個人作家でもない。大きなメーカーでもない。“第3の陶芸”のあり方。「3RD CERAMICS(サードセラミックス)」
目次
今後の展望
続いて、今後の展望について伺いました。
長屋さん:「これまでは、大手メーカーさんよりはちょっと高く、作家さんよりは少し安いという価格帯が多かったのですが、もう少し価格帯の幅を広げていきたいなと考えています。素焼きまで依頼するスタイルはある程度できてきたので、次はじっくりと手をかけた一点ものに挑戦していきたいですね。」
試作段階のコーヒードリッパー
土井さん:「例えば、これは名古屋のMIROKU COFFEEさんと共同開発している陶器のドリッパーです。シンプルな構造ですが、リムの本数や高さを変えながら、5〜6回試作を重ねました。同じ豆で、同じ時間で淹れても、全然味が違うんですよ。こないだようやく完成して、コーヒー屋さんに委託販売をしてもらっています。」
長屋さん:「僕はコーヒーは詳しくないんですが、そんな僕が飲んでも味が違うのがわかるくらい、本当に違います。不思議ですよね。」
長屋さん:「名古屋の「稲熊家具製作所」の稲熊くんと、コラボレーションライトを製作しました。彼とは大学の同級生なんです。
彼が旋盤という機械を購入したことをきっかけに、何かつくろうということになり制作することになったのですが、いざはじめて見ると、とても苦戦しました。まず、普段つくっているフラワーベースや、お皿などに比べて、サイズが大きいということが一つのハードルでした。もう一つは、普段は陶器をメインに扱っているのですが、光を通すために磁器を使いました。焼き方の具合も異なるので、そこに慣れていくのは大変でしたね。
先日も東京のお店に納品してきました。これからも長く続けていきたいですね。」
▼稲熊家具製作所の記事はこちらから
https://life-designs.jp/webmagazine/inakagu/
それぞれの良さがあるからこそ
最後にお互いの尊敬している部分について、伺ってみました。
長屋さん:「最初一緒にやりたいと思ったきっかけも、僕にないものをたくさん持っているからです。特に焼き物の知識量。土井くんは、高校から焼き物を学び、メーカーにも勤めていたのでかれこれ10年ほど焼き物をやっているんです。知っている知識量が圧倒的に違いましたね、いまだにそうです。そういうところですかね。引き出しが多いんですよね。焼き物という面でだけですけど(笑)」
土井さん:「ちゃんとオチつけるんですね(笑)。僕は、今までやってきたことを反復して精度を高めていく性格なんですけど、有くんは自分から湧き出るものもあるし、他人から「こういうのつくれない?」と提案をもらったときに、自分のストーリーをつくってお返しができるんです。そういうところがすごいと思いますね。」
販売・マネージメントを担当している、花山さんの存在も大きいのだといいます。
長屋さん:「3RD CERAMICSは、つくり手以外の人がいるというのが強みですね。制作をしていると、なかなか他のことに手が回らないんです。例えば、展示会などでも、本当はそこで話をしたり、自分たちで売りたいなという気持ちはあるんですけど、なかなか難しい……。僕らだけでなく、作家さんの多くがそうなんじゃないかな。その中で、花ちゃんがいるというのは、めちゃくちゃ強みですね。僕らにはできない「伝える」という部分を彼が担ってくれているからこそ、制作に集中することができています。」
photo by 中島光行(@mitsu_nakajima)
2014年にスタートし、今年で4年目になる3RD CERAMICS。東海エリアだけでなく、各地で展示会やポップアップショップなども開催され、着実にファンを増やしています。
次回は京都の「Community Store TO SEE 」で開催される「森からはじまる。/3RD CERAMICS & 市川岳人 exhibition」。愛知県を拠点に活動する木工作家・市川岳人氏との、合同展 & ポップアップストアです。
▼詳細情報はこちらから
http://t-o-s-e-e.jp/
長屋さん、土井さん、ありがとうございました。
それぞれ「土井くん」「有くん」「花ちゃん」と呼び合う光景が印象的でした。性格も、好きなものも、歩んできた道も違う三人だからこそ誕生した3RD CERAMICS。個人の作家ではなく、大きなメーカーでもない、“第3の陶芸”のあり方にどんどんと挑戦しづつけている3RD CERAMICS。今後も目が離せません。