岐阜から全国へ。30年後も愛されるおやつ作り「大地のおやつ 」(山本佐太郎商店)
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スーパーへ相談に……何か違う
山本社長:「本格的に販路を拡大するにあたり、スーパーへ相談にいきました。そこで言われたのが「消費者の購買行動は0.2秒で決まるんだから、中身が見える包装で、価格ももっと抑えてください」という要望でした。僕たちがつくるお菓子とは真逆だったんです(笑)。
大地のかりんとうのパッケージは、ただ単純にデザインを追求しているだけではありません。素材をアルミにすることで、遮光性という大事な機能を果たしています。材料も安全性とおいしさを優先。袋詰めは機械ではなく人の手でおこなうことで割れを最少限に抑えており、すべての工程に手間ひまをかけています。だからこの価格になるということをしっかりとお伝えした上で、取引をしたいと思いました。
そこで考えたのが、お客さまにきちんと伝えてくれるライフスタイルショップや雑貨屋さんに置いていただくことです。ライフスタイルショップには、日々の暮らしを大切に丁寧に暮らすことに長けた人が訪れます。そういう方たちに支持されていくことで『大地のかりんとう』はじわじわと人気が広まっていきました。」
福祉施設としてではなく、メーカーとして
こうして、大地のかりんとうは着実に売り上げを伸ばしていきます。そんな中、製造が追いつかない事態が発生します。
山本社長:「実は、一時期かりんとうが売れすぎて生産が追いつかないことがあったんです。「なんでこんなに作らなくてはいけないんだ」と不満の声が上がっていました。それまでの彼らは与えられた仕事をこなすだけの義務感がどこかにあったと思うんです。そんな彼らの意識を変えたある出来事がありました。
何カ月かに1回行われる、彼らが楽しみにしている遠足でのことです。旅先で偶然、販売先を訪ねることがありました。そこで、店員さんが自分たちのつくったかりんとうを丁寧に説明をして、お客様が笑顔で購入していく姿を目の当たりにしたそうなんです。
このことがきっかけで彼らにプロ意識が芽生えはじめたんです。自分たちがつくっているものは、人を笑顔にすることができるんだ!と実感したことで、かりんとう作りへの意識が変わりましたね。今では週に200kgを製造する一つのメーカーとしてともに切磋琢磨しています。」