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名古屋市昭和区にあるスリランカ料理のお店「MEALS & ROTTI by PAHANA(ミールス&ロティ バイ パハナ)」(以後「パハナ」)。地下鉄御器所駅、吹上駅からそれぞれ徒歩5分、大通り沿いに面した場所にあります。
パハナのオーナーであるスリランカ人のマンジュラさんに、スリランカ料理の特徴やこだわりなどを伺いました。
スリランカの「定食屋」と
オーガニック野菜のこだわり
パハナはもともと金山に店舗を構えていましたが、「バー」をコンセプトとしていたためコロナ禍でその形態が難しくなり2020年2月に閉店。バーよりも「定食屋」の方が今の時代に合うだろうと考え、2020年9月に御器所店をオープンしました。
マンジュラさん:「店名のミールスは定食、ロティはスリランカで一般的に馴染みのある焼きパンのことです。スリランカの定食のスタイルにしたいと思い『ミールス&ロティ』という店名をつけました。『スパイス料理の食堂』みたいなイメージで、ランチもディナーも同じ値段にしています。」
パハナで使用している野菜は、8割が契約農家から直接仕入れたオーガニック野菜。ロティに使う小麦粉もその畑でとれたもので、イーストやベーキングパウダーは使わない自然発酵のパンです。パハナの料理は無添加・無化学調味料、ヴィーガン対応もできることが人気で、お客さんの9割は日本人だといいます。
契約農家さんには、日本では珍しいカレーリーフやウコンなどの野菜もリクエストして作ってもらうそうです。農家さんから仕入れている野菜は全部で約30種類。オーガニック野菜を仕入れる理由についてマンジュラさんはこう語ります。
マンジュラさん:「僕はスリランカの田舎出身で、高級ホテルで働いたこともあるけど実家の素朴なご飯が一番おいしかった。余計なものを入れない、自然で体にいいものを日本のお客さんに提供したいと思っています。オーガニック野菜を使ったり、化学調味料を使わなかったりすることは僕にとって当たり前の選択なんです。」
最初はスリランカ料理が
一般的に受け入れられなかった
マンジュラさんはスリランカで日本人女性と知り合い、結婚したことをきっかけに2002年に来日。スリランカでシェフとして働いた経験を持つマンジュラさんは、自身の店を出したいと思い2004年に稲沢市でお店をはじめました。
マンジュラさん:「最初にミールスを出したけど、お客さんに全然受け入れられなかったんですよ。当時はまだ、今みたいなスパイスカレーや本格的な現地の料理を出す店が少なかった。それで、仕方なく最初は他と同じようなカレーとナンを出していました。店名も『本格スリランカ料理』と看板に書いていたけど、全然ダメで。途中から『インド・スリランカ料理』に変えたら、お客さんが来てくれましたね(笑)」
時代やお客さんに合わせて試行錯誤を繰り返し、今のようなスタイルで料理が出せるようになったのは2010年頃だったといいます。
スリランカ料理とは
本格的なカレーを出すお店が増えてきたとはいえ、「スリランカ料理」はまだまだ馴染みが薄いもの。スリランカ料理とは一体どんなものでしょうか。
マンジュラさん:「日本の料理は醤油やだし、みりんを使いますよね。スリランカ料理はそれがスパイスに代わったものだと思ってもらえれば。日本ではいろいろなおかずとご飯を一緒に食べるのと同じで、スリランカもスパイスで作った料理をご飯と一緒に食べます。葉物やイモ系のおかず、酸味のあるもの、スープ状のものなどをバランスよく食べるんです。」
スパイスはあくまでも素材の旨味や食感を活かすもの。とろみを出すための小麦粉やペーストは入れず、食材とスパイスのみで作ります。パハナではマンジュラさんの実家で作るスパイスを仕入れ、店でブレンドして使っています。
マンジュラさん:「スリランカ料理の食べ方ですが、最初はおかずを一つずつ別々に食べて、その味を楽しみます。途中から好きなものを2つくらい選んで混ぜて食べ、最後は全部混ぜて食べます。最後まで味が変化し、飽きずに食べられるんです。添えてあるパパダン(薄いせんべいのようなもの)は、パリパリの食感が食欲をそそる役割をしています。最初に砕いてふりかけてもいいし、かじりながら食べてもいいんですよ。」
パハナおすすめメニュー
「ホームメイドプレート」
カレー3種・おかず4種・バスマティライス(パラパラの細長い米)・ワデ(上に乗ったドーナツのようなもの)・パパダン・サラダ・ココナッツチャトニが載っているバラエティー豊かなプレートです。使っている野菜は季節やその日によって異なり、レシピも決まっておらず食材に合わせて柔軟に作っています。
マンジュラさん:「今日のメインはマトンカレーですが、お肉も契約農家さんからジビエ肉を仕入れています。昨日までは鹿肉でしたよ。ジビエ以外のお肉はハラール肉(イスラム教の教えに則り適切に処理した肉)を使用しています。」
マトンの臭みはなく、ゴロゴロのお肉がうれしいパンチのある濃厚なカレーです。
右から大豆ミートの炒め物、ダル(豆)カレー、オクラのココナッツカレー。オクラと豆カレーはやさしい味わい、大豆ミートの炒め物はスパイスの辛味がきいています。しっかりした味つけで、パンチがあります!
右からサラダ、じゃがいものおかず、ケールの炒め物。農家から仕入れたケールとブロッコリーの葉っぱも使っています。葉物のシャキシャキ感が残りつつ、スパイスの味も感じられて、単体でも他のものと混ぜてもおいしい!
おすすめサイドメニュー「ワデとチャイ」
ホームメイドプレートの上に乗っていた「ワデ」。ウラド豆のペーストを発酵させ、スパイスを加えて作ったおかずドーナツです。ふわふわの食感と豆の味がしっかりと感じられる素朴な味です。
もう一つはひよこ豆を使ったワデ(左)で、こちらはよりスパイスがきいていて豆のつぶつぶ食感も楽しめます。これらのワデはプラス250円で料理に追加できます。
パハナのチャイは牛乳ではなく有機豆乳を使用しており、ヴィーガンの人でも飲めるということで人気があります。スリランカでは豆乳を使うのが一般的だそうです。
スリランカ産の茶葉に、しょうが・カルダモン・クローブ・シナモンが入っています。豆乳の豆の臭みを消すため、ブラウンシュガーを入れて飲みやすくしています。スパイスがきいた豆乳のやさしい甘味のチャイは、他のお店では味わったことのないものでした。パハナに来たら、ぜひ料理と一緒に頼んでみてください。
パハナでは最近、水曜日の夜限定でスペシャルメニューをはじめました。通常メニューでは出していない、さらにスリランカ独自の料理を提供しています。
マンジュラさん:「コロナ禍でお客さんもシェフたちも元気がないと感じていました。それで、何かみんなが楽しめることをしたいと思ったんです。お客さんはいつもと違うものが楽しめて、シェフたちも新しい料理を作ることで意欲が湧く。みんなが元気になればと思っています。」
常に人のことを考えているマンジュラさんの人柄もあり、パハナには常連さんが集まり、地域の方に愛されています。暖かい雰囲気のパハナに、本格スリランカ料理を味わいに行ってみてください。