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名古屋で、絶大な支持を誇るアンティークショップ「STORE IN FACTORY」と、系列店のセレクトショップ「THE APARTMENT STORE」が名古屋・栄に移転。今までバラバラだった店舗が合体し、一つのビルとして、2019年4月7日(日)にグランドオープンを迎えました。
今回は、新店舗「THE APARTMENT STORE」に潜入してきました。お話もたっぷりとお聞きしてきましたので、その様子をお届けしていきます!
新店舗は、3F建てのビルをフルリノベーション。建物全体の名称は『THE APARTMENT STORE』となり、ビル内にはSTORE IN FACTORYをはじめ、アンティーク・アパレル・食・工房・ギャラリー・スタジオ・事務所など、さまざまな側面を持った部屋が、一つのアパートのように集約。ビル丸ごと、楽しむことのできる場所へと生まれ変わりました。
1Fは、独自でセレクトした古着や洋服、アクセサリーなどがそろっています。若い人が来ても、グッときてもらえるようなものを意識してセレクトしているのだそう。
期間限定ショップ「THE APARTMENT STORE」
の契約終了を機に。
−まずは、今回の移転の経緯について原さんにお伺いしました。
原さん:「移転のきっかけは、栄で2015年1月31日から2019年まで期間限定で営業していた「THE APARTMENT STORE」の契約が終了になることでした。また、中川区にあった「STORE IN FACTORY」も周辺地域の開発が進んでいたので、いつまで、そこでできるか分からないという不安も抱えていました。
いい物件に出会えたら定借で終わるTHE APARTMENT STOREとSTORE IN FACTORYを一つにして、総合的なお店を作る計画を並行して考えていたんですね。
そんなとき偶然この場所に出会ったんです。一目で気に入ったこのビルで、本格的に新店舗へのオープンに向けて、進みはじめることになりました。」
食を通してさまざまな人たちと交流ができる場を
新店舗では、誰でも気軽に来ていただきやすいようにカフェスペースも併設しています。ここでは、飲食の提供だけでなく、イベントやショールームとしての役割も担っているのだそう。
原さん:「基本的には建具や、細かいディテールも含めて、古いものを使って空間づくりをしています。新たな試みとしてつくったのがカフェスペースです。僕らは、店舗のプロデュースも行っているので、ここはショールームも兼ねています。アンティークの建具を使うとこんな感じの空間ですよっていうのを、実際に感じていただけるようになりました。」
原さん:「ただ、カフェといっても、特別なメニューはなく、おいしいコーヒーとドリンクが飲める喫茶スペースのような場所です。僕らがカフェを運営していくと、それが主体になってしまいます。そうではなく、このビルでは、THE APARTMENT STOREがそうだったように、いろんなところとコラボしたり、ポップアップをしたり、さまざまな人が入り混じる場所にしていきたいと思っています。
この間もイベントで、覚王山にあるハンバーガーショップ「覚王山ラーダー」のポップアップストアを開催しました。レセプションパーティーのときも、プレオーオープンズが鹿肉の料理をここで振舞ったりして。そんな風に、食を通して交流できる場にしていきたいですね。」
大切なことは、空間に命を吹き込むこと
原さん:「ビルをオープンするにあたり、古い3階建のRCのビルと、大きな鉄骨倉庫がつながっている不思議な建物を、どうやったら自分たちらしくできるのかが最大の課題でした。今までなら、自分たちができる精一杯をやり尽くせばよかったのですが、新店舗に関しては古材を使っても、何をしても完成しなかったんです。
僕らが店舗をプロデュースする際に一番大事にしていることは、空間に命を吹き込むことです。だからこそ、この場所も同じように、空間に命を吹き込む、象徴的なものが必要だと思いました。」
原さん:「そんなとき、知り合いの 庭師さんに、とんでもないものがあるけど、興味ある?って送られてきたのが、欅の根張りでした。根張りっていうのは、木の根元のゴツゴツした根元の部分で、通常は切り落として使われなくなってしまいます。
それって僕たちにとって、すごく重要だったんですよね。僕らの仕事は誰かが、何かの価値を失ったときにはじまります。全部いらなくなったもの、買い取ってもらえませんかって言われたもの。どれも廃材って言われてたものが、ここに集まっているんです。それで家具をつくって、新たなものを生み出していきます。
この欅の根張りは、まさに僕たちの仕事を象徴するものだと思いました。根張りのサイズも、もともと入れる予定だった机のサイズと同じくらいだったんです。これなら、テーブルとして見立てられるなって思い、店舗を象徴するオブジェに決めました。
重さが1,600キロくらいあるので、根張りを運び入れることは本当に大変でしたね(笑)。だけど、あれが完成したときに、このビルでやっていけるって思えたんです。クリエイティブなことをやっている人たちなら、誰しも自分にかできないことはなんだろうって考えると思うんです。
そんな考え方、今の時代古臭いよって言う人たちもいますが、古臭くてもいいから、自分たちらしいクリエイションをしていきたいんです。どうせ僕らは古いものしか扱ってないんだから、マインドが古くてもいいだろうってね。会社を発展させていくことは大事だけど、このビルで僕らの想いを伝えていくことも、大切にしていきたいですね。」
偶然だけど、必然の出会い
店舗の外観には、特徴的なモンスターのウォールアートが描かれています。そのことについてもお聞きしました。
原さん:「新店舗の顔でもあるウォールアートは世界で活躍されているアーティストyoshi47さんに依頼をしたものです。この絵もまた、このビルに命を吹き込でいるものの一つです。欅の根張が僕らの仕事の部分であるなら、この絵は表の部分です。
yoshi47さんを最初に知ったのは、ポートランドの街に描かれたウォールアートでした。彼の描くモンスターの絵にすごく惹かれて、どんな人が描いたのか調べてみると、日系人ってことだけはわかったんです。彼といつか仕事がしたいと思いましたが、Instagramをみても、すべて英語だったので、てっきり在米の日系人の方だろうってあきらめていたんです。」
原さん:「そんなとき、先輩にyoshi47さんの話をしたら、この人今愛知県に住んでるよって、教えてもらったんですね。これは、めちゃくちゃやばいことが起きたと、思い切ってDMを送りました。
僕らの店のこと知っていてくれたこともあり、快諾していただけたんです。こうして、外観にも、命が吹き込まれ、新店舗が完成しました。ここに来るまでに、本当にたくさんの人たちとのつながり、出会いがあったからこそ、実現することができました。」
僕らにしかできないこと、僕らだからできること
最後に、原さんに今後のことについてお伺いしました。
原さん:「まずは、一つずつ成熟させること。僕らがやってるのは、アンティーク・家具・店舗プロデュースだけど、ここを通して、名古屋のいろいろな人に出会える場所にしていきたいです。
アーティストやクリエイティブなことをしている人間は、東京に一度は憧れを抱くと思うんです。でも、名古屋の人はそこに出ていけない弱さや不安があって、クリエイティビティっていうものをつくり出すこと、名古屋にしかできないことを探すのはすごく時間がかかります。
そういう街だからこそ、自分のアイデンティティを保ちながら生きていくのって、すごく大事なんです。名古屋って、音楽もアパレルもそうなんですけど、縦につながっていることが、すごく重要なことなんですね。名古屋で生きていて、行き詰まったときに、この場所を通して、なんとなく名古屋でやっていくことに、誇りがもてる。そんな場所にしていきたいですね。」