江戸時代から続く伝統の健康食「八丁味噌」。「まるや八丁味噌」の蔵見学で、歴史と味噌造りを学ぼう!
目次
蔵見学で、間近で学ぼう!
さて、では実際に蔵見学で間近で学んでみましょう!まずは直売所で受付をします。
【見学時間】
9時00分~16時20分 入場 ※毎時00分、30分ごとに案内
(12時00分~13時00分の間は休み。最終の案内は16時20分となります)
※観光バスで混雑している場合、案内が出来ない時間帯あり
※団体の方は要予約。空きがあれば当日予約や来店もOK。お一人様も受付可。
【問合せ】
見学受付専用 0564-22-0678
[email protected]
直売所には椅子もあり、八丁味噌について説明されたビデオも放映されているので、まずはこちらを見てから見学すると、より理解も深くなるのでオススメです。
商品の販売もしているので、お味噌だけ購入したい方はこちらからもどうぞ。
ではいざ蔵見学スタート!
今回ガイドをしてくれた「矢神(やがみ)さん」です。
いきなり大きな看板がお出迎え。八丁味噌が出来るまでの製造工程が、手書きのイラストでわかりやすく説明されています。
矢神さん:「八丁味噌の特徴は固さと渋み・酸味が特徴ですが、煮こむほど甘みに変わってうまみがでてくるんです。なので、愛知県では味噌煮込み料理が多いんですよ!」
蔵の中には石積みされた木桶が何個も置かれています。間近でみると圧巻!
実際に石積みを作業されているところです。仕込む時期は寒い時期に行われ、この石積みの技を習得するのに7年~10年ほどかかります。また、単に石を積むだけではなく、石の「顔を出す」という先人の教えに沿った技法で積むのも、石積み職人ならではの技です。
こちらが実際に積む石。矢作川(やはぎがわ)の上流の石を重みにしたのがはじまりです。このいちばん大きな石が土台となる石で、重さが約60キロ。中くらいの石で約11キロ、そしていちばん左の石が「まんじゅう石」と呼ばれている石で、約9キロ。そしてこの「まんじゅう石」が最後の仕上げに重要な役割を果たします。
矢神さん:「このまんじゅう石を置いたときに安定しているか、しっくりバランスがとれているかがとても重要で、もしバランス悪い場合は、最初から積み直すほど重要な役割を果たしているんですよ!」
そのほか、日吉丸「石投げの井戸」も展示されています。当時秀吉がまだ日吉丸と名乗っていたころ、いたずらして追いかけられた際、味噌石をこの井戸に投げいれます。追いかけていた人はその音を聞き、てっきり本人がこの井戸に落ちたと錯覚し、その間に逃げ切ったという、いかにも頭の回転のよい秀吉らしい逸話が残っています。
八丁味噌から赤味噌まで豊富なラインナップ
ここからはどんな種類の味噌があるのか、一部紹介していきましょう。
赤と黒のパッケージがシックな「八丁味噌(粒)」。通常の八丁味噌はこしているのでなめらかですが、こちらは桶からそのまますくって詰めているので、粒の食感が楽しめます。
「赤だし」とは八丁味噌に米みそ(白みそ)を配合したもの。左のピンクの「ゴールド赤だし」は、地元に愛され40年以上の赤だし味噌。そして右の「三葉葵(みつばあおい)赤だし」はゴールドより滑らかに仕上げたものです。
こちらは毎年10月1日からの期間限定発売で、12月までには完売するプレミアム商品「三河産大豆と神水仕込みの八丁味噌」。仕込み水にもこだわり、「神水(かんずい)」という岡崎の柴田酒造場から、天然の井戸水をひと桶分だけ分けてもらい使用したもの。神水は硬度3のとてもやわらかい水なので、より滑らかで味わい深い味に仕上がっています。
そのほか、八丁味噌を使ったカリッとした食感の「みそかりんとう」も人気です。
クスっと笑えるイラストがインパクトあるのは、岡崎のご当地キャラ「オカざえもん」が目をひく麺シリーズ。定番の味噌煮込みうどんをはじめ、ラーメンや焼きそばも。国産の小麦・大豆・米を使ったキリマルラーメンの小笠原製粉とのコラボ商品です。
伝統を守り受け継いでいく
最後に、浅井社長が味噌づくりに対しての想いを語ってくれました。
– 八丁味噌は海外へ向けても輸出されているんですね
浅井社長:「特にフランスでは好まれています。発酵や熟成という点が、チーズやワインと共通しているのかもしれません。ヨーロッパ人はへりくつ屋です。自分が納得して理解するまでじっくり聞く。いい悪いの判断や取捨選択する民族だからこそ、こういった作り方に共感してくれていると思う。八丁味噌はなんで1000円と高いのか、とよくいわれるんですが、ターゲットであるマイノリティ(少数派)が喜んでくれたらいい。そういう作り方をしているからヨーロッパでも受けてると思います。」
1968年からアメリカを皮切りに翌年にはヨーロッパへ輸出がスタート。社長自らも海外に出向き、現地ではミスターハッチョウと呼ばれ、絵本までつくられたそう。まるやの八丁味噌は現在では世界20カ国以上に「Hatcho Miso」として人気です。
– 創業は1337年と古いんですね。
浅井社長:「もともとは醸造業としてはじまり、八丁味噌としてのスタートは江戸時代初期からです。エビデンスはないのですが、口伝からでそう言われています。」
– 八丁味噌の伝統を受け継ぐ会社は、岡崎でわずか2社ですが……。
浅井社長:「それぞれ個性のようなものがあります。【蔵ぐせ】ってご存じですか?蔵に住みつく菌なんですが、見えないけれどその影響によって、同じ八丁味噌といっても味の違いも蔵によって違ってくるんです。同じ日本人でも東北と九州じゃあ言葉も風土も違うように、味噌も同じです。
機械化すれば大量に効率よくつくれますが、なぜこの地でこのスタイルで680年もつくりつづけるか。それは土も木も江戸時代より場所も変わらず同じものを使っていて、菌もほぼ同じ状態で世代交代していて今に残っているからです。そういう意味で自然環境がとても大事で、影響も大きいんです。」
– 菌にとっては環境はとても大事なんですね
浅井社長:「木桶は1年以上前から注文します。桶師さんは、約200年前に植えられて成長した吉野杉をせり落とし、伐採、乾燥、組み立てと1年ほどかかる。大事に使えば100年以上使えます。木桶を洗浄するときは水洗いで洗剤は使わない。それもすべて菌の環境のため。ある程度のスパンでものごとを考えないと、お客さまはもちろん、従業員からも信頼も得られない。そういう想いからうまれる商品を、これからも表現できたらいいなあと思っています。」
普段私たちがスーパーで買う大量生産された味噌とは違い、こうした手間ひまかけてできあがる八丁味噌は、まさに積み石のごとく、歴史の重みと社長や職人さんの想いがギュッと詰まっています。愛知・岡崎の誇りと伝統を、これからも守り伝承していってほしいですね!