にのぼると低層建築ですが、敷地に高低差があるので足元は立派。下から見上げたときの、天竜杉が張られた基礎は大変迫力があります。
景色を楽しみながら、また写真を撮りながら進むと、あっという間に美術館に到着です。ちょっとした運動をした気分。
見えてきました、三角屋根。
二階建て、RCと木造の混構造。屋根は長野の諏訪地域産の鉄平石葺き、外壁はモルタル塗り部分と天竜杉板張り部分と。建物上部から2本飛び出しているものは雨どいで、雨の日はここから水が勢いよく流れ出る様子が見れるそうです。
「藤森照信建築」といえば、最近では滋賀県近江八幡市にある「ラ コリーナ」や、岐阜県多治見市の「モザイクタイルミュージアム」が話題にのぼりますが、どことなく似た雰囲気が感じられるでしょうか。
靴を脱ごう
中に入ると、まず靴を脱ぎます。入口横の靴箱に預けて、スリッパに履き替えましょう。
床は藁入りのモルタル仕上げで、柔らかな足触り。スリッパは職員の方が毎朝拭きあげてくださっているそうでピカピカです。
入るとすぐ、太く立派な柱が支える吹き抜けが目に入ります。大黒柱は樹齢120年の天竜杉。チェーンソーで荒く面取りし、上部はバーナーで炙り、漆喰壁との対比で、質素でシンプルな空間に仕上がっています。その他の柱や梁材も地元天竜杉を多く使っており、主要な木は藤森さんが不矩さんと一緒に選んだそうです。
受付横のホール
ホールでは、さまざまな資料を見ることができます。
ここでスリッパを脱ぎ、その先が展示室になります。